西部ショーで全国を巡行するブロンコ・ビリーの一座。
団長と強引に入団させられた助手とのロマンスを描くコメディ。
ブロンコ・ビリー
BRONCO BILLY
1980
アメリカ
116分
カラー
<<解説>>
慈善で西部ショーを開いて回る元犯罪者の集団の珍道中を、主人公の座長とヒロインのロマンスを軸に描く。監督・主演のイーストウッドはコメディ映画への出演は少なくないが、監督作としては現時点で唯一のコメディである。ヒロインには、『アウトロー』、『ガントレット』、『ダーティファイター』でも共演した当時の愛人ソンドラ・ロック。
アクションでもあり、ロマンスでもあり、西部劇でもあるという、捻りのきいた設定やストーリーは、わりかしジャンル分けが明確だったこれまでのイーストウッド作品のどれとも似ていない。「こういう作品も撮れるんだ」と、その底なしの多才ぶりに感心させられるが、実はひじょうに彼らしい作品でもある。見た目以上に社会派のテーマだが、主人公の抱える暗い事情を、シャイなロマンスと軽妙なユーモアでやさしくくるんでいく。座長をはじめとした座員のユニークなキャラクターも、人間愛に満ちた描かれ方をしている。はじめは子供じみた主人公には共感できないと思われるが、物語が進むうち、ヒロインと同じように彼の魅力にひかれて、見終わった後には大好きになるはずだ。イーストウッドが自らの出生地である西部劇生へ捧げたオマージュも素晴らしい。どうしても派手な作品の影になってしまうが、彼の趣味とエッセンスが詰まった隠れた名作である。
<<ストーリー>>
子供たちのために西部ショーで全国を巡行する一座があった。一座の団長は、馬の曲乗りと早撃ちを得意技とするブロンコ・ビリー。彼は少々、気が短いところがあったが、自称・先住民のビッグイーグルをはじめとする団員たちからあつい信頼を得ていた。ある日、ビリーは巡業に来たカンザスの町で、美人とすれ違った。その女性、アントワネット・リリーは、結婚相手のジョンと旅行中だった。だが、リリーはジョンを生理的に受け付けず、冷たい態度を取り続けていた。そのため、怒ったジョンは、ある朝、金と荷物と一緒にリリーの前から姿を消してしまった。
リリーはジョンがいなくなったことを継母のアイリーンに知らせようとするが、連絡しようにも金がない。そこで、彼女は、ガソリンスタンドで出くわしたビリーに電話代を借りようとした。ちょうど、一座の助手が芸の失敗で怪我をしていたため、ビリーはリリーを助手として雇うことを思いついた。リリーは訳の分からぬまま、一座の新しい助手として団員たちに紹介されられることに。リリーは町までトラックに乗せてもらうことになったが、誘拐同然のビリーの強引さに腹が立ってしかたがなかった。
翌朝、リリーが目覚めると、一座は孤児院に突いていた。ビリーは毎年、ここの子供たちに無料でショーを見せていたのだ。それを知って、ビリーを見直したたリリーは、次の助手が見つかるまで、彼の助手を勤めてもいいと思った。だが、ショーの最中、絶えず反抗的なリリーの態度に腹を立てたビリーは、彼女を疫病神呼ばわりし、追い出してしまった。途方に暮れたリリーは、商店の前でふと目にした新聞に自分の死亡記事を見つけた。実は、アイリーンと弁護士が共謀し、遺産の独占のためにジョンがリリーを殺したことにしようとしていたのだ。弁護士に買収されたジョンも、リリー殺しを自白していた。
自分が死んだことになっていることを知って驚いたリリーは、ビリーのもとへ戻り、旅を続けることになった。ある町の酒場で、一座とリリーは喧嘩に巻き込まれてしまった。酒場から避難したリリーは、外で待ちうけていた男達にレイプされそうになるが、ビリーに救われた。テントでリリーを介抱する間、ビリーは自分と団員たちの過去を打ち明けた。実は、ビリーはカウボーイでも何でもなく、元々は靴のセールスマンだった。浮気した妻を銃で撃ってしまったビリーは、殺人未遂で投獄された。そして、獄中で出会った仲間たちと一緒に、西部ショーの一座を立ち上げたのだった……。
<<キャスト>>
[ブロンコ・ビリー]
クリント・イーストウッド
[アントワネット・リリー]
ソンドラ・ロック
[ジョン・アーリントン]
ジェフリー・ルイス
[ドック・リンチ]
スキャットマン・クローザース
[レフィ・ルバウ]
ビル・マッキーニー
[レナード・ジェイムズ]
サム・ボトムズ
[チーフ・ビッグイーグル]
ダン・ヴァディス
[ロレーン・ランニングウォーター]
シエラ・ペチャー
[ディックス保安官]
ウォルター・バーンズ
[カンタベリー医師]
ウッドロウ・パーフリー
[アイリーン・リリー]
ビヴァリー・マッキンジー
[ウィーカー警部補]
ダグラス・マクグラス
[ガソリンスタント店員]
ハンク・ウォーデン
[サナトリウムの警官]
ロイド・ネルソン
<<スタッフ>>
[監督]
クリント・イーストウッド
[製作]
デニス・E・ハッキン
ニール・ドブロフスキー
[製作総指揮]
ロバート・デイリー
[製作補]
フリッツ・メインズ
[脚本]
デニス・ハッキン
[撮影]
デヴィッド・ワース
[音楽]
スティーヴ・ドーフ
[編集]
ジョエル・コックス
フェリス・ウェブスター
[装飾]
ジーン・ルーリー
(ユージン・ルーリー)
[衣装デザイン]
グレン・ライト