オーストリア占領下のベネチアを舞台に、
ベネチア人伯爵夫人とオーストリア軍将校の不倫の恋を描くドラマ。
夏の嵐
SENSO
1954
イタリア
117分
カラー
<<解説>>
ボイトの短編小説「官能」を、イタリア映画界の巨匠ヴィスコンティが映画化した衝撃作。左翼主義に傾倒していたヴィスコンティは、市井の人々の生々しい姿を捉えるネオリアリスモ運動の旗手だったが、本作は、貴族の世界をの贅を尽くした美術と衣装で描いていく。これまでの作品とは雰囲気が一変した大作ではあるものの、ネオリアリスモの方法論はそのままで、貴族階級の人間の欲望をことさら赤裸々に暴いていく。また、運動家の侯爵の登場など、貴族出身であったヴィスコンティが自身を告白したような面も持つ作品である。
物語は、ベネチアの動乱を背景に、同胞の敵である将校に強く惹かれたある伯爵夫人の激情の軌跡を描いていく。不倫の恋の誘惑と戦いながらも、ある瞬間、理性を越えて衝動的に行動してしまう伯爵夫人。その狂おしさは、晩年の耽美主義的な作品の先駆けと言える。必見はラスト。もはや、慟哭すら越え、鳴咽を漏らす伯爵夫人。ロマンスとしては類を見ない残酷な結末は、半世紀以上も前の作品とは思えないほどの凄まじさで迫ってくる。
<<ストーリー>>
1866年、オーストリア占領下のベネチア。歌劇場でベネチア人運動家ロベルト・ウッソーニ侯爵が客を扇動し、オーストリア将校に決闘を申し込むという騒ぎを起こした。二人の争いを止めに入ったロベルトのいとこの伯爵夫人リビアは、ロベルトから挑まれた男フランツ・マーラーと知り合うことに。マーラーは将校でありながら、政治にも戦争にも興味がないという男だった。
ロベルトは扇動のかどでオーストリア軍に捕らえられ、流刑に処された。リビアはロベルトを救うという理由でマーラーのもとへ通うちに、彼に強く惹かれていった。リビアの気持ちは次第に抑えきれなくなるが、そんなある日、マーラーが突然、行方をくらました。そして、オーストリアとベネチアの間で再び戦争が始まった……。
<<キャスト>>
[リヴィア・セルピエーリ伯爵夫人]
アリダ・ヴァリ
[フランツ・マラー中尉]
ファーリー・グレンジャー
[セルピエーリ伯爵]
ハイツ・モーグ
[ローラ]
リナ・モレリ
[ボヘミアの役人]
クリスチャン・マルカン
[ルカ]
セルジオ・ファントーニ
[ロベルト・ウッソーニ侯爵]
マッシモ・ジロッティ
<<スタッフ>>
[監督]
ルキノ・ヴィスコンティ
[原作小説]
カミッロ・ボイト
「官能」
[脚本]
ルキノ・ヴィスコンティ
スーゾ・チェッキ・ダミーコ
カルロ・アリアネロ
ジョルジョ・パッサーニ
ジョルジョ・プロスペリ
[台詞]
テネシー・ウィリアムズ
ポール・ボウルズ
[撮影]
G・R・アルド
[音楽]
アントン・ブルックナー
「交響曲第7番ホ長調」
[指揮]
フランコ・フェルラーラ