生真面目な社会学者が夫殺しで服役中の女囚にインタビュー。
社会学者は女囚の語る自由奔放な半生に引き込まれ……。
二人の奇妙な関係を描くコメディ。
私のように美しい娘
UNE BELLE FILLE COMME MOI
1972
フランス
98分
カラー
<<解説>>
トリュフォーが『恋のエチュード』に続いて撮ったコメディ。原作は、『何がジェーンに起ったか?』で有名なアメリカの作家ヘンリー・ファレル。前作の悲劇からうって変わり、あっけらかんとした作品で、天性の悪女とそれに弄ばれるマヌケな学者の関係をフランス純正のエスプリが利いた軽妙な語り口で描いていく。サスペンス・ミステリーの要素もあるが、ヒッチコックから影響を受けた『黒衣の花嫁』、『暗くなるまでこの恋を』とも異なり、まったく気取ったところがないところが良い。
強烈なのは、ヌーベルバーグを代表する女優ベルナデット・ラフォンの芝居。彼女の演じるヒロインは犯罪者であるが、そのキャラクターは、『黒衣の花嫁』のジャンヌ・モローの切実さとは正反対で、トリュフォーが好んで描いた子供の無垢さや無邪気さ持っている。ヒロインにはめられる学者が気の毒な一方、子供と女性の同居するヒロインの下品で残忍な所業も、子供の悪戯を見ているようでどうしても憎めないのである。トリュフォーのロマンスと見れば異色な作品だが、彼の資質から様々なエッセンスが盛り込まれた快作と言える。
<<ストーリー>>
社会学者のプレビンは、犯罪に走る女性についての論文のため、刑務所に取材に向かった。そこで、プレビンはカミーユという名の囚人を選び、彼女にインタビューを始めた――
カミーユがはじめて犯罪に関わったのは少女時代のことだった。自分を虐待で苦しめていた父親を事故死させ、罪で少年鑑別所に入れられたのだ。鑑別所を脱走した後、カミーユは、行きずりの男であるクロビスに拾われ、そのまま結婚してしまった。だが、カミーユはクロビスの母親から金を奪って逃げたのだった。
サロンで働き始めたカミーユは、その店の歌手サムと寝た。その後も、害虫駆除のアルチュール、弁護士のミュレーヌと次々と関係を持っていった。やがて、ミュレーヌがサムの妻と一緒に、カミーユを姦通で訴えようとした。そのことを知ったカミーユは、ミュレーヌとアルチュールを殺そうとするが……。
<<キャスト>>
[カミーユ・ブリス]
ベルナデット・ラフォン
[ミュレーヌ弁護士]
クロード・ブラッスール
[アルチュール]
シャルル・デネ
[サム・ゴルデン]
ギイ・マルシャン
[スタニスラフ・プレビン]
アンドレ・デュソリエ
[エレーヌ]
アンヌ・クレイス
[クロビス・ブリス]
フィリップ・レオタール
<<スタッフ>>
[監督]
フランソワ・トリュフォー
[製作]
マルセル・ベルベール
[原作小説]
ヘンリー・ファレル
[脚本]
ジャン=ルー・ダバディ
フランソワ・トリュフォー
[撮影]
ピエール=ウィリアム・グレン
[音楽]
ジョルジュ・ドルリュー