脱獄囚が乗り込んだ機関車が機関士不在のまま暴走。
黒澤明原案のスペンス・アクション。

暴走機関車

RUNAWAY TRAIN

1985  アメリカ/イスラエル

111分  カラー



<<解説>>

本作の原案は、66年に黒澤明がハリウッドからのオファーを受けて書いたものである。それは、『トラ・トラ・トラ!』の総監督に抜擢される以前のことであり、黒澤にとってハリウッドでのはじめての仕事となったはずだった。ところが、脚本のリライトをめぐってハリウッド側ともめにもめた末、製作は頓挫。そのまま、お蔵入りになりかけたが、80年代半ば、キャノン・グループのゴーランとグローバスにより、ついに映画化された。
キャノン・グループと言えば、80年代に、チャック・ノリスの「地獄のヒーロー」シリーズ、ブロンソンの「デス・ウィッシュ」シリーズ(2作目から製作)、「アメリカン忍者」シリーズなどといったB級映画を乱発してきた、知る人ぞ知る製作会社である。本作も低予算で製作されたものと思われるが、B級というハンデを逆手にとり、列車内という密室を上手く使った極限の心理ドラマに仕上げている。随所に挿入される機関車の重量感のある疾走シーンも迫力だ。脚本には、元犯罪者であり、刑務所から脱獄すること幾多という作家エドワード・バンカーが参加。彼が脱獄囚の心理の考証にひと役買ったからか、ジョン・ヴォイトとエリック・ロバーツが扮する主人公が非常に魅力的に描かれている。ラストシーンは男泣きだ。
『七人の侍』→『荒野の七人』、『羅生門』→『暴行』といったように、黒澤映画のリメイクや翻案作は数作あるが、黒澤が一からハリウッドに関わった作品としては、本作が最初で最後の作品となった。作品としては面白くヒットもしたが、黒澤映画とみるには持ち味が出ているとは言い難いため、“幻の黒澤映画”のリメイクとして観たほうが良いかもしれない。



<<ストーリー>>

三年間も罰房に入れられたことで、アラスカのストーンヘイブン刑務所のヒーローとった無期懲役の強盗犯マニー。彼は、お調子者のレイプ犯バックと一緒に刑務所を脱獄した。吹雪の中を歩きつづけた二人はやがて機関車を見つけ、その中に乗り込んだ。ところが、走り出した機関車は、病気の発作を起こした機関士が列車から連絡したため、停まらなくなってしまった。
機関車の暴走を知った鉄道管制所は、脱線させることで列車を停車させようとした。だが、その機関車には、マニーとバックの他に、機関士見習の女性サラが乗っていた。サラは、はやくも列車から飛び降りようとするマニーとバックを引き止めた。そして、三人で、二輌目以降のディーゼル・エンジンを停止させていくが……。



<<キャスト>>

[マニー]
ジョン・ヴォイト

[バック]
エリック・ロバーツ

[サラ]
レベッカ・デモーネイ (レベッカ・デ・モーネイ)

[フランク・バーストウ]
カイル・T・ヘフナー

[ランケン]
ジョン・P・ライアン



<<スタッフ>>

[音楽作曲/指揮]
トレヴァー・ジョーンズ

[撮影]
アラン・ヒューム ,B.S.C.

[原作脚本]
黒澤明

[脚本]
ジョルジェ・ミリチェヴィク
ポール・ジンデル
エドワード・バンカー

[製作]
メナハム・ゴーラン
ヨーラン・グローバス

[監督]
アンドレイ・コンチャロフスキー