オーソン・ウェルズはいかにして映画「市民ケーン」を作り上げたか?
モデルとして私生活を暴かれた新聞王との戦いを描くドラマ。

ザ・ディレクター
[市民ケーン]の真実

RKO 281

1999  アメリカ

86分  カラー



<<解説>>

リドリー、トニーのスコット兄弟の製作会社で製作された、オーソン・ウェルズに関するドラマ。主演は若い頃のウェルズに雰囲気が似ているリーヴ・シュレイバー。自分の芸術のためなら手段を選ばない若者をエネルギッシュに演じる。ケーンのモデルにされた新聞王ハーストに扮するのは、ベテランのジェイムズ・クロムウェル。孤独で不器用な老人を哀愁を漂わせつつ演じる。本国ではテレビ放映用として製作されたが、日本では劇場公開された。
『市民ケーン』製作のそもそも動機は私生活の曝露だった!? 映画史に残る傑作の製作の舞台裏を、狡猾な若者と哀れな老人の攻防を中心に描いていく。なんとしてでも映画を公開しようと手を尽くすウェルズに対し、一方のハーストも負けてはいない。『市民ケーン』の中でちゃかされているような手段を用いて映画の公開を妨害する。『市民ケーン』ではハーストが悪者として描かれているが、本作では中立で、ウェルズとハーストのどちらに正義があるとも言えない描き方をされている。つまり、どっちもどっちなのである。
ウェルズが撮影中に起こした伝説的な逸話も、もちろん再現。一行のセリフのために五十数回もカメラを回したり、ローアングルを撮るために床に穴を掘ったりといったエピソードから、ウェルズのキチガイぶりが窺える。しかし、映像的にも内容的にも優れ、後に語り草になる作品を撮ることが出来たのは、こうした地道な努力があってのこそだったのだろう。『市民ケーン』を既に観ている人、あるいは、これから観ようと思っている人にとって、非常に興味深い作品である。



<<ストーリー>>

ラジオドラマ「宇宙戦争」で全米を震撼させた若き天才オーソン・ウェルズが、ついにハリウッドに上陸。映画製作会社RKOと契約を結んだオーソンは、処女作の準備を開始した。作品の主題の選択に悩んでいたオーソンは、招待されたパーティの席で、主催の新聞王ハーストと対決することに。人の揚げ足を取り、動物愛護の説教をしたハーストの偽善に、オーソン辟易した。その時、オーソンは、途方もない権力を振りかざすハーストをモデルに映画をとることを決意した。
ハーストの権力は映画界にも及んでいたため、オーソンの相棒である作家マンキウィッツは逃げ腰だった。たが、オーソンの熱意に負けたマンキウィッツは、十年前に執筆していた書きかけの小説を取り出した。実は、マンキウィッツもハーストのことを作品にしようとしたことがあったのだ。オーソンはマンキウィッツの小説をもとに、彼と共同で脚本を執筆。オーソンが大幅に改訂した脚本は、もはや、マンキウィッツの原作を離れ、ハーストの私生活を思わせる要素が盛り込まれたものに変貌。中でも著しいのは、ハーストが愛人マリオンの局部を指して使っている「ハラのつぼみ」という言葉であった。
RKOの社長ジョージ・シェーファーは影響力の大きさを心配し、撮影の開始を渋っていたが、オーソンは隙をついて撮影を開始した。そして、天才オーソンの執念と集中力が結実し、大作「市民ケーン」が完成した。ところが……。



<<キャスト>>

[オーソン・ウェルズ]
リーヴ・シュレイバー

[ウィリアム・ランドルフ・ハースト]
ジェイムズ・クロムウェル

[マリオン・デイヴィース]
メラニー・グリフィス

[ハーマン・J・マンキウィッツ]
ジョン・マルコヴィッチ

[ローラ・ハーソンズ]
ブレンダ・ブレシン

[ジョージ・シェーファー]
ロイ・シャイダー

[グレッグ・トランド]
リーアム・カニンガム

[ルイス・B・メイヤー]
デイヴィッド・スーシェ

[ヘッダ・ホッパー]
フィオナ・ショウ



<<スタッフ>>

[監督]
ベンジャミン・ロス

[製作]
スー・アームストロング

[製作総指揮]
リドリー・スコット
トニー・スコット

[企画]
クリス・ザーパス

[脚本]
ジョン・ローガン

[撮影]
マイク・サウソン

[音楽]
ジョン・アルトマン

[キャスティング]
ローラ・ケネディ
ジョイス・ネットレス



<<プロダクション>>

[製作]
スコット・フリー