動乱のドイツを舞台に描かれる劇作家リリアン・ヘルマンと幼馴染みジュリアの友情の物語。

ジュリア

JULIA

1977  アメリカ

118分  カラー



<<解説>>

アメリカの女流劇作家リリアン・ヘルマンの回顧録を、名匠ジンネマンが映画化。戦争という背景も細かく描き込まれているが、それよりも、女の友情を大きなテーマとした作品である。主人公の作家自身と、反ナチスの地下組織として暗躍する親友ジュリアとの関係が、思いもよらないほどドラマチックに展開していく。
『ジャッカルの日』からさらに円熟味を増したジンネマンの演出は、リリアン自身のジュリアに対する熱い想いをそのまま映像に焼きつけるかのようだ。まず、リリアンの回想として語られるジュリアとの想い出のパートは、ことさら幻想的に描かれている。さらに、ことある毎に少女時代を振り返っては、ジュリアに対する愛情を確認する部分に至っては、耽美的ですらある。このように過度に感情が入り込んでいるかと思えば、一方でスリラーとしても見応えがある。舞台をヨーロッパに移した後、リリアンがジュリアの金を運ぶシーケンスは、スパイ映画さながらのスリルと興奮を味わわせてくれる。
危険を省みずに親友に会いに向かうリリアンと、彼女を信頼しその到着を待つジュリア。再会した二人の交わす会話は言葉少なめだが、フォンダとレッドグレイヴの素晴らしい芝居が多くを語っている。見つめあう視線から窺わせる並々ならない友情が感動的だ。また、男が入り込む余地のないリリアンとジュリアの関係を、客観的だが優しく見守る推理作家ダシール・ハメットの存在も忘れてならない。



<<ストーリー>>

アメリカの劇作家リリアン・ヘルマンは、恋人の推理作家ダシール・ハメットと同棲中、幼馴染みのジュリアのことに想いを馳せた。少女時の頃からあつい友情を育んだリリアンとジュリア。やがて、大学を卒業したジュリアは、希望を胸にウィーンへ向かった。だが、運悪くナチスの台頭が始まってしまった。
ある日、リリアンは、ジュリアが暴動に巻き込まれて重体になったという報せを受け、早速、ウィーンへ向かった。だが、ジュリアが病院を抜け出して行方をくらましてしまったため、リリアンは止む無くウィーンを後にした。ジュリアと音信不通になっている間、リリアンは劇を完成させ、作家として成功をおさめた。
リリアンが仕事でヨーロッパを旅行していた最中、ジュリアの同志を名乗るヨハンという男が接触してきた。現在、ジュリアは反ナチ運動を展開しているというのだ……。



<<キャスト>>

[リリアン・ヘルマン]
ジェーン・フォンダ

[ジュリア]
ヴァネッサ・レッドグレイヴ

[ダシール・ハメット]
ジェイソン・ロバース

[アラン・キャンベル]
ハル・ホルブルック

[ドロシー・パーカー]
ローズマリー・マーフィー

[ヨハン]
マクシミリアン・シェル

[女の乗客]
ドラ・ドール

[少女の乗客]
エリザベス・モーテンセン

[アン・マリー]
メリル・ストリープ

[サミー]
ジョン・グローヴァー

[少女時代のジュリア]
リサ・ペリカン

[少女時代のリリアン]
スーザン・ジョーンズ

[引受人]
モーリス・デナム

[パスポート・オフィサー]
ジェラルド・ビュア

[祖母]
キャスリーン・ネスビット



<<スタッフ>>

[原作]
リリアン・ヘルマン

[脚本]
アルヴィン・サージェント

[製作]
リチャード・ロス

[監督]
フレッド・ジンネマン

[製作総指揮]
ジュリアン・デロード

[製作補]
トム・ペブスナー

[撮影]
ダグラス・スローカム

[音楽]
ジョルジュ・ドルリュー

[美術]
ジーン・キャラハン
ウィリー・ホルト
カーメン・ディロン

[編集]
ウォルター・マーチ

[衣装デザイン]
アンシア・シルバート

[キャスティング]
ジュリエット・テイラー
マーゴット・カペリア
ジェニア・ライザー



<<プロダクション>>

[提供]
リチャード・ロス