妻に先立たれた初老の男と、その日から彼の前に
現れるようになった白い犬との交流を描く大人の童話。
白い犬とワルツを
2002
日本
99分
カラー
<<解説>>
テリー・ケイの原作は、既にアメリカでは93年にテレビ映画化されているが、日本でベストセラーになったのは出版から数年後の2001年。ブームに合わせる形で、主人公の老人役に仲代達矢を迎えて映画化したのが本作。舞台はアメリカ南部から、田園風景が瑞々しい日本の山村に変更。物語も日本人にとっつきやすいように、日本的な情緒を含んだものに翻案されている。主人公も、頑固でシャイな日本の父親として登場していて、犬を媒介とした家族との関係よりも、息子のように思っている在日韓国人の青年との絆が良く描かれているところが興味深い。余生に向かい合う老人の勇気や希望といったテーマはしっかり踏襲しつつ、そこに新しい解釈を加味することにより、(それが原作ファンにとってありがたいものだったかどうかは別として、)同じくアメリカ発のストーリーを原作とした『幸福の黄色いハンカチ』のように、邦画のオリジナル作品と観ても十分な感動作に仕上がっている。
<<ストーリー>>
造園業を営む初老の男・中本英助は、妻・光恵と娘・恵美と山奥の家で三人暮らし。光恵の誕生日には、もう一人の娘・由恵もやって来て、家族四人がそろった。光恵は自分の誕生祝いの最中にも、五年前に出戻りしてきた恵美の再婚のことを心配していた。翌日、仕事から帰った英助は、物干し場で倒れている光恵を発見。病院に運ばれた時には手遅れで、光恵は指を三本立てて英助に何かを伝えた直後に息を引き取った。
通夜の夜、妻を失ったショックで茫然自失となっていた英助は、元来の頑固な性格も手伝い、「これからは山小屋で一人暮らしする」と宣言。娘たちの反対の声も聞かず、さっそく小屋へ移った英助は、夕闇の中に白い犬がいるのを見つけた。英助は犬を餌付けようとするが、由恵と恵美にはその犬の姿が見えなかった。由恵と恵美は、父が幻覚を見ていると疑い、父の友人の順礼にいたっては、その犬は幽霊に違いないと言うのだった。
光恵の葬儀の後、大阪で暮していた秀一が帰ってきた。彼は母の順礼と共に中本家と家族ぐるみで付き合いのある在日韓国人である。順礼は秀一が生まれた頃、光恵に乳を借りたことで中本家にはとても感謝していた。だが、秀一は違った。彼は、英助の弟子として彼の仕事を手伝っていたことがあった。だが、理由もなしに殴られたことを根に持っていたのだ。そもそも、英助との確執は、秀一がまだ幼かった頃に起きた忌まわしい事故に端を発していた。
幼い秀一が英助の息子・英一郎と共に山で事後に遭った時のこと。秀一だけが助かり、英一郎は生きて帰ることが出来なかった。それ以来、秀一は、英一郎のことで英助に憎まれている思っていたのだ。また、在日である自分が恵美と交際していたことについても、英助がこころよく思っていないのでは、と勘ぐっていた。
秀一は久々に会った英助に恨みの言葉を吐き散した。だが、英助はあえて、怒りを露にする秀一に対して頭を下げた。そして、自分が死んだら、その骨を妻と英一郎と一緒に故郷に埋めて欲しい、と頼んだ。光恵が出した三本の指はこのことを指していたのだ。また、英助は、恵美との結婚も許すと言ったが、それは逆に秀一の怒りに油を注ぐことになってしまった。
秀一と喧嘩別れになった直後、英助はトラックで単独事故を起こした。娘たちから自由に出歩かないよう言い聞かせられた英助は、ある賭けを提案した。それは、「あの白い犬が存在しないないのならば、おとなしく言うことに従う」というものだった……。
<<キャスト>>
仲代達矢
若村麻由美
豊原功補
野崎海太郎
田中愛里
畦田恭平
熊萌恵
加瀬功
石井洋充
阿木五郎
滝藤賢一
新海なつ
荒木悠司
横山通乃
松尾勝人
辻本香里
西巻正人
前田栄
横塚和子
大塚さと
船津正康
山崎刀麻
平井靖
青木雅大
南果歩
藤村志保
<<スタッフ>>
[「白い犬とワルツを」製作委員会]
創映新社
シネカノン
アスミック・エース エンターテインメント
衛星劇場
アミューズメントメディア総合学院
東京映像工房
カルチュア・パブリッシャーズ
ポニーキャニオン
[エクゼクティブ・プロデューサー]
吉田尚剛
[企画]
鍋島壽夫
[プロデューサー]
片岡公生
貝原正行
水野純一郎
[原作]
テリー・ケイ
「白い犬とワルツを」
(新潮社刊)
[脚本]
森崎東
[音楽監修/メインテーマ作曲・編曲]
加古隆
[撮影]
小林達比古
[照明]
中須岳士
[美術]
原田哲男
[装飾]
中込秀志
[録音]
河合博幸
[調音]
岸田和美
[編集]
石島一秀
[ドッグトレーナー]
宮忠臣
[助監督]
山下智彦
[製作主任]
砥川元宏
[アシスタントプロデューサー]
小林勝絵
[音楽プロデューサー]
渡辺憲一
[音楽Coプロデューサー]
岸健二郎
[音楽・ピアノ演奏]
Shezoo
[サントラ盤]
ポニーキャニオン
[「白い犬とワルツを」製作委員会]
中村嘉男
安藤皇
石橋隆文
山田俊輔
秋元一孝
石原仁美
[宣伝]
稲本千香
相田光江
東條美子
月岡敏彦
[宣伝協力]
シネカノン
[製作協力]
創映新社
東京映像工房
松竹京都映画
[監督]
月野木隆
<<プロダクション>>
[製作]
「白い犬とワルツを」製作委員会
[配給]
東映