フットボールの特待生として、大学進学を目指す高校生。
だが、コーチとの対立がもとで、夢への扉が閉ざされてしまう。
本邦未公開の青春映画。

栄光の彼方に

( トム・クルーズ 栄光の彼方に )

ALL THE RIGHT MOVES

1983  アメリカ

91分  カラー

日本劇場未公開



<<解説>>

トム・クルーズが出世作『卒業白書』に続いて主演した作品。『タクシードライバー』、『レイジング・ブル』などの撮影監督だったマイケル・チャップマンがはじめてメガホンを執った。ただし、撮影は自ら行なわず、後に『スピード』で注目される新鋭ヤン・デ・ボンに任せている。
その町で生まれ育ち、大人に成長したら町に栄える産業に従事し、町から出ずに一生を終える。例えば、スポーツが得意だったり、軍隊に入ったりしない限り、町から抜け出すことはできない。しかも、そんな現実に疑問を持つ者は少ない――若者が田舎町から脱出する手段を探し求め、悶々とする日々を描くというのは、アメリカ製青春映画のバリエーションのひとつであり、現代でも同様の作品が作られ続けている。若者が上京したいと思えば、すぐに実現できる日本とは事情が違うため、ちょっとピンことないとこもあるかもしれないが、これがアメリカ人のごく一般的な青春なのだろう。つまり、本作のような青春映画は、対外的なハリウッド大作に対して、比較的国内に向けたものと言えるかもしれない。
トムの演じるキャラクターは、『卒業白書』とほとぼ同じであり、ストーリーもやや似通ったところもある。しかし、コメディ作だった前作と比べると、本作は、青春映画の基本フォーマットに従った上で、アメリカの田舎特有の青春の姿をわりかしストレート、かつ丁寧に描いている。巻き起こる事件も突拍子のないものでなく、現実に即したものとなっている。内容的には突出したところがないため、間の悪い少年を演じるトムや、彼と対立するコーチを演じたC・T・ネルソンの芝居を中心に楽しむ作品となりそうだ。ただし、決して暗い作品ではなく、見終わった後になぜか、トムとリー・トンプソンのヌードやラブシーンにやたら強烈な印象を残すあたりは、娯楽映画として正しかったりする。



<<ストーリー>>

アメリカの小さな鉄鋼町。そこに暮す高校生ステフは、エンジニアになることを夢見みていたが、成績はあまり良いほうではなかった。そこで彼は、得意のフットボールの特待生として、大学に入ろうと考えていた。
ステフの所属するチームは大会に出場し、大学進学のかかった大事な試合に挑んだ。だが、あと一歩のところでチームは敗退してしまった。ステフは、チームが試合に負けたのは、コーチのニッカーソンに責任があること思い、そのことを本人に指摘した。だが、それがニッカーソンの怒りを買ってしまい、ステフはチームを辞めさせられたのだった。
その後、ニッカーソンが、彼のことを恨む酔っ払いから、家にゴミを投げ捨てられるなどの嫌がらせを受ける事件が起きた。偶然、その現場に居合わせていたステフは、ニッカーソンに犯人の仲間だと誤解されることに。それを期に、ニッカーソンに決定的に嫌われたステフには、もう、大学から誘いの声もかからなくなってしまった……。



<<キャスト>>

[ステファン]
トム・クルーズ

[ニッカーソン]
クレイグ・T・ネルソン

[リサ]
リー・トンプソン

[ブライアン]
クリス・ペン (クリストファー・ペン)

[シャドウ]
レオン

[フォックス]
キース・ダイアモンド

[フリーマン・スミス]
テリー・オクィン

[講堂の教師]
ディック・ミラー



<<スタッフ>>

[監督]
マイケル・チャップマン

[製作]
スティーヴン・ドイッチ

[原案]
パット・ジョーダン

[脚本]
マイケル・ケイン

[撮影]
ヤン・デボン

[音楽]
デイヴィッド・キャンベル

[キャスティング]
マイク・フェントン
ジェーン・ファインバーグ
マーシ・リロフ