マシンへの落雷により1885年へ飛ばされてしまったドク。
マーティは1955年のドクに助けを求め、開拓時代に暮すドクを助けに向かう。
シリーズ完結編。
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3
BACK TO THE FUTURE PART III
1990
アメリカ
118分
カラー
<<解説>>
『PART2』と同時に作られた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの完結編。前作が、現在、過去、未来をめまぐるしく駆け巡った物語だったのに対し、今回は、アメリカ開拓時代に舞台を絞っている。開拓時代と言うと、主人公たちがまだ存在していない大過去である。そのため、全二作で描かれたほどのタイム・パラドックスは起らず、タイム・トラベルものとしての必然も薄い。しかし、アメリカ人のルーツを描いた本作は、主人公のルーツを描いた第一作に立ち返るかのようで、シリーズの最後を締めくくるという意味では落ち着くべきところへ落ち着いたといった好内容となっている。
物語は、第二作のラスト・シーン、つまりは第一作のクライマックス・シーンから幕を開ける。無事にマーティを未来に帰した1955年のドクの前に、再び現れるマーティ。マーティはドク本人からの手紙により、彼が1885年の開拓時代に暮しいてることを知ったのだ。しかし、開拓時代のドクは手紙を描いた一週間後に殺されてしまうことが本人の墓標や古い文献から判明。マーティは1955年のドクの力を借りて、開拓時代のドクの救出に向かう。ところが、マシンに再び問題が発生してしまうのだった。
第一作では1.21ジゴ(ギガ)ワットの電力をいかにして作り出すかというのが課題だったが、今回は140キロのスピードをいかして出すかというのが課題となっている。いくらスピードが出るからといって、マシンを崖から突き落とすわけにもいかない。マシンを無事に未来に帰さなければならないのだ。それならば、開拓時代でいちばん早い乗り物を利用するしかない。かくして、入念に練られる未来への帰還計画。ところが、マーティがおたずね者と決闘をしなければならなくなるという不測の事態が持ちあがってしまう。いろいろな出来事が同時的に起こり、例のごとく時間ギリギリに。この辺りの展開が鮮やかで、第一作を越える壮絶なクライマックスへとつながっていく。
マーティとドクが無事に未来に帰れるかどうかという、ハラハラドキドキのサスペンスがメインの物語。しかし、いちばんの見どころは、なんといっても、サイドストーリーとして描かれるドクの恋であり、本作の主役は彼だといっていいかもしれない。「私がひと目ぼれするわけにない」と断言した翌日にはひと目ぼれ。シリーズでその変人ぶりを披露してきたドクが、人並み以上に情熱的な恋に落ちていく様子が、実に微笑ましく描かれる。
タイム・トラベルの動機は『PART1』では実験で、『PART2』ではマーティの家庭崩壊の阻止だった。今回の動機がドクの命を救うためであるということからも窺えるとおり、これまで以上にマーティとドクの関係が印象に残る。互いに励まし合いつつつ、未来に帰ろうと奮闘する様が感動的に描かれ、二人の友情、そして、貼りめぐらされた伏線を見事に纏め上げた粋なラスト・シーンを迎える。
時計台を中心に物語が展開したり、タネンが三度(みたび)現れたりなど、モチーフの繰り返しやサービス精神に溢れた演出も楽しいが、本作に限っては、往年の西部劇へのオマージュを捧げることに力が注がれているようだ。デロリアンが荒野をインディアンに追いかけながら疾走する、などといったSFならではのカットももちろん、丁寧なディテールで再現された、馬での引き回し、一騎打ちの決闘、列車強盗などの西部劇の名シーンも嬉しい。また、ハリー・ケリー・ジュニアやビル・マッキニーといった、西部劇の全盛期に活躍してきた俳優が登場する場面も見逃せない。
ちなみに、本邦未発表だが、三部作終了後の1991年からシリーズの後日談がテレビ・アニメ化されている。
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