目が見えず、耳が聞こえず、口も利けない三重苦の
ヘレン・ケラーの少女時代を描いた舞台劇の映画化。

奇跡の人

THE MIRACLE WORKER

1962  アメリカ

106分  モノクロ



<<解説>>

ブロードウェイで上演された舞台を、舞台版の演出家アーサー・ペンが、アン・バンクロフト(アニー・サリバン役)とパティ・デューク(ヘレン・ケラー役)のオリジナルキャストで映画化した作品。視覚と聴覚に重い障害に苦しむヘレンと、それを克服させようとする家庭教師サリバンの関係に焦点をしぼって描いていた、闘病記の一種。しかし、いくら映画だからといっても、三重苦であるヘレン自身の苦しみを、ナレーション等で代弁したりはしない。自らの苦しみを訴えられないヘレンに代わりに、自らも障害を持つサリバンの過去の回想や新米教師としての苦悩を語ることで、ヘレンの心の叫びを投影という形で間接的に伝えている。
ヘレンとサリバンの過ごした日々は、文字通りの戦いの日々であり、しばしば、スラップスティック・コメディの手法を逆手にとったかのような演出で、真剣な追いかけっこを見せていく。ヘレンを食卓に着かせようとするサリバンと、あくまでそれに反抗しようとするヘレンが、食堂で延々と格闘を繰り広げるシーンは特に秀逸だ。二人の壮絶な戦いの物語は、ヘレンがはじめて言葉の意味を理解した瞬間に収束していく。ヘレンが世界を理解した瞬間を劇的に描くことによって、本作は、人間が人生の中で幾度となく繰り返す「発見」の喜びと感動を再発見させてくれる作品に仕上がった。



<<ストーリー>>

ヘレン・ケラーは生まれて半年で言葉を覚え始めた早熟の子だったが、原因不明の病気で視力と聴力を失ってしまった。何も聞こえない暗闇の中で活きることになったヘレンは、言葉を発することもしなくなり、思い通りにならないことがある度にかんしゃくを起こしては、家族を困らせたのだった。
ヘレンが七歳になった頃、彼女に手を焼いていた両親は、家庭教師を雇うことを決断。そして、ヘレンの家に盲学校から新米教師のアニー・サリバンがやってきた。彼女も目に障害を抱えていた。ヘレンは両親に甘やかされて育ったため、言葉を覚える以前に、最低限のしつけも出来ていなかった。サリバンは、好き勝手に行動するヘレンに体当たりで挑んで行き、彼女を食卓に座らせることに成功した。
だが、ヘレンの父親アーサーは、ヘレンに厳しく接するサリバンの教育方針が気に入らなかった。サリバンは、自分を家から出て行かせようとするアーサーを説得し、ヘレンと小屋に二人きりで生活することを頼むが……。



<<キャスト>>

アン・バンクロフト
ヴィクター・ジョリー
インガー・スヴェンソン
アンドリュー・プライン
キャスリーン・カムギース
パティ・デューク



<<スタッフ>>

[脚本/原作戯曲]
ウィリアム・ギブソン

[助監督]
ラリー・スターン

[カメラ操作]
ジャック・ホートン

[装飾助手]
メル・ボーン

[記録監修]
マギー・ジェイムズ

[音響]
エミル・コリシュ
リチャード・ヴォリスク (ディック・ヴォリスク)

[監督助手]
ジーン・ラスコ

[衣装]
ラス・モーリー

[音響効果編集]
ヒュー・A・ロバートソン

[音楽編集]
エドワード・ベイヤー

[メーキャップ]
ハーマン・バックマン

[ヘア・スタイル]
エド・カラガン

[オプチカル/特殊効果]
フィルム・オプティカルズ

[音楽作曲]
ローレンス・ローゼンタール

[撮影]
アーネスト・カパロス

[装飾]
ジョージ・ジェキンス

[製作担当]
ハリソン・スター

[編集]
アラム・アヴァキアン

[製作]
フレッド・コー

[監督]
アーサー・ペン