スケート場に現われたチャーリーが浮気性の夫婦と騒動を巻き起こす。
チャップリンがローラースケートの妙技を披露する短編コメディ。

チャップリンの
スケート

THE RINK

1916  アメリカ

28分  モノクロ   サイレント



<<解説>>

今回、チャーリーが大暴れするのは、題名の通りスケートリンク。しかし、スケートと言っても、アイススケートではなく、ローラースケート。『モダン・タイムス』のワンシーンでも見せた華麗なスケーティングが堪能できる作品だ。スケートを履いたチャーリーはまさに水を得た魚。恋敵キャンベルも、いつも以上にコテンパンにされる。チャーリーが息を吹きかけてキャンベルを転ばせるギャグが愉快だ。
スケート以外にも、『モダン・タイムス』の原型と思われるアイデアが随所で見られる。鳥の丸焼きに卵を生ませたり、カフスに注文をメモをしたりといった、給仕のチャーリーが飛ばす一連のギャグがそれ。チャップリン流のアイデアやギャグが、ミューチュアル時代で既に完成の域に達していたことを窺わせるのである。
ギャグの目玉は、互いの秘密を握っている人々が一堂に会してしまうというパーティの場面。チャーリーが他の登場人物と秘密を共有し、互いにそれを黙っているというシチュエーションは、同時期の『伯爵』にもある。しかし、今回はそれの発展形で、エドナ以外の主要人物全員がそれぞれに相手の秘密を握っているという修羅場を迎える。ラストは例のごとく追いかけっこだが、場所がスケートリンクであるだけに、一味違ったドタバタが楽しめる。



<<ストーリー>>

娘のエドナがスケートに行っている間、父はレストランで食事。そのレストランの給仕チャーリーは、客の持ち物をくすねたり、同僚とケンカを始めたりと、勤務態度がすこぶる悪い。レストランにやってきたスタウト夫人は、ちょうどエドナの父の隣りのテーブルへ。スタウト夫人に色目を使われ、まんざらでもないエドナの父。彼は、夫人のテーブルを移ってイチャイチャし始めるが、チャーリーに邪魔された。一方、スタウト夫人の夫はスケート場にいた。彼も夫人に劣らず浮気性で、若いエドナにしつこく言い寄っていた。
昼休み。チャーリーは、「ランチに行く」と告げると、いつもの燕尾服に着替えて店を出て行った。チャーリーが向かったのはスケート場。得意のスケートの妙技を披露し、リンクは彼の独壇場に。エドナは、そんなチャーリーを見込んで、スタウト氏を追い払ってくれるように頼んだ。鮮やかなスケートさばきで、スタウト氏をきりきり舞にしたチャーリー。彼が気取ってエドナに渡した名刺には、「サー・セシル・セルツァー」の名。もちろん他人の名刺である。その時、エドナの知り合いの女性が近づいてきて、チャーリーは、エドナも主席するパーティに誘われることに。だが、偶然にもスタウト氏は、婦人の昔の恋人であり、彼もパーティに来ることになってしまった……。



<<キャスト>>

[給仕]
チャーリー・チャップリン (チャールズ・チャップリン)

[娘]
エドナ・パーヴィアンス

[父]
ジェイムズ・T・ケリー (ジェイムズ・T・ケリー)

[スタウト氏]
エリック・キャンベル

[スタウト夫人]
ヘンリー・バーグマン

[コック]
アルバート・オースティン

[エドナの友人]
シャーロット・ミノウ

[給仕]
ジョン・ランド



<<スタッフ>>

[脚本/監督]
チャールズ・チャップリン

[撮影]
ロリー・トザロー (ローランド・トザロー)



<<プロダクション>>

[提供]
ミューチュアル・フィルム