北海道から九州まで全国を転々としたある灯台守一家の二十余年を描く。
喜びも悲しみも幾歳月
1957
日本
160分
カラー
<<解説>>
実在した灯台守の夫婦をモデルに木下監督が書き上げたシナリオを映像化した大作。関東から北海道、九州から佐渡といったように、度重なる転勤のため全国各地を転々とした灯台守とその妻と子供たちの姿が描かれる。
縁の下の力持ちたる灯台守の知られざる波乱の人生。海の道を照らすという重要な役目を担いっていながら、時代の流れに翻弄される皮肉。語られる出来事は取りとめがないように見えるが、それらの出来事が時間と共実を結んで行き、終盤にかけて怒涛の展開を見せる。「灯台下暗し」という言葉を連想させるが、最後に自らの自分たちの人生を照らすかのようなラストが感動的を呼ぶ。
戦前から、映画が公開された昭和三十二年までの二十五年間の悲喜こもごもを、スナップのように切り取って見せていく手法が面白い。まるで思い出の写真の並ぶアルバムを眺めているかようだ。日本の各地で実際にロケが行なわれたという、それぞれの地方色の出た情景も合わせ、叙情に訴える作品となっている。特に公開当時には、映画のなかに流れる時間と観客の生きた時間とのシンクロが効果を上げたようで、劇中で何度も繰り返される印象的な主題歌と共にヒットした。
本作を踏まえ、80年代には、木下監督が再び同じ題材に挑んだ(リメイクにあらず)『新・喜びも悲しみも幾歳月』が作られている。
<<ストーリー>>
昭和七年。若き燈台員・有沢が妻を持った。有沢は、燈台に一緒に住み込むことになった妻・きよ子に「この仕事は厳しい」と告げた。神奈県の観音崎に赴任してきてから一ヵ月後、きよ子のもと学生時代の友人・藤井たつ子が現れた。きよ子は、彼女の幸せを妬んでいるたつ子に責めたてられるが、二人のやり取りを聞いていた有沢の先輩に助けられた。
翌年、有沢夫婦は東京から北海道の石狩燈台へ転勤になった。北海道では長女の雪野と長男の光太郎が生まれるが、今度は長崎の女島燈台に転勤になった。長崎では、きよ子が燈台員・野津の恋を取り持とうとするが、失敗してしまうのだった。
昭和十六年。一家は佐渡の弾崎燈台に転勤になり、有沢は次長になった。佐渡にいる間に戦争が始まった。燈台員の一人が「戦役逃れ」と罵られると、有沢は部下の仕返しをしようと、相手のもとへ乗り込んだ。だが、有沢は酒をしこたま飲まされて帰ってくるのだった。
静岡の御前崎燈台に転勤になった頃には、戦争は激化していて、燈台も爆撃の目標にされた。有沢の家族も厳しい生活を強いられることに……。
<<キャスト>>
[有沢きよ子]
高峰秀子
[有沢四郎]
佐田啓二
[野津]
田村高広
[光太郎]
中村賀津雄
[藤井たつ子]
桂木洋子
[金牧]
三井弘次
[糸子]
井川邦子
[名取夫人]
夏川靜江
[雪野]
有沢正子
(新人)
[真砂子]
伊藤弘子
(新人)
[進吾]
仲谷昇
(文学座)
[名取]
北龍二
[鈴木]
三木隆
[金牧の妻]
櫻むつ子
[石狩灯台木村台長]
明石潮
[郵便局長]
坂本武
[水出]
田中晋二
[観音崎手塚台長]
小林十九二
[佐渡大場台長]
夏川大二郎
[二川無電士]
磯野秋雄
[手塚台長夫人]
野辺かほる
[馭者]
竹田法一
[田中先生]
高木信雄
[牧師]
山根七郎治
[山本]
井上正彦
[木島の父]
南進一郎
[山本の妻]
水木涼子
[進吾の少年時代]
大野良平
[木島]
浅川真
[在郷軍人]
新島勉
[看護婦]
御堂蘭子
[小使]
島康人
[石狩台長夫人]
村松加代子
[雪野の少女時代]
葉山洋子
(若草)
小川里美
小川明美
高橋佳子
[光太郎の少年時代]
堀内尚
斉藤哲夫
五月女殊久
[名取武]
渡辺和夫
(若草)
<<スタッフ>>
[原作/脚本/監督]
木下惠介
[撮影]
楠田浩之
[美術]
伊藤憙朔
梅田千代夫
[音樂]
木下忠司
[録音]
大野久男
[照明]
豊島良三
[編集]
杉原よ志
[製作渉外]
小倉武志
[色彩技術]
成島東一郎
[特殊撮影]
川上景司
[装置]
小林孝正
[装飾]
山崎鉄治
[衣裳]
吉田幸七
[撮影渉外]
手代木功
[監督助手]
大槻義一
[撮影助手]
赤松隆司
荒川諒一
[録音助手]
平松時夫
[照明助手]
飯島博
[録音技術]
堀川修造
[進行]
浜野敬
[現像]
東洋現像所
[後援]
海上保安庁
[主題歌A]
「喜びも悲しみも幾歳月」
木下忠司
・作詞/作曲
若山彰
・唄
(コロムビア・レコード)
[主題歌B]
「灯を抱く人たち」
仙宅千惠子
・作詞
木下忠司
・作曲
関真紀子
・唄
(コロムビア・レコード)
<<プロダクション>>
[製作]
松竹