釣りバカ・コンビが、故郷の萩で穏やかな生活を送る元常務に会いに向かう。
シリーズ通算14作目。
釣りバカ日誌12
史上最大の有給休暇
釣りバカ日誌
12
2001
日本
111分
カラー
<<解説>>
シリーズの監督として登板した本木克英の二作目。本作の主人公は、釣りバカ・コンビではなく、元常務と言っても良いかもしれない。自らリタイアを宣言する常務を演じるのは、東京都知事を辞めたばかりであった青島幸男。それだけでも面白いが、病床で、自作「明日があるさ」を口ずさむサービスも見せたりもする。物語は、共に会社を支えてきたスーさんと元常務との友情をメインに据えながら、サイドストーリー的に、元常務の姪と若き医師とのロマンスを描く。ゲストとして、姪役の宮沢りえ、その相手役の吉岡秀隆ら迎える。
ここ数作はテーマが暗く、本作も“定年退職”や“リタイヤ”がキーワードとなっている。あまつさえ暗いのに、終盤にかけて救いようのない展開となり、「釣りバカ」的には意外なほど、しんみりとした場面が多くなっている。しかし、物語の中盤で見せるハマちゃんと取引先の部長(大杉漣)のミョウな掛け合いなど、明るくすべきところは思い切り明るくし、コメディとして、全体にメリハリをつけている。また、ラスト近くの大オチを導くため、いつにも増して強調されるハマちゃんの釣り中毒っぷりも笑わせる要素のひとつだ。
シリーズの中での変化のひとつとして、ハマちゃんの良き喧嘩相手であるお隣さん・船頭のハチが外人の奥さんを迎える。この変化によって、これまで以上に両家の交友がよく描かれるが、ハマちゃんとハチが庭に出て喧嘩する場面などは、往年の「男はつらいよ」を観ているようだ。また、釣りバカ・コンビが元常務を見舞う場面では、ナーバスになっている元常務を刺激しないよう、禁句を設けるというお役束がある。この他にも、「男はつらいよ」シリーズを思わせる演出が随所に見受けられる。前作は「釣りバカ」にフレッシュな風を吹き込んだ快作だったが、本作はポスト「男はつらいよ」として定番化していくことを予感させる堅実な一作となったと言えるかもしれない。
<<ストーリー>>
社長の一之助と一緒に会社を立ち上げた鈴木建設の常務の高野が、四十年目にして突然、辞職を表明した。故郷である山口県萩に帰り、穏やかな生活を送りいたいというのだ。それからしばらくして、萩の高野から一之助のもとに手紙が届いた。手紙には「晴耕雨読の日々の中で、一日いちにちがいとおしい」などと書かれていた。だが、忙しく働いている一之助にとって、高野のハッピー・リタイアメントは面白いものではなかった。
そんな時、山口で催される「きらら博」の展示施設建設のため、一之助が現地に出張することになった。出張のついでに、萩の高野と話をしたいと思った一之助だったが、二人きりは心もとなかったため、営業三課の浜崎伝助を誘うことに。浜崎は、日本海で釣りをする気で満々だったが、問題は有給休暇が取れるかどうか。覚悟を決めて正面から届書を提出した浜崎は、無欠勤を貫く佐々木課長に泣かれながらも、どうにかハンコを手に入れたのだった。
「きらら博」の会場の視察を終えた一之助は、公園で釣りをしていた浜崎を見つけて合流。二人はその足で高野の家を訪ねるが、本人は不在であり、代わりに姪の薬剤師・梢が居た。梢から高野が腎臓の病気で入院していると知らされた一之助と浜崎は、早速、見舞いに向かった。高野は一之助を見ると、梢が会社に報せたと思って不機嫌になるが、浜崎とは「冬になったら鮪を釣ろう」と約束をした。翌日、浜崎は日本海で釣り上げた河豚の刺身を病室で振る舞い、高野を励ました。一方、河豚の肝を誤って口に含んでしまった一之助は、口が麻痺したため、結局、高野と話をすることが出来ず終いとなった。
一之助と浜崎が東京へ帰った後、梢は高野の担当医の医師・上杉から、高野の様態について説明を受けた。検査の結果、腎臓の腫瘍が悪性であることが分かり、手術が必要だというのだ……。
<<キャスト>>
西田敏行
浅田美代子
宮沢りえ
吉岡秀隆
加藤武
柴俊夫
荻島真一
鶴田忍
児玉謙次
加島潤
加藤満
丹野由之
津久井啓太
藤波晟
筒井巧
野々村のん
松本あまり
北山雅康
石橋奈美
麻生奈美
曽我部あきよ
針生りんたろう
妹尾青洸
荒金蔵人
藤元康史
津田健太郎
安井裕子
土肥美緒
柳野幸成
高橋成子
アベリータ・フルタ
井川哲也
有安多佳子
嶋崎伸夫
岩崎ひろし
福田勝洋
鳥木元博
佐渡光雄
井川修司
江川曜子
小森敬
水谷さとみ
牧野里砂
前田忠明
松田英彦
フォワードタレントオフィス
放映プロジェクト
山口県宇部市・萩市のみなさん
辺見えみり
梶原真弓
菅原隆一
笹野高史
中本賢
中村梅雀
大杉漣
谷啓
奈良岡朋子
青島幸男
三國連太郎
<<スタッフ>>
[プロデューサー]
瀬島光雄
中川滋弘
深澤宏
[原作]
やまざき十三
・作
北見けんいち
・画
(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載)
[脚本]
山田洋次
朝間義隆
[撮影]
花田三史
[美術]
横山豊
[音楽]
大島ミチル
[照明]
土山正人
[編集]
川瀬功
[録音]
岸田和美
[音楽プロデューサー]
小野寺重之
[宣伝プロデューサー]
亀井威
[助監督]
花輪金一
[監督]
本木克英
<<プロダクション>>
[製作]
松竹