朝鮮戦争前線の移動外科病院MASHでの愛と笑いに溢れた医療風景?
軍医たちのハチャメチャな行動を描いたブラック・コメディ。
M★A★S★H
マッシュ
(
マッシュ
)
MASH
1970
アメリカ
116分
カラー
<<解説>>
戦争をテーマにしているのに自殺についての歌から幕を開け、戦場を舞台にしているのに戦闘シーンがいっさいない。だだひたすらに、野戦病院で働く軍医たちのイタズラし放題の日常をスケッチしているだけ、という人を食ったような作品である。
ベトナム戦争が泥沼化していた折りに製作された本作は、当戦争への批判が込められているとされているが、その批判も一筋縄ではいかないようだ。ベトナムで若い命が大儀も無しに失われているというシリアスな状況下に、軽いノリで人命を救う軍医の姿をコミカルに示すという逆説。特に、「キリストの復活」をパロった歯科医の自殺幇助の場面は象徴的で、戦争行為の真逆ともいえる「自ら命を絶つ」行為は、本作の皮肉の中でも最も痛烈なものとなっている。
反戦メッセージを押し付けるだけの辛気臭い作品ではなく、まずはあまり深く考えずに腹を抱えて笑えるエンターテインメントに仕上がっているところが、本作の素晴らしいところ。また、テーマとしても、反戦というより、世界のどこにでも現れて、あまくでも我を押し通そうとするアメリカ軍人の傍若無人さへの自省、といったほうが近いようだ。本作はカンヌでパルム・ドールの栄誉に輝き、アルトマンの出世作となった。
<<ストーリー>>
朝鮮戦争前線のMASH(移動外科病院)4077に二人の軍医、ホークアイ・ピアス大尉とデューク・フォレスト大尉が新たに配属されてきた。盗んだ車に乗ってMASHにやってきた二人は、司令官のヘンリー・ブレイク大佐に挨拶するよりも先に、美人看護婦のデッシュ中尉に目をつけ、さっそくナンパ。神父の“デイゴ・レッド”、“ペインレス”こと歯科医のフォルドスキー大尉、麻酔医のジョン、“レイダー”ことオライリー伍長、雑用係のホー・ジョンら仲間たちと出会い、MASHでの生活が始まった。
ホークアイとデュークが入ることになったテントには、信心深いフランク・バーンズ少佐がいた。フランクのお祈りがうるさくてたまらないホークアイとデュークは、代わりの胸部切開の専門医を連れてくることをヘンリーに頼んだ。そうして、ホークアイとデュークのテントに新たにやってきた軍医は、腕は良いが女たらしの“トラッパー”ことジョン・マッキンタイアだった。それから、ホークアイたちは毎日、前線から送られてくる負傷者の治療にあたる一方で、酒にフットボール、そして、ディシュを口説くことに夢中なるのだった。
MASHに新しい婦長のオフーラハン少佐が着任した時のこと、フランクが患者を死なせ、その責任を針を間違えて持ってきたホークアイになすりつけた。怒ったトラッパーは、フランクを殴りつけたために、軍法会議行きを命じられることに。一方、オフーラハンは規律の乱れまくったMASHの有様に驚き、告発状を将軍の部隊325へ送ってしまった。ホークアイたちはフランクとオフラーハンへの仕返しとして、二人のセックスの様子をラジオで中継した。翌朝、ホークアイに昨夜のことをからかわれたフランク激昂。すぐに取り押さえらたフランクは、拘束服を着せられ、MASHから連れ出されて行った。そして、オフラーハンはその日から“ホット・リップス(熱い唇)”と呼ばれるようになった。
陸軍一の“持ち物”を持つペインレスが最近、どうも様子がおかしい。心配したホークアイが理由を尋ねると、ペインレスは、325から来た看護婦の前で“失敗”してしまったことで自信を無くし、自分が潜在的ホモであると思い込んでいるようだった。自殺することを宣言したペインレスは、ホークアイたちにその方法を相談。そうして、ホークアイたちはペインレスの自殺の手伝いをすることに……。
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