父の死のショックで口の利けなくなった少女には歌の才能があった。
ヒット・ミュージカルの映画化。

リトル・ヴォイス

Little Voice

1998  イギリス

99分  カラー



<<解説>>

歌マネの才能を生かしたジェーン・ホロックスの舞台を、同じ主演で映画化した作品。圧巻のステージ・シーンではホロックスが吹き替えなしで歌を披露している。物語は、生きるのが下手な母と娘の確執を懐かしのスタンダードナンバーで包んだ、といったもの。少し痛々しく暗い内容だが、下町情緒溢れる町並の雰囲気が良く、御伽噺のような素朴な味のある作品に仕上がっている。
この作品の魅力は第一に、御伽噺的なキャラクターの面白さにあり、ダウナー過ぎるLVはもちろん、彼女を取り巻く母親、マネージなどのアッパーな登場人物たちが生き生きと描かれている。少女の出世物語と思わせながら、LVの呼応するように、取り巻きたちも変化し、そして、クライマックスでは……。小さな町から一歩も出ないが、LVの歌を中心にしたスピーディーで劇的なストーリーが本作の第二の魅力である。



<<ストーリー>>

もともと無口だった少女ローラ・ホフは、父親が死んでからはいっさい口を利かなくなり、部屋にこもって、父がコレクションしていたレコードを聴いてばかりいた。母親マリーは、無口で声が小さい娘をからかい、彼女のことを“リトル・ヴォイス”を略して“LV”と呼んでいた。
ある日、マリーの家へ、電話工事の見習のビリーが作業のために訪ねてきた。ビリーは伝書バトの世話が趣味で、女の子には興味がなかいという、今時珍しい青年。その日も行方不明になったハトのドゥエインのことが気がかりだったが、工事中、部屋から顔を出さないLVのことが妙に気になった。そして、翌日、ビリーは説明書を届けるフリをして、マリーの留守番をしていたLVと顔を合わせた。
マリーは父の生前から続けている派手な男遊びが、中年になった今もやめられずにいた。そんな彼女が今、入れ込んでいるのは、ミスター・ブーのクラブに出入りしている芸能界のマネージャー、レイ・セイ。マリーがレイを家に連れ込んで、二人で朝まで楽しもうとしていたその夜、レコードかけた途端にヒューズが飛んでしまった。だが、その時、レイは停電で真っ暗になった家の二階から聞こえてくる歌声に耳が離せなくなった。LVは父の形見のレコードを聞くうちに、その歌手とそっくりの歌声で歌えるようになっていたのだ。LVが歌うのはマリーにとってはいつものことだったが、それはプロにしてみれば素晴らしい才能なのである。レイは長年捜し求めていたスターをついに見つけたことに興奮し、翌朝、LVにステージで歌うことをすすめめた。レイはブーにもLVの歌を聴かせ、マリーと契約書を交わした。
ブーの店にLVのステージが用意されることになった。しかし、問題なのはLVの内気すぎる性格。実は、LVは目の前に父の幻影が見えないと、うまく歌うことが出来ないのだ。そして、案の定、初ステージは、LVがほとんど歌うことが出来ずに大失敗に終わった。レイとの結婚やスターの名声ばかりにとらわれていたマリーはLVを罵倒。だが、一方のレイは初ステージの失敗にめげていなかった。彼は、部屋に閉じこもってしまったLVを優しく説得。レイの優しい言葉に心を開いたLVは、もう一度だけステージに立つことを決心した。
レイは私財を投げ打った上に借金までして、バンドと豪華なセットを用意した。再びブーの店のステージに立ったLVは、客席の中に父の姿を見つけると、前回とはうって変わった美声を披露。スタンダードナンバーに彩られた圧巻のステージは大盛況のうちに幕を閉じた。だが、この成功に有頂天になったレイは、すっかりLVの育ての親を気取り、数多くのスターを世に出したスカウト、バニー・モリスに紹介することを勝手に決めてしまった。一度だけという約束を破られたLVはショックを受け、再び部屋に閉じこもってしまった……。



<<キャスト>>

[マリー・ホフ]
ブレンダ・ブレシン

[レイ・セイ]
マイケル・ケイン

[ミスター・ブー]
ジム・ブロードベント

[ビリー]
ユアン・マクレガー

[LV]
ジェーン・ホロックス

[サーディ]
アネット・バッドランド

[ジョージ]
フィリップ・ジャクソン



<<スタッフ>>

[衣装デザイン]
リンディ・ヘミング

[オリジナル音楽/編曲]
ジョン・アルトマン

[音楽監修]
ボブ・ラスト

[編集]
マイケル・エリス ,A.C.E.

[美術]
ドン・テイラー

[撮影]
アンディ・コリンズ

[共同製作]
ローリー・ボーグ

[企画]
ボブ・ワインスタイン
ハーヴェイ・ワインスタイン
ポール・ウェブスター

[製作総指揮]
スティーヴン・ウーリー
ニック・パウエル

[原作戯曲]
ジム・カートライト

[脚本]
マーク・ハーマン

[製作]
エリザベス・カールセン

[監督]
マーク・ハーマン



<<プロダクション>>

[提供]
ミラマックス・フィルムズ
スカラ

[製作]
スカラ