<<ストーリー>>
真実の発見を信条とする理想主義の主席検事補ラスティ・サビッチ。彼は大学に通い博士を目指す妻バーバラ、小学校へ通う息子ナットの三人で平穏に暮していた。検事局の局長レイモンド・ホーガンが地方検事選の最中だったある日、後輩の美人検事補キャロリン・ポルヒーマスが惨殺されるという事件が起きた。報告によれば、キャロリンは縛られてレイプされた後、鈍器で頭部を殴られた上に絞殺されたという。その日は殺人部の検事トミー・モルトが欠勤していた。また、レイモンドの対立候補は以前、局を解雇したニコ・デラ・ガーティアで、彼と通じているモルトには任せられず、事件の調査はラスティが担当することになった。だが、これまでレイモンドの信頼に応えてきたラスティも、今度の事件の調査に関しては消極的だった。それというのも、キャロリンはラスティの愛人で、それを知る者はバーバラ以外にいないのだっだ。
ラスティはいつも組んでいる調査員リップランザー刑事共に調査を開始することにした。まず、キャロリンのオフィスを調べていると、パソコンの中に“Bファイル”と呼ばれる公務員の収賄に関する事件の記録を発見した。性犯罪や児童虐待を専門に扱う彼女が普段、担当するはずのない案件である。だが、残っているのは記録だけで、なぜか調書は見当たらなかった。一方、リップランザーは犯行現場を調べ、不審な点に気付いた。部屋の窓が開け放たれ、犯人をビールでもてなした形跡が残っていたのだ。リップランザーは、ビールの注がれていたグラスを鑑識に回した。
キャロリンの葬儀の後、ラスティはBファイルのことをレイモンドに尋ねた。十日後に迫った選挙のことで苛立っていたレイモンドは、何も言わずに隠していたBファイルの調書をラスティに差し出すと、あわただしく会合へ出かけていった。その調書は、遡ること五年前、犯罪事件の容疑者レオンが検事補へ賄賂を渡し、訴訟を取り下げさせたことに関しての匿名の調査依頼だった。
引き続き調査をしていたリップランザーは、キャロリンの膣内から検出された精子が死滅、つまり、犯人が不妊症だったことをラスティに報せた。また、精子から血液型がA型であることが分かり、それはラスティの血液型と一致していた。リップランザーが取ってきたキャロリンの通話記録には、ラスティの自宅から掛けられたものも含まれていた。ラスティはキャロリンとの関係が局内に知られるのを恐れ、記録をを無視するようリップランザーに言った。
ラスティはキャロリンの元夫である大学講師ポルヒーマスを訪ねた。ポルヒーマスは、うそや演技の上手いキャロリンを憎んでいて、彼女を指して「死ねばいい思っていた」と洩らした。局に戻ったラスティは、検死官の“ペインレス”ことクマガイ医師を訪ね、キャロリンの遺体のことを訪ねた。クマガイは膣内から避妊具のペッサリーか抜き取られた形跡に気付いていて、レイプが偽装された可能性を指摘した。ラスティは犯行の状況から犯人が法に明るい人物で、司法関係者である可能性をレイモンドに告げた。その時、デラ・ガーティアの優勢の選挙に疲れきっていたレイモンドは、キャロリンと寝ていたことを打ち明けた。Bファイルを渡したのも、キャロリンに情が移ったからだったのだ。
レイモンドから判事への推薦をほのめかされたラスティはその夜、一人でキャロリンとのことを思い返していた――保護監察官上がりの新人検事補キャロリンと親密になったきっかけは、ある児童虐待事件を一緒に担当したことだった。やがて密会を繰り返すようになった二人。キャロリンはラスティに、レイモンドが再選しなかった後の後釜を期待していた。だが、ラスティに野心がないことを知ると、キャロリンは彼を避けるようになったのだった――
リップランザーは、レオンの保護監察官がキャロリンで、担当検事補がモルトだった事実を掴み、ラスティに報せた。だが、その翌日、ラスティはモルトによってキャロリン殺害の容疑で訴追されることとなった。例のグラスにラスティの指紋が付着していたというのだ。ラスティは自分の弁護を、法廷でのライバルであった弁護士サンディ・スターンに依頼した。大陪審に召還されたラスティはサンディの指示でいっさいに証言を拒んだだめ、公判に持ち込まれることになった。
デラ・ガーディアを中心する検察側の論拠は、ラスティが別れ話を持ち出したキャロリンに逆上して殺害し、その後に偽造工作した、ということである。それを崩すためには、弁護側は動機の弱さを攻めなければならない。ラスティはレイモンドに証言を依頼することにした。だが、レイモンドは、ラスティがキャロリンとの関係を隠し、捜査も本気でやっていなかったことに怒っていた。レイモンドの発言により、同席していたサンディにキャロリンとの関係が知られた。焦ったラスティは、収賄事件に関係したモルトの陰謀を唱え、サンディに無実を訴えてしまうのだった……。
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