殺人の罪で刑務所に入っていた祖父が13年振りに出所。
祖父“グランパ”とその孫である13歳の少女の交流をユーモラスに描くドラマ。
わたしのグランパ
2003
日本
113分
カラー
<<解説>>
筒井康隆のジュブナイル小説を菅原文太主演で映画化。石原さとみがスクリーンデビューを飾った作品でもある。過去に殺人を犯した祖父と、その孫である少女の交流をユーモラスに描いていく。少女の成長のドラマというより、一人の少女の目を通し、男の生き様の理想のひとつを描いたファンタジーである。昔気質でありながら、現代っ子にも好かれる飄々とした祖父のキャラクターが魅力的だが、この老人に「人生とはいかなるものか」などと説教臭いことを言わせることはしい。ヤクザの抗争をからめたりなどのエンターテインメントで全編を括った作りになっている。そもそも、殺人者である祖父が、破天荒ながらも極めて倫理的で常識的な人物とて描かれているところが逆説的で面白く、そんな彼の活躍を見ているうちに、自然と素直な気持ちになれる。子供の健全な育成に必要なのは理屈や説教ではなく、先人である大人の自分に恥じることのない毅然たる態度かもしれない、などとも考えさせる作品だ。
<<ストーリー>>
中学一年生の少女・五代珠子の家に、“囹圄(れいぎょ)の人”と人呼ばれている六十八歳の祖父・謙三が帰ってくることになった。「囹圄」とは牢獄のこと。謙三は人殺しをして、珠子の歳と同じ十三年間も刑務所に入っていたのだ。珠子が“グランマ”と呼んでいる祖母の操は、謙三が帰ってくると知ると、逃げるように家を出て行ってしまった。
珠子が謙三とはじめて会ったのは、学校の帰り道だった。謙三は人殺しとは思えない穏やかな人物で、地元の人々も何事もなかったかのように彼をあたたかく迎えた。珠子は、正義感が強くて頼りになる謙三をいっぺんに好きになり、彼に“グランパ”というあだ名をつけた。だが、謙三が人殺しであることが学校で噂になり、珠子と親友の町子は、ともみをリーダーとするいじめっ子に絡まれているようになってしまった。
イジメのプレッシャーに耐えられなくなったある日、珠子は思いもかけず、ともみたちにものすごいで勢いで啖呵をきってしまった。珠子は、自分にも人殺しの血が流れているのでは、など思うのだった。家に帰る途中、珠子はグランパと一緒になった。その時、珠子たちの前に不良の徳永たちが立ちふさがった。「人殺しなんか恐くない」といきがる徳永たちだったが、あっさりとグランパに組み伏せられた。一難去ったと思いきや、家の前にはヤクザが待ち受けていた。ヤクザのコウノとシノは、親分の疋田隆三から話があると告げた。だが、グランパはのらりくらりと知らないふりをしていた。
その夜、グランパは不良グループに、神社の境内に呼び出された。珠子と町子が急いで駆けつけると、グランパは不良たちにバットで殴り倒されるところだった。珠子は「警察を呼んだ」と叫び、不良たちを追い払った。翌日、グランパのもとに徳永たちが謝りにやってきた。グランパは素直な徳永たちを許し、昨夜のことも笑って水に流したのだった。
五代家にグランマが戻ってきた。グランパと顔を合わしたグランマだったが、ろくに話もせず、その晩は珠子の部屋に泊まった。珠子は思い切ってグランマに、グランパが刑務所に入った理由を尋ねてみた。十三年前、グランパは経営していた会社を地上げ屋の疋田に潰された上、親友である中藤ゲンキチの店「ジャスミン」が放火されたのだ。逃げ遅れた中藤は焼死し、激怒したグランパは疋田の事務所にたった一人で殴り込みをかけ、数人の組員を殺害したのだった……。
<<キャスト>>
[五代謙三]
菅原文太
[五代珠子]
石原さとみ
[五代恵一]
平田満
[五代千恵子]
宮崎美子
[疋田隆三]
伊武雅刀
[中藤慎一]
浅野忠信
[五代操]
波乃久里子
<<スタッフ>>
[製作総指揮]
小田信吾
早河洋
[企画/製作]
木村純一
堀義貴
山上徹二郎
黒澤満
[プロデューサー]
石井徹
菅井敦
梶淳
[アソシエイトプロデューサー]
岩本太郎
大健裕介
[原作]
筒井康隆
[撮影]
小林達比古
[照明]
中須岳士
[録音]
久保田幸雄
[美術]
菊地章雄
[編集]
青山昌文
[スクリプター]
石山久美子
[助監督]
藤江義正
[製作担当]
森崎裕司
[ラインプロデューサー]
渡辺栄二
[音楽]
Alpha
[監督/脚本]
東陽一