第一次大戦の最前線へ送られた新兵のおかしな戦場生活を描く。
1918年製作の短編コメディの改訂版。

チャップリンの
担へ銃

( 担へ銃 )
( チャップリンの担え銃 )
( 担え銃 )
( チャップリンの兵隊さん )

SHOULDER ARMS

1959  イギリス/アメリカ

43分  モノクロ   サイレント



<<解説>>

1959年に過去の短編の再編集映画『チャップリン・レヴュー』の一編として公開されたバージョン。ちなみに、同時に公開されたのは、『犬の生活』、『偽牧師』。オリジナルの製作は1918年で、上映時間は36分。改訂版では、チャップリン自身のナレーションや音楽を追加し、43分に編集されている。
改訂版では、本編の前に「チャップリンです」と、本人のナレーションで自己紹介が入る。それから、1915年にハリウッドにスタジオを建てた当時の思い出が語られ、リハーサル風景やチャーリーのメイクをするチャップリンの姿など、貴重なフィルムが紹介される。ここでチャップリンが自らの喜劇を“コミック・バレエ”と称しているのも興味深い(ここまでで約3分経過)。そして、物語の背景となる、第一次大戦と思しき戦場の実写フィルムの紹介の後、本編『担へ銃』が始まる。
チャップリンの批判精神や鋭い観察眼が向けられるのは、戦争でも例外ではない。本作は、戦場にありがちな様々な出来事を、チャップリン一流のギャグで包んだ傑作コメディである。敵兵の描き方が戦時下の日本における“鬼畜米兵”そのものだったり、なんだかんだ言ってアメリカ軍が鮮やかに勝利を収めるあたりは、時代背景によるものと思われる。しかし、戦争を茶化そうとするチャップリンの意図は十分に伝わってるため、一種の反戦映画と捉えても良いだろう。
繰り出されるギャグの数々は舞台が舞台なだけに、これまでの作品における他愛も無いギャグと比べると、けっこう過激なものもある。しかし、チャップリの例のごとくの軽やかな身のこなしや、戦場を舞台にしているとは思えないほどのん気な曲調の音楽が効果を発し、戦場で“戦争ごっこ”をしているような、狂気スレスレの可笑しみが出ている。また、本作における字幕は、台詞に代わる表現としてだけでなく、ギャグの表題を掲げる役目が大きい。特に物語の前半は、字幕をテンポ良く挿入することで、エピソードを細かく刻み、まるで4コマ漫画を連続して見ているかのような小気味よさが生まれている。
後半になってくると、物語がストーリー性を帯びてきて、主人公の新兵の華麗なる活躍が中心に描かれていく。主人公がアメリカを大勝利に導くクライマックスは一見すると好戦的だ。しかし、敵味方共に一滴の血も流さずに戦争を終結してしまうあたりは、チャップリン流の皮肉である。後の『独裁者』、『殺人狂時代』などで、あからさまな反戦メッセージを伝えるのも悪くはないが、悲劇的な要素を抑え、徹底的に笑い飛ばしてしまう方がよりチャップリンらしいと言えるのではないだろうか。



<<ストーリー>>

回れ右も満足に出来ないマヌケなアメリカの新兵チャーリー。訓練を終えた彼は、おおよそ戦いには役立ちそうもない日用品で武装して、戦地に向かった。そこは、フランス軍とにらみ合う前線の塹壕。壕の壁に彫られた横穴を野営とし、過酷な戦地での生活がはじまった。とは言っても、チャーリーの戦争は緊張感がまるでなし。そぼ降る雨と銃弾の飛び交う中で彼が想うのは、都会で行きつけていたバーのことだったりした。
兵士たちに故郷から便りが届いた。自分だけ便りのないチャーリーは、戦友の手紙を盗み見て一喜一憂。そのうちに贈れて自分の分の便りが届いた。包みの中から出てきたのは、固くて歯が立たないクラッカーと、腐って悪臭を放つリンバーガーチーズ。チャーリーはガスマスクをつけるとチーズを敵陣に投げ込んだ。チーズは見事に敵の隊長の顔面に命中した。
一日の戦闘を追えて、眠りに就く兵士たち。長雨のせいで、壕の中の寝床は水びたし。だが、疲れた体を癒すにはのに贅沢はいっていられない。チャーリーは、そばにあった漏斗をシュノーケルにして、水没したベッドに横になるのだった。
朝一の突撃作戦。チャーリーの認識番号は不吉にも“13”。身だしなみを整えると鏡も割れた。塹壕を飛び出してゆく戦友たちに先を譲り、いちばん最後に飛び出していったチャーリー。だが、運良く敵陣の占領に成功し、13人の捕虜を取ったのだった。
チャーリーがすっかり仲良くなった戦友と、銃弾飛び交う塹壕で食事をとっているいるうちに、新しい作戦の指令が下った。先ほどの成功で調子に乗ったチャーリーは作戦に志願するが、敵陣への潜入という命の保証がない危険な作戦だった。かくして、チャーリーは木に変装して、敵陣深くへ入っていった……。



<<キャスト>>

[娘]
エドナ・パーヴィアンス

[歩兵]
チャールズ・チャップリン

[チャーリーの戦友/皇帝]
シドニー・チャップリン (シド・チャップリン)

[小さなドイツ兵]
ロイヤル・アンダーウッド

[太った髯のドイツ兵/皇帝のお付/バーテンダー]
ヘンリー・バーグマン

[無口なドイツのきこり]
トム・ウィルソン

[アメリカ兵/髭のないドイツ兵/髭のあるドイツ兵]
アルバート・オースティン

[ドイツの皇太子]
ジャック・ウィルソン

[アメリカ兵]
ジョン・ランド

[アメリカ兵]
パーク・ジョーンズ



<<スタッフ>>

[監督]
チャールズ・チャップリン

[撮影]
ローランド・トザロー

[カメラ操作]
ジャック・ウィルソン

[美術]
チャールズ・D・ホール

[助監督]
チャールズ・ライズナー

[脚本/製作]
チャールズ・チャップリン

[作曲]
チャールズ・チャップリン

[編曲]
エリック・ジェイムズ
エリック・スピア

[助手(チャップリン)]
ジェリー・イプスタイン

[編集]
デレク・パーソンズ

[編集助手]
ポール・デイヴィス

[録音]
ボブ・ジョーンズ
ヨーク・スカーレット



<<プロダクション>>

[提供]
ファースト・ナショナル