文無しの浮浪紳士と雑種の野良犬。
似たもの同士である一人と一匹の共同生活を描く。
1918年製作の短編コメディの改訂版。

チャップリンの
犬の生活

( 犬の生活 )

A DOG'S LIFE

1959  イギリス/アメリカ

39s分  モノクロ   サイレント



<<解説>>

チャップリンは『ニューヨークの王様』の発表後の1959年に、『犬の生活』、『担へ銃』、『偽牧師』の過去の短編3本(いずれもファースト・ナショナル時代の製作)を改訂し、『チャップリン・レヴュー』として公開した。本作は、その時点でのバージョンである。オリジナルの製作は1918年。チッャプリン自身による音楽や音響効果が追加され、上映時間はオリジナルの33分から39分に編集されている。
いよいよ、ストーリー性を重視し始めた、ファースト・ナショナル時代の第一作。基本的には、シチュエーションに依存したドタバタであるが、主人公である浮浪者と野良犬を対比させることで、物語に意味付けを試みているところは、これまでの作品とは異なる。また、野良犬に対する主人公の保護者的な愛情も新鮮は、後に『キッド』や『街の灯』へ発展していくもので、これ以降、類型的なヒロインとの類型的なロマンスはあまり描かれなくなる。本作もまた、いくつかあるターニングポイントのひとつ言えるかもしれない。
サウンド版では、哀愁あるメロディーにより、野良犬のように暮している主人公の悲哀を表現。犬の救出するくだりには劇的が曲が付けられ、珍しくチャーリーの奮闘に感情移入させられる場面となった。そもそも、チャップリン自身が自作に音声や音響効果を追加すること自体、オリジナルを汚しているなどという評価もあり、ファンから疑問視されることもある。しかし、犬の声を付け加えなかったり、ヒロインが歌う場面の音声を旋律だけにして歌詞をつけなかったりしたあたりは、チャップリンの無声映画への愛情が感じられる。逆に、一部の音声が付いたことで、音声の無い部分が際立ち、かえって効果的になった演出もある。主人公が強盗のひとりを気絶させた後、二人羽織で起きているように見せかけるという、無声であることを逆手に取ったギャグがそれだ。



<<ストーリー>>

明け方。空き地で目覚めた浮浪者チャーリーは、警官に追われている途中で職業あっせん所を発見。ビール醸造の仕事に求人があることを知ったチャーリーは受付窓口に走るが、要領悪く、他の失業者たちに仕事をとられてしまうのだった。
受付窓口が締め切られたため、チャーリーは仕方なくあっせん所を後にした。チャーリーがぼんやりと通りを眺めていると、野良犬同士のケンカが勃発。大きな犬たちが、小さな白い雑種犬をよってたかって苛めてるのを目にしたチャーリーは、いてもたってもいられなくなり、その雑種犬を救出したのだった。
チャーリーと雑種犬の共同生活がはじまった。一人と一匹は盛り場の「青ちょうちん」で食べ物にありつこう考えた。店には犬を同伴できないので、チャーリーはズボンの中に雑種犬を押し込んだ。その時、ズボンの破れ目から犬のシッポが飛び出しているのに気づかなかった。「青ちょうちん」の客たちは、シッポの生えた男が店に入ってきたことに仰天した。
店のステージに新人の女性歌手が登場。懐かしの歌を切々と歌いあげた歌手は、店内を感涙で満たした。ステージを下りた歌手は、客の相手をしなければならなかったが、引っ込み思案の性格のため、それができなかった。困っていた歌手に気付いたチャーリーは、彼女とダンスを申し込んだ。すっかり打ち解けたチャーリーと歌手。ところが、一文無しであることがバレたチャーリーは、店員に店からつまみ出されるはめに。チャーリーは寝床の空き地に戻り、ふて寝するのだった。
チャーリーが目を覚ますと、雑種犬が土の中から何かを掘り出していた。なんとそれは紙幣の詰まった財布だっだ……。



<<キャスト>>

[浮浪者]
チャールズ・チャップリン

[酒場の歌手]
エドナ・パーヴィアンス

[屋台の店主]
シド・チャップリン (シドニー・チャップリン)

[太った失業者/ダンスホールの女性]
ヘンリー・バーグマン

[職業あっせん所の受付]
チャールズ・ライズナー

[強盗]
アルバート・オースティン

[警官]
トム・ウィルソン



<<スタッフ>>

[脚本/監督]
チャールズ・チャップリン

[撮影]
ローランド・トザロー

[カメラ操作]
ジャック・ウィルソン

[美術]
チャールズ・D・ホール

[助監督]
チャールズ・ライズナー

[音楽作曲]
チャールズ・チャップリン

[編曲]
エリック・ジェイムズ
エリック・スピア

[助手(チャップリン)]
ジェリー・イプスタイン

[編集]
デレク・パーソンズ

[編集助手]
ポール・デイヴィス

[録音]
ボブ・ジョーンズ
ヨーク・スカーレット



<<プロダクション>>

[提供]
ファースト・ナショナル

[製作]
チャールズ・チャップリン