クリスマスにプレゼントされた奇妙で愛らしい生き物モグアイ。
しかし、3つの約束事を破った時、モグアイは恐ろしい怪物に変身。
増殖した怪物は町をパニックに陥れていく。

グレムリン

GREMLiNS

1984  アメリカ

106分  カラー



<<解説>>

恐ろしい怪物“グレムリン”が大暴れし、町が大パニックになるホラー! と見せかけて、登場するのはとってもファンシーな動物“モグアイ”。拍子抜けする意外性とユーモアでホラーをコメディに変えてしまった作品。監督は『ハウリング』を手がけたホラー・オタクのジョー・ダンテ。脚本家はアンブリンでデビューしたばかりのクリス・コロンバス。二人の才能が絶妙にブレンドされ、かわいさと残酷さが入り交じった小気味良い演出が他にはない快作となった。製作総指揮は御存知スピルバーグ。
そもそも、“グレムリン”とは飛行機の翼にいたずらをする小悪魔として昔から言い伝えられている想像上の存在である。映画版『トワイライトゾーン』の4話では、その伝説通りのグリムリンを観ることができるが、本作には、実はグレムリンは一匹たりとも登場していない。登場するのは“モグアイ”と呼ばれる生き物だけで、それが生き物の種類を指しているのか、個体につけられた名前なのかは不明であるが、とにかく、出生も生態も謎の生き物ということになっている。モグアイを飼うには3つの約束を守らなければならない。「日光に当てない」「水に濡らすさない」「真夜中過ぎにエサを与えない」 それらの約束を破ると、モグアイは恐ろしい怪物に変身してしまう。そして、町の皆は伝説になぞらえ、モグアイが変身した動物のことを指して“グレムリン”と呼ぶのである。
“グレムリン”は外部から一方的にやって来た脅威ではなく、人間の無責任が招いた災害として描かれているところに明確なメッセージがあり、それは、店主の老人の最後の台詞に集約されることになる。どんなものでも、その使い方を誤けばとんでもないことになるのであり、その教訓は、人間の奢りや過信への“グレムリン”からの報復という形で寓話的に伝えられている。
事物の二面性“陰と陽”を象徴する“モグアイ”と“グレムリン”の造型が秀逸。マペット丸出しのクリーチャーは今でこそ古くさく感じられるかもしれないが、ぬいぐるみ的あたたかみに親しみやすさがある。CG全盛の今はまず出てこない作品だ。しかし、実際のところ本作で最もインパクトがあるのは、主人公のガールフレンドが終盤で語る「彼女がクリスマスを嫌いな本当の理由」だったりする。好評につき、続編も作られた。



<<ストーリー>>

クリスマスが目前に迫ったある日、発明家のランド・ベルツァーはチャイナタウンの骨董品店で不思議な動物を見つけた。体が小さく、耳と眼が大きく、毛むくじゃらの今まで見たこともない動物。ランドはモグアイと呼ばれるその動物を息子のビリーのクリスマスプレゼントにすることを決めた。店の主人の老人ウィンはモグアイを売ることを拒否したが、店番の少年が裏口で売ってくれた。少年はモグアイを飼う上での三つの約束事をランドに告げた。まず、モグアイを明るいところに出さないこと。水をかけても飲ませてもいけないこと。そして、真夜中を過ぎにエサを与えないこと。モグアイを飼うには責任が伴うのだ。
クリスマスの準備で忙しい町。銀行で働きながら夢である漫画家を目指すビリーは、その夜、出張から帰ってきた父からモグアイをプレゼントされた。ビリーはモグアイを父の付けた“ギズモ”という名で呼び、ペットとして可愛がることに。翌朝、ビリーの友達の少年ピートがツリーを届けにペルツァー家にやってきた。ピートはギズモに興味をしんしんだったが、不注意でジュースをかけてしまった。すると、濡れたギズモの体から毛玉が飛び出した。毛玉はみるみる大きくなり、なんとモグアイに変わってしまった。
ギズモの体から新たに生まれたモグアイは五匹。頭にストライプがあるモグアイがリーダーのようだ。父は増殖したモグアイを見て、「爆発的に売れる」などと暢気なことを言ったが、新たに生まれたモグアイの性格は、おとなしいギズモと違って攻撃的だった。その夜、ビリーは愛犬バーニーの泣き声で目が覚めた。ビリーが外に見に行くと、バーニーは玄関前のイルミネーションにくくりつけていた。ビリーはバーニーを憎んでいる資産家ディーグル夫人の仕業だと考えるが、実はモグアイたちのいたずらだった。
翌日、ビリーは学校の理科の教師ロイ・ハンソンのもとへギズモを連れて行き、モグアイが水で増えるところを見せた。ハンソンは新たに生まれたモグアイを預かり、その生態を観察することに。その夜、ビリーはモグアイたちがエサをねだるので、時計で午前零時前にであることを確認してから、チキンを与えた。一方、零時過ぎまでモグアイを観察していたハンソンは、カゴの前にサンドイッチを置いたままにして帰った。カゴの中のモグアイは、ハンサンかいなくなるとサンドイッチを引き寄せて、それを食べてしまった。
クリスマスイブの朝、ビリーが目覚めると、部屋の床の上には粘液で覆われた塊が五つ。それは五匹のモグアイの変わり果てた姿のようであり、昨夜、チキンを食べなかったギズモは無事だった。ビリーが時計を見るとコードがちぎられていた。どうやら、零時を過ぎたのに気付かず、エサを与えてしまったようだ。一方、ハンソンの預かったモグアイにも同じ変化が起きていた。ハンソンは、モグアイが変態を行う過程でさなぎになったのだと考えた。
夕方、授業を終えたハンソンは、さなぎの中が空になっているのに気付いた。連絡を受けたビリーは実験室を訪ねるが、床にはハンソンが倒れていて、その体には注射器が突き立てられていた。モグアイが凶暴な生き物に変わってしまっことに気付いたビリーは、急いで家にいる母リンに電話で報せた。たが、ビリーの警告が間に合わず、リンは奇怪な緑色の怪物に囲まれてしまった……。



<<キャスト>>

[ビリー]
ザック・ギャリガン

[ケイト]
フィービー・ケイツ

[ランド・ベルツァー]
ホイト・アクストン

[ディーグル夫人]
ポリー・ホリデイ

[リン・ペルツァー]
フランシス・リー・マッケイン

[ジェラルド]
ジャッジ・ラインホールド

[ファターマン氏]
ディック・ミラー

[ロイ・ハンソン]
グリン・ターマン

[老人(ウィン氏)]
ケイ・ルーク

[フランク保安官]
スコット・ブラディ

[ピート]
コリー・フェルドマン

[ブレント保安官助手]
ジョナサン・バンクス

[コーベン氏]
エドワード・アンドリュース



<<スタッフ>>

[音楽]
ジェリー・ゴールドスミス

[編集]
ティナ・ハーシュ ,A.C.E.

[“グリムリン”創造]
クリス・ウェイラス

[美術]
ジェイムズ・H・スペンサー

[撮影]
ジョン・ホーラ

[製作総指揮]
スティーヴン・スピルバーグ
フランク・マーシャル
キャスリーン・ケネディ

[脚本]
クリス・コロンバス

[製作]
マイケル・フィネル

[監督]
ジョー・ダンテ

[キャスティング]
スーザン・アーノルド

[“ギズモ”および“グレムリン”デザイン/創造/操演]
クリス・ウェイラス社



<<プロダクション>>

[提供]
スティーヴン・スピルバーグ