古びた屋敷にゴースト退治ためにやってきた心霊学者の娘と、
心やさしい少年のゴースト、キャスパーとの交流を描くファンダー。

キャスパー

CASPER

1995  アメリカ

100分  カラー



<<解説>>

『ジュラシック・パーク』の大ヒット以来、積極的にCGを呼び物にする映画が作られるようになったが、CGの表現はリアリティ追及ばかりに向かっていて、本作のようなキャラクターを動かすという発想は少ななかった。当時、CGに対する信仰はあったとしても、「所詮はCG」という意識が製作側にも観客側があったことは確かである。そして、その意識から、コンピュータを使って人の血の通ったようなものは作れないという思い込みがあったのかもしれない。
実写とアニメの合成という手法は、映画の黎明期である1920年代からすでに用いられていた古典的な手法である。そして、原作である「お化けのキャスパー」も、1945年に作られたシリーズである。それらの古い素材を『ジュラシックパーク』の6倍という量の最新CGで再現。ここで問題となるのが、デジタル・キャラクターがいかに良く出来ていたとしても、あくまで漫画的でるキャラと実写の俳優との間に生まれてしまうギャップである。合成アニメ映画の傑作『ロジャー・ラビット』では、実写との間のギャッブを逆手にとっていたが、本作では、ストーリーの中で必然的に人間からゴースト、あるいはその逆への変身を見せることで、それを違和感なく解消している。
映像の力でだけで見せる作品ではなく、ストーリーも映像に負けないくらい想像力豊かな内容で、そもそもCGを呼び物にした映画だということを忘れてしまうほどだ。キャスパーの人間への憧れ、おじのゴーストたちの人間への憎しみ、そして、キャットの父の亡き妻への思い。それら、死んだ者と生きる者の双方の感情が様々に描かれた上で、ラストにはホロリとさせるいい話にまとまっているのである。また、俳優に関しては、いかにもごうつく張りなキャシー・モリアーティ、いかにもお人よしなビル・プルマン(二人とも途中からアニメ化)などの漫画的な芝居が目をひくが、「アダムス・ファミリー」シリーズでゴシック&ロリータだったクリスティーナ・リッチが、本作では一変して紅顔の少女を演じているのも面白い。
本作は同年に完成した世界初のフルCG長編アニメ『トイ・ストーリー』と共に、デジタル・キャラクターの表現の可能性にインパクトを与え、CGを低く見ていた者に反省を促すことになった。そして、コンピュータはあくまでカメラや絵の具と同じツールなのであり、それによって作られる作品は表現する者のセンスや技術に依存するという認識に至ったのである。映画が脚本、映像などほとんどの要素がこう着状態になってしまっている現在、CGアニメは、実写との合成、および、フルCGという両方向でもっとも期待がよせられる映画の手法であり、手段であと言えるのかもしれない。



<<ストーリー>>

欲張りな女キャリガンが、亡くなった主人から古びた屋敷を相続した。その邸には屋敷が眠ると知り、キャリガンは弁護士のジェブスと共に邸に向かうが、そこには12才の少年のゴースト、キャスパーが、意地の悪い三人のおじのゴースト、ファッツォ、ストレッチ、スティンキーたちと暮していたのだった。
宝を探したいキャリガンは、ゴーストを退治にするため、心霊学者のジェームズを邸に呼んだ。ジェームズと一緒に屋敷にやってきたのは、彼と亡き妻アメリアと間の一人娘キャット。キャスパーは同い年のキャットと友達になりたいと思い、彼女の前に姿を現した。一方、ジェームズはファッツォたちと会っていたが、彼らから、反対にキャリガンを屋敷から追い出すことを頼まれること。ファッツォたちは、キャリガンを追い出す見返りとして、ジェームズにアメリアと会わせることを約束した。
キャスパーとキャットはすっかり仲良くなった。キャットは、生前のとこを覚えていないというキャスパーのために、屋根裏にあった彼の部屋を見つけ出した。それをきっかけに、キャスパーは生前の頃のことを思い出していった。それは、キャスパーの父は発明家で、死者を蘇生させる装置を作っていたということ。そして、蘇生装置は地下で発見されるが、その一部始終をキャリガンに見られていた……。



<<キャスト>>

[キャット・ハーヴェイ]
クリスティーナ・リッチ

[ジェームズ・ハーヴェイ]
ビル・プルマン

[キャリガン]
キャシー・モリアーティ

[ディブス]
エリック・アイドル

[アメリア・ハーヴェイ]
エイミー・ブレネマン

[キャスパー]
デヴォン・サワ



<<スタッフ>>

[監督]
ブラッド・シルバーリング

[製作]
コリン・ウィルソン

[製作総指揮]
スティーヴン・スピルバーグ
ジェラルド・R・モーレン
ジェフリー・A・モンゴメリー

[共同製作]
ジェフ・フランクリン
スティーヴ・ウォーターマン

[原作]
ジョー・オライオロ 「お化けのキャスパー」

[脚本]
シェリー・ストナー
ディーナ・オリヴァー

[撮影]
ディーン・カンディ ,A.S.C.

[音楽]
ジェイムズ・ホーナー

[美術]
レスリー・ディリー

[編集]
マイケル・カーン

[衣装デザイン]
ロザンナ・ノートン

[デジタル・キャラクター監修]
デニス・ミュレン

[視覚効果監修]
スコット・ファーラー

[CG監修]
ジョー・レッテリ

[特殊効果]
インダストリアル・ライト・アンド・マジック

[キャスティング]
ナンシー・ネイヤー



<<プロダクション>>

[提供]
ユニヴァーサル映画

[製作]
アンブリン・エンターテインメント
ハーヴェイ・エンターテインメント・カンパニー