ゴルフ場にやってきた浮浪者チャーリーが、彼とそっくりなボンクラ紳士と間違えられ……。
チャーリーが上流階級の避暑地で暴れ回る短編コメディ。

チャップリンの
ゴルフ狂時代

( のらくら )
( ノラクラ )

THE IDLE CLASS

1921  アメリカ

32分  モノクロ   サイレント



<<解説>>

チャップリンがいつもの浮浪者と、エドナの亭主の二役を演じる。初公開時は『のらくら』という題名だった。ダメな浮浪者とダメな亭主を対比的に描くことで、ダメっぷりは文無しであろうとお金持ちであろうと関係ない、と皮肉る。つまり、社会的地位や立場を越えた人間の公平性を訴えているかのような作品だ。
本作のコメディの主な舞台として、当時はまだお金持ちの道楽だったゴルフを取り上げている。浮浪者にゴルフをやらせ、ホールで暴れまわらさせる様は、ブルジョア指向を土足で蹂躙しているようで、胸がすく。くだらないことで紳士同士に殴り合いさせる場面なんかを見ても、相当にお金持ちをおちょくっているのである。
見どころは、二役で演じられたダメ亭主のキャラ。トラブルを周囲に撒き散らすチャーリーに対し、この亭主はトラブルを自足供給、つまり、一人でパニクっているのである。希に見るおバカっぷりは、チャップリンのギャグの新しい発見と言えそうだ。一方、浮浪者のチャーリーはというと、普段よりいたずらっぽさが増しているように思える。ラストの、仲直りと見せかけて……は、もう最高。



<<ストーリー>>

避暑地の駅に到着した列車。列車から降り立つ紳士淑女に混じり、荷物入れにちゃっかり乗り込んでいた浮浪者チャーリーの姿もあった。彼の型には、ボロボロのゴルフバッグ。いっちょ前にゴルフを楽しもうというのである。
その頃、ホテルでは、チャーリーそっくりの紳士が身だしなみを整え、妻との待ち合わせ場所に出かけようとしていた。このボンクラの亭主は、妻エドナから酒グセが悪いことを嫌われていて、彼女から必ずシラフで来ることを約束されていた。ところが、亭主はロビーで電話をしている最中、大変なことに気付いた。ズボンを履いていない! 新聞紙で下半身を隠しながら、部屋に戻った亭主だったが、それをエドナに見られてしまった。エドナは亭主がまた酔っ払っていると思い、愛想をつかして一人で出かけて行った。
ゴルフクラブにやってきたチャーリーは、ホールに出ると、フェアウェイに転がっていた球を勝手に打ってしまった。その球の主であるハンチング帽の紳士は、チャーリーに食ってかかった。だが、チャーリーの指し示した足元には、もうひとつの球が。ハンチング帽の紳士は早とちりに気付いて、チャーリーに詫びた。だが、その球は、後ろのカンカン帽の紳士が打ったものだった。そうとも知らず、球を打ったハンチング帽の紳士は、カンカン帽の紳士にボコボコに殴られる破目に。
紳士二人が殴り合っている間、チャーリーはそ知らぬ顔ゲームを続けた。すると、打ち損じた球はが、昼寝をしていた男の口の中にすっぽり。チャーリーが男の腹を踏みつけると、口の中から次から次へと球が出てきた。その時、チャーリーは、ホールの外れで乗馬中のエドナを目にし、その可憐な姿に釘付け。エドナが人妻とも知らないチャーリーは、馬が暴走でもして、それを助けたことをきっかけに彼女と結ばれたらいいのになあ、と妄想をめぐらすのだった。
チャーリーは、昼寝の男の口の中から手に入れたいくつかの球を並べ、ルール無用で打ちつづけた。その球は、酒で休憩しようとしていたカンカン帽の紳士に命中。さらに、球を探しに来たチャーリーに帽子を踏み潰され、怒り心頭。たまたま、側を通りかかったハンチング帽の紳士は、とばっちりを受けて、またボコボコにされるのだった……。



<<キャスト>>

[放浪者/亭主]
チャーリー・チャップリン (チャールズ・チャップリン)

[妻]
エドナ・パーヴィアンス

[父]
マック・スウェイン

[昼寝の男/警官姿の客]
ヘンリー・バーグマン

[公園の警官]
アル・アーネスト・ガルシア

[ゴルファー]
ジョン・ランド

[スリ]
レックス・ストーリー



<<スタッフ>>

[脚本/製作/監督]
チャーリー・チャップリン (チャールズ・チャップリン)

[撮影]
ローランド・トザロー

[カメラ操作]
ジャック・ウィルソン

[装飾]
チャールズ・D・ホール

[助監督]
チャールズ・ライズナー



<<プロダクション>>

[提供]
ファースト・ナショナル