<<ストーリー>>

大戦直後のウィーン。闇商人がはびこる市は四つに分割され、それぞれにアメリカ、イギリス、ロシア、フランスが駐留していた。そんな混乱のウィーンに、アメリカ人の小説家ホリー・マーティンスが職探しのためにやってきた。ホリーは学生時代からの親友のハリー・ライムを頼り、彼のアパートを訪ねた。彼と会うのは39年の9月以来である。とろこが、信じがたいことにハリーは事故に遭って死んでしまっていた。ハリーの葬儀に出席したホリーは、墓地で棺を悲しげな表情で見つめる女性と出会った。
ハリーの葬儀の帰りに、ハリーはキャロウェイという男に声をかけられた。キャロウェイはイギリス軍の少佐だった。ホリーはキャロウェイの口からまたもや信じられないことを知らされることになった。ハリーは密売に手を染めた町一番の悪党で、その死も当然の報いだったというのだ。ホリーはハリーの濡れ衣を主張した。だか、キャロウェイはそれに取り合わず、ホリーに明日、帰国するように命じたのだった。
キャロウェイの指定した軍のホテルにやってきたホリーは、GHQのクラビンという男に頼まれ、現代文学についての講演をすることを約束した。その直後、ホリー宛にハリーの友人と名乗るオーストリア人のクルツ男爵から電話がかかってきた。早速、ホリーはクルツ男爵と遭い、事故現場でハリーが事故に遭った時の様子を尋ねた。アパートの前でトラックにはねられたハリーは、その場にいたクルツ男爵とルーマニア人のポペスクに歩道へ運ばれた。ハリーはそのまま息絶えてしまったのだという。
ホリーは葬儀で出会った女性のことをクルツ男爵に尋ねた。クルツ男爵は、その女性がロシア地区に暮していることをホリーに教えるが、事故のことを蒸し返さないよう警告した。クルツ男爵と別れた後、ホリーはロシア地区の劇場を訪ね、ハリーの恋人であった女優のアンナ・シュミットと会った。ホリーは、あの事故の目撃者である第三者がいないことがひっかかっていて、その疑問をアンナに投げかけた。アンナもホリーと同様に事故には疑問を持っていたため、二人でアパートの管理人に事情を訊くことにした。
ホリーとアンナはアパートの管理人を訪ねた。管理人は事故の瞬間は見ていなかったが、ハリーの体を男たちが運んでいるところを見ていたことを打ち明けた。彼の話では、あの時、既にハリーはこときれていて、彼を歩道に運んだのも二人ではなく、三人だったという。つまり、クルツ男爵とポペスクの他に“第三の男”がいたのだ。新たな事実を掴んだ後、ホリーはアンナを彼女のアパートに送っていった。
アパートの前まで来た時、アンナは自分の部屋の様子がおかしい事に気付いた。キャロウェイが警官を引き連れ、アンナの部屋を調べていたのだ。キャロウェイは、ハリーがアンナのために作った偽装旅券を没収した。実はアンナはチェコ人だったのだ。キャロウェイは、アンナに詳しい事情を訊くため、彼女を連行していった。
アンナのアパートを出たホリーは、ハリーの検死に立ち会った主治医のビンケルを訪ねた。ハリーがビンケルにホリーの死因について尋ねていた頃、アンナは警察で一枚の写真を見せられていた。それは陸軍病院の職員であるジョゼフ・ハービンなる人物の写真だった。だが、アンナはその人物に心当たりは無かった。それでも、キャロウェイはアンナがハービンから伝言を預かっていると疑っていた。キャロウェイは、行方不明になっているハービンをおびき出すため、アンナに“カサノバ・クラブ”へ行くよう命じた。
その夜、ホリーは“カサノバ・クラブ”でアンナと落ち合った。その時、クルツ男爵が近づいてきて、“第二の男”ポペスクを紹介された。ホリーはポペスクに“第三の男”の存在やハービンについて尋ねるが、はぐらかされてしまった。結局、真相に繋がる情報が得られないまま一日が終わった。
翌朝、ホリーは事故現場であるアパートの前に出かけた。ホリーが手がかりを探していると、アパートの窓から管理人に声をかれられた。管理人はホリーに事件の真相を話すことを約束し、今夜、もう一度ここに来るよう告げた。夜になり、ホリーはアンナの部屋を訪ねた。アンナはハリーのことを話して欲しいとホリーに頼んだ。ホリーはアンナの求めに応じるまま、ハリーとの思い出を語って聞かせたものの、亡きハリーに拘る彼女のことが心配になった。アンナはもう恋をしないことと誓っていたのだ。
ホリーはアンナと一緒に管理人の待つアパートに向かった。だが、なぜかアパートの前に人だかりが出来ていた。管理人が何者かに殺されたのだ。急いでホテルに戻ったホリーは、キャロウェイに事件のことを知らせるため、ホテルの前に停まっていた車に飛び乗った。だが、車はホリーが行く先も告げる前に走り出した。訳が分からなくなり混乱するホリーをよそに車は走り続け、やがて講演会場へ到着した。ホリーは講演の約束をしていたことを思い出した。
クラビンとの約束を果たし、講談に立ったホリーだったが、事件のせいで気もそぞろだった。ホリーがしどろもどろになりながら講談を終えた時、ポペスクが会場に現れた。ホリーが「第三の男」という題の事実に基いた小説を書いていると発言すると、それに対して、ポペスクは「危ない橋を渡っている」と言った。それが脅迫だと気付いたホリーは、すばやく会場の二階に駆け上がり、窓から外に脱出した。ポペスクとその仲間たちに追われながら、ホリーは警察に駆け込んだ。
ホリーがこのままでは闇商人に殺されかねないと思ったキャロウェイは、事件の真相を詳しく話すことにした。ホリーがキャロウェイから聞かされた話によれば、ハリーはハービンが病院から横流ししていたペニシリンを水で薄め、誰彼なしに売りさばいていたのだという。それだけではなく、彼の売った水増しペニシリンは、投与された者の脚を腐らせ、子供や妊婦の命を奪っていたのだった。キャロウェイの話を疑ってかかっていたホリーだったが、証拠の資料を読ませられると、それが揺るぎい事実であることを信じざるを得なくなった。ホリーはハリーに20年間騙されていたのだ。
キャロウェイの話に大きなショックを受けたホリーは一人で酒をあおった。酔っ払ったホリーは、再びアンナの部屋を訪ね、彼女に国へ帰ることを告げた。その時、アンナもホリーが聞いたのと同じ話をキャロウェイから聞かされていたことが分かった。だが、それでも、アンナはハリーのことを美化し、彼のことが忘れられないでいた。ホリーはアンナがいたたまれなくなり、彼女を慰めたのだった……。



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