<<ストーリー>>

夫と喧嘩をしたあけみが、“とらや”に愚痴を言いにやってきた。それを追ってきた社長が、あけみをなだめ、どうにかうまくまとまりかけたところへ、折り悪く、寅次郎が帰ってきた。寅次郎があけみをかばうと、社長が怒り出し、二人は参道に出て大喧嘩。柴又中に“とらや”の恥を晒す騒ぎとなった。
社長との喧嘩の件で御前様に叱られた寅次郎は、その夜、気晴らしに一人で酒を飲んでいた。ところが、勘定の時分になり、持ち合わせが無いことに気付いたの。さくらに電話で金を持ってくれるよう頼むが、振られてしまった寅次郎は、無銭飲食で留置所に入る覚悟をした。寅次郎の隣りでは、サラリーマンの健吉が酒を飲んでいた。健吉は、寅次郎の事情を察すると、彼の飲み代の支払いを快く良く申し出たのだった。
健吉おかげで、寅次郎は警察の厄介にならずにすんだ。健吉から渡された名刺には、大企業“スタンダード証券”の課長という肩書きが記されていた。翌日、寅次郎は健吉に礼をするため、バナナを携え、日本橋にある“スタンダード証券”に向かった。忙殺されていた健吉は、暇人の寅次郎に構っていられなかった。だが、仕事に片がつくと、深夜まで待っててくれた寅次郎彼と飲みに繰り出し、すっかり意気投合したのだった。
翌朝、寅次郎が目を覚ますと、そこは見知らぬ家だった。居間に向かうと、台所では美しく品の良い女性が朝食の準備をしていた。寅次郎は、昨晩、茨城県牛久沼にある健吉の家に転がり込んだことを、酔っ払っていたため覚えていなかったのだ。目の前の女性は健吉の妻・ふじ子だった。事態を理解した寅次郎は、引き止めるふじ子を振り切り、大慌てで家を飛び出したのだった。
“とらや”に帰ってきた寅次郎は、しきりに「もったいない」と同じ言葉を繰り返していた。それというのも、健吉があんな美人の妻を持ちながら、早朝六時に家を出て、深夜に帰宅するという生活を続けてということを考えてのことだ。だが、健吉も仕事に終われる日々に甘んじていたわけではなかった。すっかり、嫌気がさしていたのだ。ある金曜日のことだった。いつものように出勤した健吉は、そのまま会社に姿を見せず、行方をくらましてしまった。
翌週、健吉が会社を病欠していると聞かされた寅次郎は、何も知らずに牛久沼に見舞いに向かった。そして、その時、ふじ子から、健吉が行方不明になったことを知らされた。寅次郎は、気が動転していたふじ子を慰めると、健吉を探し出すことを約束。占い師から健吉が北海道にいると言われた寅次郎は、“とらや”の金庫の金に手をつけようとして、竜造と一悶着に。見かねた博は、手がかりの無い健吉を探すより、万が一のことがあった後のことを考えるのが務めだと、寅次郎に言い聞かせた。ところが、それが裏目に出て、寅次郎はふじ子との仲を先走って考えてしまうのだった……。



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