<<ストーリー>>
大急ぎで“とらや”に向けて自転車を走らせるさくら。印刷所で働く夫の博が機械に腕を巻き込まれて大怪我をしたという報せがあったのだ。叔母のつねは心配のあまり大騒ぎし、帝釈天でお百度参りをはじめてしまったが、病院で診てもらったところ、幸いにも博の腕の怪我は軽く済んだのだった。
その夜の“とらや”の夕食時、寅次郎がひょっこりと帰ってきた。腕に包帯を巻く博を見た寅次郎は昼間の事故を知ると、叔父夫婦に何かあった時のことを心配し、「実は自分も将来のことを考えている」と言った。寅次郎の気遣いに感動する竜造たち。とろこが、寅次郎の考えていることといったら、自分の葬式をいかに盛り上げるかということだけ。呆れた竜造たちにそっぽを向かれた寅次郎は気分を悪くし、まだ帰ってきたばかりだというのに旅に出ることを宣言。“とらや”を出行く際、寅次郎は自分の葬式のために貯めていた郵便貯金をさくらに渡した。通帳の名義は“諏訪さくら”だった。
くんち祭りで賑わう九州・唐津。寅次郎は呼子港のヌード劇場の裏手の船着き場で、赤ん坊を連れた一人のむさくるしい男の姿を見た。男と話していた踊り子の話では、この劇場で踊っていた女に騙され、赤ん坊を押し付けられたのだという。その晩、寅次郎は宿で偶然にも昼間の男と部屋が隣同士になった。生まれて間もなく母親に捨てられた寅次郎は、赤ん坊のことが他人事と思えなくなり、佐藤幸夫という名の男を自分の部屋に招き、酒をおごった。ところが、翌朝、寅次郎の好意に甘えた幸夫は、「この子をよろしくお願いします」という書置きを残して姿を消してしまったのだった。
博が通う病院の看護婦は、いつも明るくニコニコした感じの良い女性だった。「義兄さんが病気になったりしても、あの病院は避けたほうがほうがいい」などと博が笑いながら話をしているところへ、噂の寅次郎が帰ってきた。ところが、“とらや”の店先に現れた寅次郎の姿に一堂、目を丸くする。寅次郎が背中に赤ん坊を背負っていたからだ。寅次郎は赤ん坊を下ろすと、詳しい事情も説明せずに二階の自分の部屋で休んでしまった。そのため、“とらや”の面々は寅次郎が誰かに子供を産ませたのではと勘違い。その噂があっという間に参道界隈に広まってしまい、“とらや”に御前様が見舞いにやってくる騒ぎに。ようやく、起き出してきた寅次郎が皆の誤解を解くが、その時、赤ん坊が熱を出していることにさくらが気付いた。赤ん坊を病院に連れて行くことになったが、博は看護婦のことを思い出し、寅次郎の付き添いを頑なに拒んだのだった。
翌日、赤ん坊の世話を人に押し付けた寅次郎がぐうたらとしている所へ、昨夜、赤ん坊を診た看護婦の木谷京子が訪ねてきた。京子にのぼせ上がった寅次郎は、博が自分を病院に行かせなかった理由を知った。その時から寅次郎は、赤ん坊をダシにして京子と親しくなろうと企むのだった。そんなある日、寅次郎が赤ん坊の健康を心配する振りをして、一人で病院に出かけている間、“とらや”に幸夫と踊り子が訪ねてきた……。
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