<<ストーリー>>
バスチアンは本と空想の好きな少年。母親を亡くしてからというもの、前より物思いにふけることが多くなり、授業もサボりがちになっていた。そんな大人しい性格が災いして、バスチアンはクラスメイトに意地悪をされていた。その日の朝も天敵であるいじめっ子三人組に出くわしてしまった。三人組から逃げ出したバスチアンは、手近のドアを潜り商店の中へ。そこはめずらしい本がたくさん置かれた古本屋だった。バスチアンは、店主のコリアンダーが読んでいた本に興味を示した。だが、コレアンダーは「これは特別な本」と言ってバスチアンに見せようとしない。なんでも、読んでいるうちに読者が読者でなくなる本であるらしい。どうしても読みたくなったバスチアンは、コレアンダーが電話をしている隙に本を拝借した。
学校に着くともう授業がはじまっていたので、バスチアンは薄暗い倉庫に隠れて、さっき借りてた本を読むことにした。本は大きくて分厚く、表紙には二匹の蛇をかたどった紋章がはめ込まれていた。題名は「はてしない物語」。さっそく、バスチアンは表紙をめくり、本を読み始めた。物語は、ファンタージェンという架空の世界の森の中からはじまった――森の中でこびとのティニー・ウィニーや子鬼が休んでいると、北の方から巨大な石人ロック・バイターがやってきた。ロック・バイターの話では、彼の住む北の国からおいしい石や美しい湖が消え始めているのだという。それは、子鬼の住む西の国でもおなじことだった。ファンタージェンに何か恐ろしい異変が起きているらしい。真相を確かめるため、子鬼は女王のいる象牙の塔に行くことにした。
ファンタージェンの中央にある白く美しい象牙の塔。子鬼が小窓から広間を覗き見ると、そこには彼と同じように異変に気付いた者たちが世界の方々から押し寄せてきていた。だが、女王は広間に姿を現さず、代わりに出てきたのは、医師のカイロンだった。カイロンは、世界が“無”によって滅ぼされつつあること、女王が重病であること、そして、女王の病の原因が“無”であることを皆に報せた。だが、これであらゆる望みが絶たれた訳ではなかった。女王の病を治す方法を見つめるために、草原族の勇士アトレーユが、いまここに向かっているのだ。その時、カイロンの前にひとりの少年が進み出た。
カイロンは目の前の少年を追い払おうとしたが、彼こそ、世界を救うただひとつの望みである勇士アトレーユだった。アトレーユは、カイロンから、二匹の蛇をかたどったアウリンと呼ばれるお守りを受け取ると、愛馬アルタクスにまたがり、冒険の旅に出発した。その時、アトレーユは、無の手下である人狼グモルクが追ってきていることには、まだ気付いていなかった。まず、アトレーユは、博学である生きた化石モーラに意見を聞くため、彼が住んでいると伝えられるコウラ山を目指し、かなしみの沼にやって来た。この沼では、悲しみにとらわれた者は、沼の底に沈んでしまうのだという。アトレーユは、ぬかるみに足を取られながら懸命に進んでいたが、突然、アルタクスが動かなくなってしまった。アルタクスが悲しみにとらわれたのだ。
アトレーユの必死の呼びかけも叶わず、アルタクスは沼の底に沈んでしまった。アルタクスを失った悲しみに耐えながら、さらに先に進んだアトレーユは、コウラ山を見つけて這い上がり、頂上からモーラの姿を探した。だが、その丘こそ、モーラ自身だったのだ――モーラが巨大な亀の姿を現すと、本を読んでいたバスチアンは思わず悲鳴をあげた――かなしみの沼に悲鳴が響き渡った。アトレーユは周囲を見回すがモーラの他に誰もいなかった――バスチアンは自分の悲鳴がアトレーユに届いたことに驚いた――さて、アトレーユはモーラに尋ね、南のお告げ所というところに行けば、女王の病気を直す方法が得られることを教えられた。だが、南のお告げ所までは、ここから一万マイルも離れていると知り、アトレーユは途方に暮れた。
とにかく、アトレーユは南へ向けて歩き出した。だが、沼地はどこまでも続いていて、そのうちにアトレーユは力尽きて倒れてしまった。アトレーユが沼に沈もうとした時、空から白い龍が現われた。龍はアトレーユを沼から救い出し、空の彼方に消えていった――ほっと息をついたバスチアン。もう授業はとっくに終わっていたが、そのまま本を読みつづけることにした――アトレーユが目を覚ますと、そこは見知らぬ場所で、側には大きな白い龍がいた。龍は“ラッキー・ドラゴン”ファルコンと自己紹介し、かなしみの沼から南のお告げ所の近くまでひとっ飛びしてきたことをアトレーユに教えた。アトレーユを介抱してくれたのは、エンギブックとウグルのこびとの老夫婦だった。夫のエンギブックは学者であり、南のお告げ所の入り口である門をここから観測しているのだという。
エンギブックに連れられ、門の観測所に上ったアトレーユは、そこで恐ろしい光景を目にした。ちょうど勇ましい甲冑の騎士が門を潜ろうとしていたが、門の左右に立つスフィンクスの放った光線を浴びて、あっけなく死んでしまったのだ。エンギブックの研究によれば、門を潜る際に少しでも怖がるものなら、左右のスフィンクスの目が開き、あの騎士のように殺されてしまうのだという。だが、アトレーユは勇気を出し、門の前までやって来た。門の下には無残な騎士の死体と無数の白骨が散らばって、アトレーユは思わず歩みをとめてしまった。スフィンクスを見上げると、まさに目を開けようとするところだった……。
クレジットはこちら