スペスシャトル“ムーンレイカー”消失した。
007とCAIの女スパイが事件の裏に潜む人類抹殺計画に迫る。
シリーズ第11作。
007/ムーンレイカー
MOONRAKER
1979
イギリス
126分
カラー
<<解説>>
前作『私を愛したスパイ』のいちばん最後に、"JAMES BOND will return in FRO YOUR EYES ONLY"というメッセージにあり、次作が『ユア・アイズ・オンリー』であることを予告していた。だが、実際に作られたのは本作で、『ユア・アイズ・オンリー』は12作目として公開されることになった。
スペクタクル大作だった前作の好評を受けて作られたかのような続編で、監督は引き続きルイス・ギルバート、観客に強烈な印象を与えた殺し屋ジョーズも引き続き出演している。また、前作と内容が似通った部分も多く、他国の女スパイとの共闘、事件の発端が国家的に重要な船の失踪であること、フィルムが事件の重要な鍵であること、敵が大富豪で新世界の建設を目的としていることなど、共通点はいくつも挙げられる。前作の舞台を海底から宇宙に置き換えた焼き直しとも姉妹作とも言える作品となった。
ギルバート監督のSFアクション指向をさらに推し進めた本作は、「007、ついに宇宙へ」というのが大きな呼び物である。007シーズがこの先ずっと続き、宇宙開発も順調に進むとしたら、ひょっとしてこんなシチュエーションの作品も出てくるかもしれない。ただ、時代を先取りするにしても、先取りがし過ぎたようだ。シリーズ史上スケールがもっとも大きいことはいわずもがなだが、スパイ映画としてはリアリティにどうしようもない違和感が残るものとなった。危機また危機の連続を涼しい顔で乗り越えていくという007本来の楽しさはあるものの、宇宙空間にレーザー光線が飛び交いまくるクライマックスに至っては、いたっいなんの映画を観ているのか分からなくなってくる。はじめからSFとして割り切ったほうが余計なストレスを感じずに済むかもしれない。
問題作、駄作との批判の激しい本作だが、『007は二度死ぬ』の後に『女王陛下の007』が作られたように、本作の後にシリアス路線の『ユア・アイズ・オンリー』が作られたという事実は無視できない。もし、『007は二度死ぬ』や本作が作られなかったとしたら、続編を重ねるごとに緩やかにコミック路線を突き進み、子供以外には見向きもされないシリーズに落ちていたかもしれない。つまり、長期のシリーズ継続のためには、何作かおきにスケープゴートというものが必要なのである(最近では『ダイ・アナザー・デイ』がソレか?)。ギルバート監督のような才能があったからこそ、シリーズ全体としてある程度のリアリティを保つことが出来たと言っても過言ではない。そして、そのような意味では、本作が007シリーズを語る上でもっとも重要な作品のひとつに位置付けられることも間違いないのである。
<<ストーリー>>
イギリスへ輸送中だったスペースシャトル“ムーンレイカー”が、上空で消息を絶った。イギリスの諜報員“007”ことジェームズ・ボンドは、“ムーンレイカー”が何者かにハイジャックされたと見て調査を開始した。
事件の鍵を握ると考えられるドラックス博士を探るため、航空宇宙局“NASA”を訪ねたボンドは、そこで博士のもとで働いているの研究員ホリーと出会った。実はホリーはCIAの諜報員で、ボンドと同じくドラックスを追っていたのだった。
ボンドはドラックスの秘密研究所があると思われるベニスに向かった。ボンドは殺し屋たちに命を狙われながらも、ドラックスの研究所を発見。ドラックスはその研究所で毒ガスを開発していた。ドラックスの手下のチャンに見つかったボンドは、研究所を脱出した。
毒ガスの原料がアマゾン原産の花であることを知ったボンドは現地に飛んだ……。
<<キャスト>>
[ジェームズ・ボンド]
ロジャー・ムーア
[ホリー・グッドヘッド]
ロイス・チャイルズ
[ドラックス]
ミシェル・ロンダール
[ジョーズ]
リチャード・キール
[コリン・ダフォー]
コリンヌ・クレリー
[M]
バーナード・リー
[フレデリック・グレイ]
ジェフリー・キーン
[Q]
デスモンド・リュウェリン
[マネーペニー]
ロイス・マクスウェル
[チャン]
トシロー・スガ
[マヌエラ]
エミリー・ボルトン
<<スタッフ>>
[監督]
ルイス・ギルバート
[原作小説]
イアン・フレミング
[製作]
アルバート・R・ブロッコリ
マイケル・G・ウィルソン
[製作補]
ウィリアム・P・カートリッジ
[脚本]
クリストファー・ウッド
[撮影]
ジャン・トゥルニエ
[視覚効果監修]
デレク・メディングス
[音楽]
ジョン・バリー
[美術]
ケン・アダム
[編集]
ジョン・グレン
[主題歌]
シャーリー・バッシー
「ムーンレイカー」
[作曲]
モンティ・ノーマン
「ジェームズ・ボンドのテーマ」
[タイトル・デザイン]
モーリス・ビンダー