沖縄から本土へ疎開に向かう学童を乗せた貨物船が米潜水艦の魚雷により撃沈された。
第二次大戦末期に起きた悲劇を描くアニメーション。

対馬丸
さようなら沖縄

1982  日本

70分  カラー



<<解説>>

1944年8月22日。沖縄から本土へ向かっていた貨物船“対馬丸”が、アメリカ軍の潜水艦“ボーフィン号”の魚雷攻撃を受けて爆発沈没。乗客の1661名(1788名とも)の大多数が死亡し、大きく見積もっても236名しか生き残れなかったという大惨事が起きた。タイタニック号の悲劇と比較されることもある事件であり、「対馬丸遭難事件」と呼ばれている。本作は、沖縄出身の作家・大城立裕の原作を基に、“対馬丸”に乗船していた疎開目的の学童を中心に描いた反戦アニメ映画で、「犠牲になるのは常に弱者」という、戦争の悲劇の本質を伝える。
“対馬丸”は長年の間、戦場で活躍してきた貨物船であったが、それ故の老朽化が仇となり、アメリカ軍の格好の標的となった。船に救命ボートなどの設備は無く、子供たちは生き延びるため、大人に海に投げ込まれた。戦争中という状況下のため、救命も迅速に行なわれなかった。犠牲者の中には漂流を余儀なくされる者あったという。学童の数は800余名であり、そのうち、生存者はたったの59名だったと伝えられている。映画のラストで、画面にびっしり出てくる被害者の氏名の一つひとつが、事実の重大さを物語っている。
重大で厳粛な事実を基にしているが、アニメ的な表現を悲劇の強調に発揮させたアニメならではの作品である。丸っこいキャラデザイン、コミカルな動作という、児童向けに作られたアニメーションの親しみ深さが、戦火を避けようとしていた子供が犠牲になるという悲劇を、より救いようがなく、いたたまれないものにしている。反戦というテーマも受け止める前に、まず、そこに描かれる悲劇に言葉を失ってしまう衝撃的な作品だ。



<<ストーリー>>

昭和十九年。アメリカの進撃は緩まず、沖縄が決戦の地になることは時間の問題だった。小学校教員の宮里は軍部の命令で本土への疎開をさせる学童を集めた。疎開に不安を感じる親たちに反し、子供たちは本土での生活に希望を持っていた。清もそんな子供の一人だった。
親に疎開許可を得た学童と、老人たち、計八百余名が本土に向けて沖縄を出航した。彼らが乗船するのは、戦場で数々の苦難を乗り越えてきたという貨物船・対馬丸である。船は敵を警戒しながらも、順調に航海を続けた。清の友達は、海面に潜水艦の潜望鏡を発見するが、見張りの大人には信じてもらえなかった……。



<<キャスト>>

[清]
田中真弓

[健治]
丸山裕子

[勇]
安達忍

[宮里]
安原義人

[昭男]
伊沢弘

[大村大尉]
村越伊知郎

[船長]
阪脩

[屋良校長]
二見忠男

[軍医]
池水通洋

[炊事係]
槐柳二

[市長]
納谷悟朗

[弘子]
酒井ゆきえ

[英俊]
熊倉一雄



<<スタッフ>>

[監督]
小林治

[企画]
映画センター沖縄県連絡会議

[プロデューサー]
伊藤正昭
宇田川東樹

[作画監督]
芝山努
河内日出夫
山田みちしろ

[脚本]
大久保昌一良
千野皓司

[原作]
大城立裕 「対馬丸」

[音楽]
槌田靖織

[美術]
清水一利

[音響監督]
田代敦巳

[音響効果]
柏原満

[主題歌]
KEI 「海の記憶」



<<プロダクション>>

[製作]
対馬丸製作委員会