元麻薬取締局捜査官とジャマイカ・ギャングとの対決を描く
バイオレンス・アクション。
死の標的
MARKED FOR DEATH
1990
アメリカ
94分
カラー
<<解説>>
『刑事ニコ 法の死角』に続くセガールの2作目。舞台がシカゴで、麻薬がらみの事件というところは、前作と共通した内容。セガールは前作から肥えていて、束ね髪に黒ずくめの服という現在と寸分違わないキャラクターになっている。
今回、セガールが叩きのめすのは、ジャマイカ・ギャング“ポッシー”。怪しげな儀式によって呪術を駆使する敵というのは、数あるセガール映画の中でも異色の存在だ。ポッシーのリーダー、スクリューフェイスもなかなか不気味なのだが、その特異なキャラクターもセガールにとってはあんまり関係ないようだ。セガールの戦いは呪術使いに対しても平等。間接を捻る、背中を殴る、眼を潰すなど、反則技上等のバイオレンスで確実に敵を仕留めていく。
本作の見どころは、物語に黒人文化を交えているところである。セガールの敵のポッシーは黒人で、味方についた親友とジャマイカ警察も黒人。セガールは黒人に囲まれながら、麻薬犯罪と戦っていく。前作ではパム・グリアと共演しているが、本作も70年代の黒人映画へのオマージュという意味もあるのかもしれない。また、バンコク、シカゴ、ジャマイカの異なる三つの文化圏を股にかけているが、それぞれのパートの特色を出しているのも面白い。音楽は、シカゴのシーンではヒップホップ、ジャマイカのシーンではレゲエになっている。後の『グリマーマン』では顕著だが、セガールは日本の武道を取り入れるだけでなく、その他の異文化に対する興味があるようである。
<<ストーリー>>
タイのバンコク。麻薬取締局の腕利き捜査官ジョン・ハッチャーは、薬犯罪を取り締まるためなら手段を選ばない男。目的のためなら、麻薬もやれば、娼婦も抱く。とにかく、まともではなかった。ハッチャーは囮操作中として、娼館で売人と麻薬の取り引きに挑んだ。だが、相手に捜査官であることがばれて撃ち合いになり、仲間のチコを撃ち殺されてしまった。
このことをきっかけに、ハッチャーは麻薬捜査官としての仕事に嫌気が差してしまった。いくら犯罪者を取り締まっても、麻薬の汚染を食い止めることなどできないと悟ったのだ。ハッチャーは、捜査のために犯してきた罪を教会で懺悔すると、きっぱりと麻薬取締局を辞めた。そして、家族の待つ故郷シカゴへ帰っていった。
ハッチャーはシカゴの家で、妹のアリス、姪のトレイシー、母親と久々の対面とした。学校では、フットボールのコーチをしていた旧友のマックスとの再会も果たした。今や、ハッチャーは、犯罪者と渡り合う殺伐とした世界から遠のき、平穏な生活を送るかに見えた。だが、既にハッチャーの家の近所や学校にも、麻薬の汚染が広がりつつあった。町の中で、子供たち相手に堂々と麻薬の売買に行なわれていたのだ。だが、ハッチャーはそんな光景を目にしても、見て見ぬ振りを決め込むことにした。
子供たちに麻薬を売っているは、ジャマイカ・ギャング“ポッシー”で、リーダーのスクリューフェイスは、そのカリスマ性で仲間たちの畏怖と尊敬を集めていた。シカゴをシマとするマフィア、ティト・バルコは、スクリューフェイスと直接会い、節操なく麻薬をばらまく彼らのやり方に釘を刺そうとした。だが、スクリューフェイスは麻薬から手を引くどころか、ティト・バルコに手を組むことを強要してきた。ティト・バルコはスクリューフェイスを暗殺を黒魔術師に依頼。だが、呪いをかけられていることに気付いたスクリューフェイスは、黒魔術師をテーブルに磔にして殺害した。
ハッチャーは、マックスに麻薬撲滅の必要を説かれても、「家族さえ自分で守れば良い」と言って、ポッシーの悪行にはには関心を示さなかった。だが、早速、ハッチャーはポッシーと係わり合いになることに。ある夜、ハッチャーとマックスは、クラブで飲んでいたところを、ポッシーとティト・バルコ・ファミリーとの銃撃戦に巻き込まれたのだ。ハッチャーはポッシーの一員を叩きのめし、抗争をおさめた。
ポッシーに関する事件はFBIが担当することになり、ハッチャーは旧知の捜査官ロゼリーと思わぬ再会をすることになった。ハッチャーはロゼリーから、ポッシーに武器を流しているのが、カジノ王のジミー・フィンガーズであることを知らされた。また、クラブの壁には、“アバクア”と呼ばれる呪術的なマーキングが施されていた。FBIに協力するジャマイカ文化人類学者のレスリーは、そのマーキングがスクリューフェイスのものであると断定した。
クラブでの銃撃戦の一件で、ハッチャーはポッシーの恨みを買うことになった。翌日、ハッチャーの家がポッシーの手下の銃撃を受けた。咄嗟に床に伏せたハッチャーとアリスは無事だったが、トレイシーは撃たれて重態に陥った。ハッチャーは、取り乱したアリスから「兄さんのせいよ」と激しく責められるだった……。
<<スタッフ>>