恋人にフられた女性がゲイの友人と同意の上で子供を作る。
だが、女性に恋人ができた時、子供の親権を巡り不本意な争いが起こってしまう。

2番目に幸せなこと

the next best thing

2000  アメリカ

108分  カラー



<<解説>>

『真夜中のカーボーイ』のシュレシンジャーの遺作。主演のマドンナにとっては、『エビータ』以来四年振りの映画出演。もう一人の主演は、『ベスト・フレンズ・ウェディング』でもゲイ役を好演し、実生活でもゲイであることをカミングアウトしているルパート・エヴェレット。主演の二人を連想させる登場人物の設定や真に迫った芝居などから、作品に二人の主張が盛り込まれていることが想像される、ややプライベートな趣のある作品である。
ストレートな女性とゲイの男性と二人の子供。これだけのシチュエーションならば、作品の内容として、ありそうでなさそうな奇妙な構成の家族の悲喜こもごもを描くドラマ、もしくは、コメディというものが想像されるだろう。実際、物語の前半は、その想像どおりの内容で、いたって和やかムードで展開していく。感情移入をさせるのも、エヴェレット演じるロバートよりも、マドンナ演じるアビーの方である。
しかし、後半から予想を大きく裏切るような重苦しい展開となり、観客の感情を容赦なく振り回していく。このあたりは、晩年、サスペンスに傾倒していたシュレシンジャーが、自ら培った手法を取り入れているようだ。良い人で通すのかとも思われたアビーは後半から憎まれ役に回り、観客の感情は急速にロバートに移っていく。注いだ愛情がなにも報われないロバートが、ひたすらに可哀相でならない。一方、目先の幸福に周りが見えなくなり、ロバートのことをないがしろにしてしまうアビーが、とにかく憎たらしい。
しかし、憎まれ役のアビーをはじめ、登場する人物が善人ばかりであることに気付くべきかもしれない。人間、誰もが幸せを求める権利を持っているのである。本作は、それに気付いてもらうために、やや極端ではあるが、誰も悪くないのに争いが起こってしまう不幸なケースの一例を示してみせる。観客に対して説教をするのではなく、あくまで、問題提起に止めているところが、この手の他のシリアスドラマとは異なるところだ。「こんなことになったらどうする? さあ、ディスカッションしましょう!」という呼びかけが聞こえてくるようで、道徳の授業の教材としてももってこいの作品とも言えそうだ。



<<ストーリー>>

ヨガのインストラクターのアビーにとって、ゲイの友達ロバートは良き恋の相談相手。ロバートは、恋人にフられたばかりアビーに、人工授精か養子縁組で子供を持つことを勧めた。ちょうど同じ時期に、ロバートの恋人がエイズで命を落とした。悲しみに暮れていたロバートは、酔っ払った勢いでアビーと寝てしまった。
やがて、アビーがロバートの子を妊娠したことが発覚。アビーが子供を産むことを望んだため、ロバートはゲイでありながら、父親になることを決意した。それから、アビーとロバートは同棲し、生まれてきた赤ん坊を一緒に育てるという奇妙な家族が誕生した。
アビーとロバートの息子は六歳に成長した。ロバートは模範的な父親になり、トムを心から愛していた。一方、トムは最近、友達から指摘されて、ロバートが普通の父親でないことに気付き始めていた。だが、それでも、彼はロバートのことが大好きだった。
良き父親と息子に恵まれ、幸福な日々を送っていたアビーとって、さらに素晴らしい出来事が訪れた。ヨガ・スクールの生徒であった銀行家のベンにデートに誘われたのだ。久しぶりの恋の予感に興奮し、張り切ってデートに出かけていったアビー。そんな彼女を見て、ロバートは漠然とした不安に襲われた。だが、ロバートの心配をよそに、アビーとベンの仲は急展開していった。
ある朝、ロバートは、家のベッドでアビーとベンが一緒に寝ているのを見つけて驚いた。いつのまにか二人は婚約していたのだ。アビーとベンはニューヨークへ引っ越すことになったが、二人がトムを引き取る相談を勝手に進めていたため、ロバートは激しく抗議した。ロバートは、自分の父親の権利を無視するアビーに対し、法的処置をとることを決意した。早速、ロバートは弁護士に相談するが、彼がゲイであることが問題だと指摘され、示談を勧められた。また、アビーに母親の資格がないことを強調するにも、彼女の短所がロバートには思いつかなかった……。



<<キャスト>>

[アビー]
マドンナ

[ロバート]
ルパート・エヴェレット

[ベン]
ベンジャミン・ブラット

[ケビン]
マイケル・ヴァルタン

[リチャード・ホイテッカー]
ジョセフ・ソマー

[サム]
マルコム・スタンプ

[ヘレン・ホイテッカー]
リン・レッドグレーヴ

[デイヴィッド]
ニール・パトリック・ハリス

[心臓学医]
マーク・ヴァリー

[アナベル]
スザンヌ・クルール

[フィン]
ステイシー・エドワーズ

[アビーの弁護士]
ジョン・キャロル・リンチ

[判事]
フラン・ベネット



<<スタッフ>>

[キャスティング]
マリ・フィン ,C.S.A.

[共同製作]
マーカス・ヴィシディ
リチャード・S・ライト

[音楽監修]
ハッピー・ウォルターズ
ゲイリー・ジョーンズ

[音楽]
ガブリエル・ヤーレ

[衣装デザイン]
ルース・マイヤーズ

[編集]
ピーター・ホネス ,A.C.E.

[美術]
ハワード・カミングス

[撮影]
エリオット・デイヴィス

[製作総指揮]
ゲイリー・ルチェシ
テッド・タネンバウム
ルイス・マニロウ

[製作]
トム・ローゼンバーグ
レスリー・ディクソン
リン・ラドミン

[脚本]
トーマス・ロペールスキー (トム・ロペールスキー)

[監督]
ジョン・シュレシンジャー



<<プロダクション>>

[提供]
レイクショア・エンタテインメント
パラマウント映画

[製作]
レイクショア・エンタテインメント