<<ストーリー>>
長年、朝日印刷で働いていた職工の一人が家業を継ぐために工場を辞めることに。そんな寂しい話題を吹き飛ばすように、あけみや“とらや”の皆が寅次郎の噂をしていたところ、当人から電話がかかってきた。彼が旅に出発してから、約一年ぶりだった。寅次郎は今、長州・萩で商売をしているのだという。相棒のポンシュウの商売道具のコンピューターで占ったところ、南の方角にすばらしい出会いがあるとのこと。寅次郎は、これから九州へ向かうことに決めたのだった。
連絡線で九州・福岡に渡った寅次郎は、飯塚の町で歴史のありそうな芝居小屋・嘉穂劇場を見つけた。小屋で掃除をしていた男と昔の小屋の賑わいを懐かしそうに話しているうち、寅次郎はかつてひいきにしていた中村菊之丞一座のことを思い出した。寅次郎が座長がどうしているか掃除の男に尋ねると、今年の夏に他界したとのこと。寅次郎は、一人残された座長の娘の美保に会いに行くことにした。
寅次郎が美保の暮らす筑豊の家を訪ねると、一人の若い女性がバイクで帰ってきた。その女性こそ、少女の頃に大空小百合の芸名で一座の舞台に立っていた美保だった。寅次郎を見て怪訝そうな顔をしていた美保だったが、彼が父の友人だと知ったとたん、寅次郎のことを思い出した。美保は寅次郎を家に招き、晩年、ボケてしたまった父のことを語った。寅次郎は美保の苦労を知るのだった。
その夜、寅次郎は美保がコンパニオンをしている旅館を紹介してもらい、そこに泊まった。翌日、筑豊を発つことになった寅次郎に香典返しをもってきた美保は、ふと、「東京に行きたい」ともとらした。寅次郎に「俺に何かできることあるかい」とやそしく尋ねられた美保は、「幸せの青い鳥が欲しい」と答えた。すると、寅次郎は商売の売れ残りの青い鳥の笛を美保に手渡したのだった。
それからしばらくして、“とらや”に寅次郎を訪ねて女性から電話がかかってくるようになった。それは仕事を探して上京してきた美保だったが、さくらたちは、相手が名乗らないため不審に思っていた。その夜も、美保は立ち寄った食堂から“とらや”に電話をかけたが、寅次郎はまだ帰ってきていないようだった。美保が店を出ようとしたとき、一人の若い男の客に声をかけられ、忘れ物をしたことに気付いた。
美保に声をかけた男は、画家を夢見て鹿児島から上京してきた健吾だった。食堂を出た健吾は、道端でうずくまっている美保を見つけた。健吾は、再び立ち上がって歩き出す美保を見ていたが、彼女が二人組チンピラにからまれたため、放って置けなくなった。健吾はチンピラたちに啖呵を切ると、美保を連れて逃げた。その夜、美保は、健吾が住み込みで働いている看板屋の彼の部屋に泊めてもらうことになった。深夜にようやく仕事が終えた健吾は、美保の寝ていた布団にもぐりこんだ。美保は悲鳴をあげるが、それが九州の方言だったため、同郷の二人は意気投合するのだった。
“とらや”に寅次郎が帰ってきた。だが、「青い鳥を求めて」などとうわごとのように呟き、元気のない様子。だが、つねが、女の人から電話があったことを教えると、寅次郎は声を張り上げて、「誰からだ」と詰め寄った。そして、誰だか分からないと知ると、今度は「電話の対応が悪い」などとつねを責め始めた。これには竜造も怒り出し、寅次郎に「手出て行ってくれ」と叫んだ。だが、そんな騒動も、突然、店先に話題の美保が現われたことで収まったのだった……。
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