<<ストーリー>>

夫と夫婦喧嘩の絶えなかったあけみが突然の家出をした。買い物に出かけたきり、一ヶ月あまりも帰ってこないのだ。心配する社長はテレビショーに出演し、カメラ越しにあけみに訴えかけるも、ただ日本中に柴又の恥をさらしただけだった。偶然、そのテレビショーを伊豆の下田で観ていたあけみは、“とらや”に電話をかけ、自分が元気であることをさくらに伝えた。また、あけみは「寅さんに会いたい」となどと呟いた。
ふらりと“とらや”に帰ってきた寅次郎は、待ち受けていたさくらたちに仰々しく迎え入れられて、びっくり。社長からあけみの家出のことを知らされ、居ても立ってもいられなくなった寅次郎は、休憩する間もなく、鞄を掴んで出発した。
下田に到着した寅次郎は、この界隈の水商売に詳しい知り合いを当たってみた。そして、すぐに、あけみの居場所が判明。彼女は“さくら”を名乗って、飲み屋に住み込みで働いていたのだった。あけみは寅次郎が会いに来てくれたことに大喜びしたものの、まだ柴又に帰る気はなかった。寅次郎は、“とらや”に電話し、二、三日あけみと一緒に旅をすることをさくらに断わった。
翌日、寅次郎は、いつ帰るかはあけみに任せ、気が済むまで二人で旅をすることを宣言。すると、あけみは沖に見えた伊豆七島の式根島を指し、「あそこに行きたい」と寅次郎にねだった。こうして、寅次郎とあけみは島へ向かう船に一緒に乗った。船内で寅次郎は、若者の一団と意気投合。その若者たちは島の学校の同級生で、これから恩師を囲んで同窓会を開こうというところだった。恩師は現在、歳は三十半ばで美人だという。教え子の人数は十一人。寅次郎を含めれば、ちょうど二十四の瞳だった。
船が島に到着すると、寅次郎は、若者たちの噂に違わない美人の女教師・島崎真知子と対面し、のぼせあがってしまった。もはや、あけみのことなどすっかり忘れ、真知子と若者たちにつてい行ってしまった。港に一人取り残されたあけみは、ちょうどそこに居た旅館の息子・茂の車に乗せてもらうことに。あけみは、島の景色の良いところや温泉に案内してくれた茂と打ち解けていった。一方、寅次郎はというと、あけみと同じく茂の館に泊まることになり、そこで開かれた同窓会にちゃっかり出席していた。
翌日、若者たちが島を去った後も、寅次郎は真知子の後にくっついて回るようになった。真知子の出身は、寅次郎と同じく東京の下町だった。寅次郎は、島で十五年間も教師をしているという真知子の悩みを聞くことに。真知子は「二十四の瞳」の女先生に憧れて島にやってきたのだという。はじめの頃は島の人たちに大事にされ、張り合いのある暮らしを送っていた。だが、今は島を出て行く人々を見送るばかり。彼女は、島では新たな出会いのないため、女性として焦りを覚えていた。
あけみはその日も茂の案内で島のあちこちを巡っていた。豊かな自然に大感激のあけみを見た茂は、「ずっとここにいればいい」と突然のプロポーズ。動揺したあけみは、慌てて自分が人妻であることを打ち明けた。だが、そのことで茂を傷つけてしまったと考えたあけみは、家に帰ることを決意。あけみが“とらや”に電話し、柴又に帰ることを告げると、さくらは、ついでに寅次郎を“首に縄をつけてでも”連れ帰るよう頼んだ。
あけみは、旅館に帰ってきた寅次郎に、明日帰ることを告げた。だが、真知子のことが気になる寅次郎にその気はなかった。あけみは、真知子との関係を皆にぶちまけると、寅次郎を脅した。思わず食ってかかった寅次郎だったが、悲しそうな顔をするあけみに気付き、詳しく事情を聞き出した。茂との一件を知り、恋に苦しむあけみに同情した寅次郎は、真知子に後ろ髪を引かれながらも、東京に帰ることにした……。



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