<<ストーリー>>

秋の彼岸。墓参りに出掛けたさくら、竜造、つねが見たものは、父・平造の墓を跪いて拝んでいる寅次郎の姿だった。竜造たちは寅次郎の孝行に大感激。こうして気持ちよく“とらや”に迎えられた寅次郎は、身内との団欒を楽しみにしていたが、その夜はなぜか、社長の姿が見えなかった。「きっと自殺したに違いない」と早合点した寅次郎が、葬式の手筈を心配していたところへ、社長が酔っ払って帰ってきた。寅次郎は、人の気も知らないで飲み歩いていた社長に怒り、大喧嘩に。翌朝、寅次郎は書置きを残して旅に出てしまった。
信州を旅していた寅次郎は、橋の上で雲水に呼び止められ、「女難の相がてでおる」と教えられた。その直後、寅次郎は、ダムの上で身投げしそうになっていた若い女性・瞳を助け、話を聞いてやることに。すると、瞳は、夫に棄てられたことについて延々とまくしたのだった。ようやく瞳に解放された寅次郎が、バスの中で「これも女難のうちか」などと呟いていると、後ろの座席の老紳士が声をかけてきた。それはなんと偶然にも、博の父・ひょう一郎だった。
一人で木曽路を寺巡りしていたひょう一郎と、一緒に旅をすることになった寅次郎。もちろん、彼の興味があるのは寺などではなく、宿で一緒に酒を飲む美人の芸者のこと。そんな寅次郎を見かねたひょう一郎は、「美人も死ねば骸骨」と言い、「今昔物語」の一節を語って聞かせた。それは、美人の妻を失った男が、ある日、墓場で腐った屍となった妻の姿を見たのをきっかけに、仏門に入ったという話だった。その話に心を動かされた寅次郎は、翌朝、ひょう一郎に書置きを残すと、一人で柴又に帰っていった。
年齢的に仕事がきつくなった竜造は、“とらや”の手伝いをしてくれる店員が欲しいと思っていた。試しに店員の募集をしてみると、職安から店に似つかわしくないほど美人で品の良い女性がやってきた。荒川早苗という、訳のありそうなその女性は、さっそく明日の朝九時から店で働くことを約束して帰っていった。早苗と入れ替わりに帰ってきた寅次郎は、その夜、旅先でひょう一郎から聞いた「今昔物語」の一節を皆に披露した。「美人も死ねば骸骨」を悟った寅次郎は、明朝九時から修行の旅へ出ると告げると、二階の自室で休んだのだった。
ところが、翌朝、寝坊して九時過ぎまで寝ていた寅次郎が、手伝いにやってきた早苗と出くわしてしまったから大変。修行に出ると言った手前、駅へ向かったは良いものの、早苗のことが気になって仕方のない寅次郎。すると、突然、腹が痛いような気がしてきて、その場に倒れてしまうのだった。“とらや”に運び込まれた寅次郎を見て驚いた早苗は、慌てて119番。寅次郎はやってきた救急車で病院に運ばれることなってしまった。とんだ恥をかかされた寅次郎は、店に戻ってもまだ腹の虫が収まらなかった。が、救急車を呼んだのが早苗だと知ると、掌を返したようににこやかになるのだった。
夫と別居中の早苗には姉夫婦の家に居候して、“とらや”で働き始めたのも自立を前提にしたことだった。ある朝、早苗は荒川と正式に離婚するため、待ち合わせ場所の喫茶店に出掛けた。だが、店に現れたのは幼馴染みの従兄・添田だった。添田は早苗たちが離婚に踏み切ったことに複雑な思いでいたが、荒川から頼まれた離婚届を差し出した。あとはそこに早苗が署名をするだけだった……。



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