ニューヨークを舞台に、太極拳の達人である中国人の老人と
アメリカ人女性と結婚した息子夫婦との確執を描くドラマ。

推手(すいしゅ)

推手
PUSHING HANDS

1991  台湾

103分  カラー



<<解説>>

2000年には『グリーン・デスティニー』、2005年には『ブロークバック・マウンテン』で話題となった台湾出身の監督アン・リーのデビュー作。『ウェディング・バンケット』、『恋人たちの食卓』と続く、父親三部作の第一編ということになっている。
題名の“推手”とは、太極拳の技法のひとつのこと。相手に抵抗せずに身を引く――まるで社交ダンスのようになめらかな推手の動きに倣い、西洋とのカルチャー・ギャップやアメリカ人の嫁との確執といった現実的な問題に向き合っていく父親。そんな彼の姿を、息子夫婦の視点から哀愁とユーモアを交えながら描いていく。ここに描かれている問題は、アメリカならではのもののようでもあるが、世代をまたいで構成されるいずれの家庭にも当てはまるものである。
息子たちの考えを汲み取り、自ら身を引き家を出て行く父親。しかし、彼は同情を促すだけの存在としては描かれていない。老人はいずれ去り往く者であるのかもしれないが、一人の人間として誇りを持って現実を生きているのである。彼は、黙って現実を受け入れていくのではく、主張すべきところはしっかり主張していく。それが、中華料理店での大立ち回りという形で現れるクライマックスは痛快だ。ただ、良くも悪くも、老人の独り暮らしが増えているという実態を示したラストには考えさせるものがある。



<<ストーリー>>

ニューヨークで暮らすマーサと中国人の夫アレックス。二人は、アレックスの父親で太極拳の師範であるチューを家で預かることになった。だが、マーサは、英語の話せないチューとコミュニケーションがうまくはかれず、彼と暮すことから来る極度のストレスから倒れてしまった。
マーサが病院での療養を終えて家に帰ってくると、今度はチューが家出騒動を起こした。そのことがきっかけで、マーサとアレックスは言い争いに。嫁が父親の面倒を見るのが当然と考えるアレックスは、父親を邪魔者扱いするマーサのことが許せなかったのだ……。



<<キャスト>>

[チュー(朱)老人]
ラン・シャン

[アレックス・チュー(暁生)]
ワン・ボー・チャ

[チェン(陳)夫人]
ワン・ライ

[マーサ]
デブ・スナイダー

[ジェレミー・チュー(傑米)]
ハーン・リー



<<スタッフ>>

[監督]
アン・リー

[製作]
テッド・ホープ
ジェイムズ・シェイマス
アン・リー
エミリー・リウ

[脚本]
アン・リー
ジェイムズ・シェイマス

[撮影]
ジョン・リン

[音楽]
チュ・シャオソン

[編集]
ティム・スキアーズ