書類の配達係から大企業の重役室に潜り込んだ青年の奮闘を描くサクセス・コメディ。
摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に
THE SECRET OF MY SUCCE$S
1987
アメリカ
111分
カラー
<<解説>>
田舎から成功を夢見てニューヨークに上京してきた青年が、大胆な手段で大企業の重役に上り詰めていく様を、彼と美人の重役とのロマンスをからめて軽快に描くコメディ。主演は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で一躍人気者になったマイケル・J・フォックス。相手役は、女スーパーマン『スーパーガール』のヘレン・スレイター。人気スター主演で内容も分かりやすかったため、一時はテレビ放映での回転率が高かった。
書類の配達係として大企業に雇われた青年が、空き部屋に勝手に自分のオフィスを設置。配達係を続けながら、一方で重役としてちゃっかり大活躍……という、変身願望をも満たす痛快な物語。作業着からスーツへ、また、その逆へと早変わりしながら、巨大ビルの中をちょこまかと動き回るマイケルの魅力たっぷりの作品だ。社長の奥さんに迫られる狼狽ぶりも笑いどころで、本命のヒロインとの関係よりも見どころだったりする。
大企業で上り詰めることが最終目的になっている話だが、企業本意主義への風刺や皮肉も十分にこめられている。あまりに組織が大きいために、その機能が麻痺していることを指摘。配達係だからこそ見えてくる巨大組織のウィークポイントを巧みに利用したストーリー展開が上手い。また、要領の良い主人公の対比のためでもあるが、重役たちがことごとく無能に描かれている。まさに、砂上の楼閣といった大企業の姿を印象付けていて、少し空恐ろしくもなる。
いくらコメディだからと言え、誰にもバレずに配達係と重役を両立させるなど無茶も良いところである。当然、にっちもさっちもいかなくなってくるのだが、主人公がピンチになってからが本領発揮。今観るとセンスが古臭くも感じられるが、終盤の寝室での壮絶な修羅場からラストのどんでん返しまで、古き良きロマンティック・コメディの雰囲気が楽しめる。また、植木等の「無責任」シリーズでもおなじみのサクセス・ストーリーであるので、日本人にも入りやすいかもしれない。
<<ストーリー>>
大学を出たばかりの24歳の青年ブラントレー・フォスターは、成功を夢見てカンザスの田舎からニューヨークへ。ところが、内定が決まっていたはずの会社を訪ねてみると、企業乗っ取りに伴なう人員削減のため、受け入れてもらえなかった。途方に暮れかけたブラントレーは、母親から渡された一枚のメモを頼りに大企業ペンローブへ。母の従姉妹の元夫ハワード・プレスコットがその会社の社長だったのだ。新規のつてでハワードとの面会にこぎつけたブラントレーは、経験は無いが熱意は人一倍であることをアピール。ハワードはブラントレーを雇うだけ雇ってみることに決めた。採用の喜びいっぱいで社長室を出たブラントレーは、給水器の前でいままで見たこともない美女と出会った。
翌日からブラントレーが配属されたのは文書室で、仕事はメールの配達係だった。事務職の社員たちと交流したいブラントレーだったが、仕事を教えてくれた先輩のメルローズは彼らのことを“スーツ”と呼び、彼らと関わらないよう忠告してきた。それでも、ブラントレーは“スーツ”に一歩でも近付こうと、文書室を飛び交うメールの山に夜遅くまで目を通した。そのうち、ブラントレーは、この会社の命令系統が滅茶苦茶であることに気付いていった。メルローズは、初日にブラントレーが出会った美女のことも教えてくれた。彼女はクリスティ・ウェルズという重役でハーバート出のエリート。配達係であるブラントレーとはとうてい縁の無い存在だった。
ある日、ブラントレーは文書室のボスのラティガンに命じられ、重役の奥さんを家まで車で送っていくことになった。夫が浮気中だという奥さんは機嫌が良くなかったが、愚痴を聞いてくれたブラントレーのことをすぐに気に入った。彼女はブラントレーを自宅に引き止めて誘惑。その時、ブラントレーは奥さんが社長の妻、つまり、自分の伯母にあたるヴェラであることに気付いた。結局、誘惑に負けてしまったブラントレーに、ヴェラは昇進を約束させた。だか、ブラントレーは自力で上ってみせると宣言した。その直後、ハワードがふいの帰宅。ブラントレーは番犬に追われながら、会社に戻ったのだった。
あれから何日も経ったが、ヴェラの前での勢いとは裏腹に、ブラントレーは相変わらず配達係で、“スーツ”になるチャンスにも恵まれないでいた。そんなある日のこと、ブラントレーが無人の重役室で配達仕事をサボっていた時、突然、電話がかかってきた。身分を明かさずに電話に出ると、それは、書類の配達の確認の連絡だった。配達に問題があることを知ったブラントレーは、重役の振りをして配送用トラックを増やすことを約束。それをきっかけに、ブラントレーに仕事のアイデアがひらめいた。彼は組織の命令系統がいい加減であることを利用して、空き室になっていた4319号に勝手に自分のオフィスを構え、さらに、秘書まで雇った。また、自分のオフィスを持ったことで、クリスティと知り合うことも出来た。
ブラントレーがメルローズの協力を得ながら、偽重役と配達係の二重生活を送っている頃、ペンローブに企業乗っ取りの危機が迫っていた。そうなれば、ほとんどの社員を解雇される事態になるだろう。ある日、ブラントレーは、カールトン・ウィットフィールドを名乗って、クリスティも出席する重役会議に首尾よくもぐりこむことに成功。そこで、ブラントレーは、ダベンポート社がペンローブの株の5パーセントを既に取得していることを知った。そのため、会社には経費の節減が急務だった。クリスティは配送センター閉鎖を訴えたが、文書室から会社の問題の本質を見ぬいていたブラントレーは反対。それは、重役の誰もが驚くプランであり、ハワードの耳にもすぐに入った。
謎の新人ウィットフィールドをダベンポートのスパイと考えたハワードは、その正体を掴むため、クリスティに彼を見張ることを依頼。実は、ハワードとクリスティは愛人関係であり、そのことはヴェラもブラントレーも知らないのだった。クリスティはハワードに従って、ブラントレーのオフィスから書類を盗み出した。だが、彼のプランか気になり始め、ある日、ブラントレーのオフィスで夜遅くまで議論をした。それをきっかけに親密になった二人は、とうとう一夜を一緒に過ごすことになった……。
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