英雄・黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)が女性たちをさらう寺の陰謀の挑む。
「ワン・チャイ」シリーズの番外編的作品。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ
天地雄覇
(
ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲
)
黄飛鴻鐡雎門蜈蚣
CRAWS OF STEEL
1993
香港
112分
カラー
<<解説>>
黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)とは、19世紀末から20世紀初頭にかけて実在した武術家で、その死後、香港映画で英雄として描かれるようになった英雄的人物である。多数存在する黄飛鴻役者の中では、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズのリー・リンチェイや「酔拳」シリーズのジャッキー・チェンが日本で比較的有名だが、本国中国では、百作以上あると言われてる黄飛鴻映画の大半で主演を務めた關徳興(クワン・タクヒン)が最も有名である。本作は、「ワン・チャイ」シリーズで、主人公を演じていたリー・リンチェイが、シリーズの監督のツイ・ハークとの関係決裂の後、変名の李陽中で製作した作品であるが、その原作となっているのは、關徳興の「元祖・黄飛鴻」シリーズの一作『黄飛鴻鐵鷄鬥蜈蚣』(1956)である。
「ワン・チャイ」シリーズのうち、リー・リンチェイの主演した三作は、近代中国史を巻き込む壮大なストーリーと、人間業を超えた華麗なアクションの完成度が高く、香港映画の最高峰と言える傑作だった。しかし、コメディ・タッチで描いた本作は、シリアスだった前作までとの雰囲気のギャップが著しいため、ファンの予想を覆す爆笑編となった。女性の誘拐という悪事をはたらく義和拳の僧に、黄飛鴻が自ら編み出した鶏拳で挑む姿を描いていくという物語なのだが、動乱の中国を舞台にしていた前作と比べてしまうと、どう見ても、ご近所のトラブルに巻き込まれているようにしか見えない。だから、ここはひとつ、ツイ・ハークの「ワン・チャイ」シリーズとは切り離し、リー・リンチェイ独自解釈の黄飛鴻映画として見るべきでだろう。
診療所兼道場である“宝芝林”が娼館と交流を持つ破目になるという、黄飛鴻の堅物キャラを利用したギャグも楽しいが、クライマックスのムカデ拳対鶏拳の死闘に至っては、もはやマンガである。ワイヤーにより人間が吹っ飛びまくる演出も、ツイ・ハークの華麗さとはほど遠いものがあるが、その代わり、キョンシー映画を想起させるようなハチャメチャに痛快なアクションに仕上がっている。さらに、ダメ押しのNGシーン集(力の抜けそうな広東語のテーマ曲付き)で幕を閉じるサービスの良さ。まさに、古き良き香港映画の雰囲気を堪能できる大充実の作品であり、もしかしたら、このような気取らないコメディ路線こそ、黄飛鴻映画の本来あるべき姿なのかも知れない。
本家「ワン・チャイ」シリーズは、黄飛鴻役をチウ・マンチェクが引継ぎ、4、5作目が作られたが、6作目となる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ 天地風雲』でリー・リンチェイの黄飛鴻が復活した。
<<ストーリー>>
医師で武道家のウォン・フェイフォンは、弟子のフーとソーを伴ない、診療所兼道場・宝芝林を移転させた。ところが、宝芝林の隣りは娼館であり、フェイフォンたちは娼館の客引きのシーフーや娘のジウと交流を持つことなった。
ある日、フェイフォンのもとに、エマという女性が助けを求めてやってきた。悪名高き義和拳の寺が、エマの妹をはじめとした女性たちをさらっているというのだ。フェイフォンは寺へ乗り込んで僧を倒すが、肝心の誘拐の証拠が出なかったため、理不尽にも裁判にかけられることに。実は、法を司る高官こそ、寺の首領ルイ・フェイだったのだ……。
<<キャスト>>
[黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)]
リー・リンチェイ
(ジェット・リー)
[梁寛(レオン・フー)]
レオン・カーヤン
[牙擦蘇(ソー)]
ディッキー・チャン
[エマ]
チョン・マン
[黄獅虎(ウォン・シーフー)]
チャン・パクチャン
(ナット・チャン)
[チン・ワ]
ツィ・チョンソン
(アラン・ツィ)
[ユエン・ロン]
チュン・ファト
[五娘(ジウ)]
アニタ・ユン
[高官/雷飛(ルイ・フェイ)]
ラウ・カーファイ
<<スタッフ>>
[監督/脚本]
ウォン・ジン
(バリー・ウォン)
[製作]
リー・リンチュイ
(ジェット・リー)
[製作総指揮]
チャールズ・ヒョン
ジミー・ヒョン
[撮影]
ジングル・マ
トム・ラウ
[音楽]
ジェイムズ・ウォン
マーク・ライ
[美術]
ジェイソン・マク
[編集]
マク・チーセン
[衣装デザイン]
トニー・オウ
[アクション監督/武術指導]
ユエン・ウーピン