<<ストーリー>>
季節は秋。東京に泉がやってくることになり、いつもは親に反抗的な満男も今日はご機嫌。彼は泉が自分に会いくるものだと思っていたが、泉には大事な用事があった。高校卒業に親許を離れるため、東京で就職の口を探すことが目的だった。満男が東京駅に泉を迎えに行っている間、“くるまや”にはタイミング良く寅次郎が帰ってきた。その夜の“くるまや”の団欒は皆で泉を囲い、彼女の就職先のことをあれこれ考えた。ただ、満男だけは、皆が無責任に言いたい放題しているのを聞いて、少し不愉快になるのだった。
翌日、満男は泉に付き添って、彼女が高校の音楽の先生に紹介してもらった銀座の楽器店に向かった。楽器店の担当の人には会えたものの、相手は泉が高卒であることを気にしていて、色よい返事はしなかった。満男は泉を励まそうとするが、履歴書を書いたことがない自分には彼女の苦しを汲んでやることが出来なかった。結局、泉はしょんぼりして名古屋に帰っていった。満男は泉の学費のためなら大学を辞める覚悟だったが、それは現実的な解決手段ではななく、だだ自分の無力を思い知るばかりだった。
ある夜、泉の母親の礼子が恋人の北野を連れて帰ってきた。礼子が幸せになって欲しいと頭では思っている泉だったが、心は北野を受け入れることができなかった。泉は北野を無視した上、部屋まで様子を見に来た彼をドアで突き飛ばしてしまった。それから数日後、満男宛に泉から一枚の絵葉書が届いた。送り先は鳥取のようだったが、手紙の文面は暗かった。気になった満男は名古屋に電話をかけ、礼子から泉が家出してしまったことを知らされた。満男は衝動的に泉を探しに行くことを決心。さくらに、もし泉から連絡が来たら鳥取砂丘で待っていると伝えるよう頼むと、家を飛び出していった。
泉は鳥取のある町をあてもなく歩いていた。そこに暮す人々を見ながら、ぼんやりと柴又や満男のことを思っていた。駄菓子屋でパンを買った泉は、彼女のさみしげな様子を見ていた店のおばあちゃんに、家にあがかるように言われた。こうして泉は、独り暮らしをしているおばあちゃんの夕食に付き合うことになった。おばあちゃんの使いで近所に豆腐を買いに出かけた泉は、聞き覚えのある声に気付いて振り向いた。そこにはなんと、偶然通りかかった寅次郎がいた。泉は寅次郎に駆け寄ると、安心のあまり子供のように泣きじゃくったのだった。
その日は泉と一緒に寅次郎もおばあちゃんの家に泊めてもらうことになった。深夜、布団の中でなかなか寝付けない泉は、まだ起きていた寅次郎に、礼子や北野との関係がうまくいっていないことを打ち明けた。泉は礼子と北野のことを“不潔”だと感じていたが、そう感じるのも自分の中にも汚らしいものがあるからだと考えていた。昼間、柴又に泉のことで電話をして事情を知っていた寅次郎は、満男が鳥取まで探しに来ているらしいことを泉に教えた……。
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