灯台守一家の十三年の悲喜こもごもを描くドラマ。
名作『喜びも悲しみも幾歳月』を木下恵介自らが現代的に解釈。
新 喜びも悲しみも幾歳月
1986
日本
130分
カラー
<<解説>>
『喜びも悲しみも幾歳月』より三十年余り経て、既に飛行機や新幹線などの高速の交通網が発展しつくし、転勤ということに前作の公開当時ほどの悲壮感はなくなってしまっていた。したがって、転勤の繰り返しというだけでは、劇的に成りようもなくなり、そのため本作では、子供の巣立ちや親の死といった出来事に重点が置かれ、ドラマが描かれていく。
また、木下監督の年代記で重視される“過ぎ去った想い出”というものに関しても、気軽にスナップ写真を撮ることが出来る時代では、考え方が変わってきているようだ。そのことは、主人公の父の遺言として、想い出を本物にするためにアルバムを焼却させようとする場面で示されている。このように、前作をなぞりながらも、ただ単にテーマを繰り返すのではなく、現代の物語として解釈し直されているところが挑戦的な作品だ。
さらに、続編的な作品と思わせながら、劇中で、「昔、『喜びも悲しみも幾歳月』という映画があった」と、いったふうに前作に言及される場面があるのは驚かされる。はたして意図されたものかどうかは分からないが、結果的に、前作『喜びも悲しみも幾歳月』という映画自体が登場人物の想い出の中に組み込まれてしまっているという、メビウスの輪的多層構造になっているところが面白い。
<<ストーリー>>
昭和四十八年。灯台守の藤田は妻や子供を連れ、宮島から石廊崎へ転勤にすることになった。父・邦夫も同行した引越しの途中、藤田は自殺志願の女子大・生由起子と出会った。
五十年。石廊崎の藤田のもとに由起子が訪ねてきて、「灯台の人と結婚をしたい」などと言い出した。灯台守の苦労を知る藤田の妻・朝子は、由起子を諭そうとした。だが、由起子は藤田の後輩で独身の長尾へ会いに行ってしまった。長尾は由起子との結婚を考えていなかったが、五十四年、灯台を襲った嵐で命の危機に遭ったのをきっかけに、結婚を決意した。
五十五年。藤田は大学生の娘・雅子を置いて八丈島へ転勤になった。八丈島を訪ねた藤田の後輩の飛行士・大門は、ちょうど藤田のところへ来ていた雅子と、宮島で会った以来の再会を果たした。その時、朝子は、雅子が転勤の多い大門と結婚しでもしないかと心配していた……。
<<キャスト>>
加藤剛
大原麗子
田中健
中井貴一
紺野美沙子
植木等
小坂一也
三崎千恵子
武内亨
篠山葉子
岡本早生
小笠原良智
原田樹世士
高山眞樹
清水良英
平田朝音
高木誠司
小森秀明
増田再起
光映子
小西邦夫
高橋研介
高橋有衛
高橋方希
時田成美
中林正智
坂田有規
坂田高浩
木内大介
河島弘
森江雅幸
堀内きくえ
三岡洋一
長岡日出雄
<<スタッフ>>
[製作]
大谷信義
引田惣弥
渡邊一夫
[プロデューサー]
脇田雅丈
[撮影]
岡崎宏三
[音楽]
木下忠司
[美術]
芳野尹孝
[編集]
杉原よ志
[録音]
島田満
[調音]
松本隆司
[照明]
佐久間丈彦
[助監督]
横堀幸司
[進行]
田澤連二
[プロダクション・コンサルタント]
長岡日出雄
[製作主任]
沼尾釣
[監督助手]
松原信吾
長尾啓司
藤嘉行
[撮影助手]
花田三史
栗田満
寺尾隆一
酒井良一
相馬健司
[録音助手]
今井康雄
近藤勲
林義明
[照明助手]
若林廣三
大野昇
高橋義男
青本隆司
野田正博
中川孝一
[編集助手]
後藤彦治
矢島孝
[美術助手]
渡邊仁
山富祥司
[製作進行助手]
斎藤朋彦
[芸文]
小松哲夫
[効果]
高橋正雄
中丸武雄
堀川修造
千田正芳
佐藤義人
鈴木孝
[オプチカル]
石川智弘
[装置]
横手輝雄
谷津勝利
田村武男
[装飾]
菊武敏行
鈴木章司
[衣裳]
松竹衣裳
佐々木昭雅
[美粧]
坂本登美
[特殊メーク]
三岡洋一
[スチール]
金田正
[宣伝プロデューサー]
丸山富之
大久保信雄
石田康雄
[現像]
imagica
[特殊撮影]
東宝映像
[協賛]
海上保安庁
[協力]
全日空
小西六
沢の鶴
東洋水産
アート引越センター
日栄電機産業
大分県
[主題歌]
「海辺の旅」
木下忠司
・作曲
川村栄二
・編曲
岩谷時子
・作詩
加藤登紀子
・歌
(ポリドール・レコード)
[主題歌]
「喜びも悲しみも幾歳月」
木下忠司
・作曲/作詩
若山彰
・歌
(コロムビア・レコード)
[脚本出版]
新潮文庫
[監督/脚本/原作]
木下恵介