油田火災を消し止めるため、莫大な報酬を見返りに
ニトログリセリンを搬送する男たちの姿を描くドラマ。

恐怖の報酬

LE SALAIRE DE LA PEUR

1953  フランス/イタリア

148分  モノクロ



<<解説>>

フランス映画と言えば、ラブ・ロマンス、フィルーム・ノワール(暗黒物)、楽天的なコメディ、といったイメージが一般的かもしれない。しかし、本作はそれらのイメージを覆し、“男のロマン”という表現すら生ぬるい、命知らずの男たちの運命を描いた骨太のドラマを見せる。クルーゾー監督の代表作で、主演はシャンソン歌手でもあるイヴ・モンタン。
ほんの一滴に僅かな衝撃を与えただけで、大爆発を引き起こすニトログリセリン。それを満載したトラックを運ぶ四人の男たち。彼らに次々と襲い掛かる危機また危機。膠着した現状を打破するためには、時には思い切った行動が必要なのかもしれない。しかし、なぜ男たちは、自殺行為とも言えるほど危険極まる仕事をやり遂げなければならなかったのか? ニトロを運ぶという単純なサスペンス・スリラーであると共に、理不尽な社会構造の中で追い詰められた人間の狂気もリアルに伝えている。数々の危機描写もさることながら、克明に捉えられた男たちの焦燥の表情も出色。映画史上最高とも言える異常なまでの緊張感に、観ている方もあぶら汗を流し、呼吸が止まりそうになる。体調を整えてからの観賞を推奨。
1977年にはウィリアム・フリードキンによりリメイクされた。また、コンピュータで着色された「カラーライズ版」がある。



<<ストーリー>>

南米のある町。仕事に溢れてしまったコルシカ人のマリオとその友人たちは、この地を抜け出すチャンスにも恵まれず、浮浪者同然の暮らしを強いられていた。そんなある日、遠方の山で油田火災が発生し、現場まで消火用のニトログリセリンを運ぶという仕事の募集が舞い込んだ。莫大な報酬に惹かれたマリオたちは、危険を承知の上で、すぐにその仕事に飛びついた。
マリオ、ルイジ、ビンバ、ジョーの四人は、大量のニトログリセリンを満載した二台のトラックに分乗して町を出発した。彼らを待ち受けていたのは、波打つ長い山道、崩落する峠の待避棚、道路を遮る落石。四人はそれらの様々な困難を力を合わせて乗り切って行ったが……。



<<キャスト>>

[マリオ]
イヴ・モンタン

[ミスター・ジョー]
シャルル・ヴァネル

[ビンバ]
ペーター・ファン・アイク

[キャンプのチーフ]
アントニオ・センタ

[ベルナルド]
ルイ・ド・リマ

[スメルロフ]
ヨー・デスト

[ヘルナンデス]
ダリオ・モレノ

[ビル・オブライエン]
ウィリアム・タッブス

[リンダ]
ヴェラ・クルーゾー

[ルイジ]
フォルコ・ルリ



<<スタッフ>>

[監督]
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー

[製作]
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
レイモンド・ボルデリー

[原作小説]
ジョルジュ・アルノー

[脚本]
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
ジェローム・ジェロミニ

[撮影]
アルマン・ティラール

[音楽]
ジョルジュ・オーリック

[装飾/装置]
ルネ・ルヌー

[編集]
アンリ・ルス
マドレーヌ・ギュ
E・ミューズ