同棲五年目でしっくりこなくなってしまったカップルの
ラスベガスを舞台にした幻想的なロマンス。

ワン・フロム・ザ・ハート

One from the heart

1982  アメリカ

100分  カラー



<<解説>>

『ゴッドファーザー』と『地獄の黙示緑』が偉大過ぎただけに、作品の質にムラがあるように思われているコッポラ。本作は前二作の対極にあるような力の抜けまくった作品であったため、興行的には失敗に終り、製作会社がつぶれた上にコッポラ自身も破産してしまった。しかし、やがて寓話やジュブナイルに傾倒するコッポラの過渡期だと思えば、興味深い作品であり、なにより、「こんなのも撮ってたんだ」と言う意味でも楽しめる作品だ。
本作でまず目を引くのは、幻想的に描かれたラスベガスの町並みである。これは、全編、屋内セットで撮影されている。中盤の二つのデートの場面は特に美しく、浮気の持つ魅惑的な部分を映像として表現しているかのようだ。この不思議な映像に加え、登場人物を必要最小限にまで切り詰めたり、ミュージカル風に歌を物語の要所に挿入する演出などからも、舞台的とも言える人工的な造形美を追及していることが窺える。迫真性を追及した『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示緑』などのコッポラの代表作とは、まったくの逆方向を目指しているところが面白い。
ストーリーにしてもコッポラの代表作とは正反対な下世話なもので、一言で説明すれば、駄目カップルの痴話ゲンカである。このような下世話な物語が幻想的な舞台で繰り広げられるという奇天烈さは、見どころの一つと言えるかもしれない。また、痴話ゲンカを“愛”とかなんとか崇高なもので誤魔化すことはせず、痴話ゲンカの滑稽さをミもフタもなしに描いてしまっているところは潔い。決してロマンティックとは言えないものの、場面によっては心に響くものがある。



<<ストーリー>>

ラスベガスで同棲生活を送るフラニーとハンクのカップル。独立記念日の明日は二人が出会った記念日なのに、同棲五年目のふたりの間はケンカばかりでうまくいっていない。その夜も二人はささいなことでケンカしてしまったた。必死にとめようとするハンクを振り、家を出たフラニーは、勤め先の旅行代理店の同僚マギーの部屋に転がり込んだ。マギーはハンクと付き合っているフラニーのことがうらやましく思っていた。だが、そんなマギーの気持ちを知っても、フラニーの怒りは収まらないのだった。
翌朝、ショーウィンドウの飾り付けをしていたフラニーは、ピアニストのレイに声をかけられた。まんざらでもなかったフラニーだったが、その場はレイと別れた。一方、ハンクは、自動車解体工場を共同経営するモーと一緒に街をぶらついていた。ハンクは、街でサーカスの宣伝パフォーマンスをしていたライラという踊り子に一目惚れ。奇跡的にライラと今夜、デートする約束をとりつけることに成功した。
フラニーがレストランで食事をしていると、ウェイターとしてテーブルにやってきた男が偶然にもレイだった。彼は自分のショー合間にこうしてウェイターとして働いているのだという。すっかり、フラニーと話し込んでしまったレイは、それを見咎めた支配人にクビを言い渡されてしまった。そのまま、フラニーとレイはデートに繰り出していった。一方、ハンクはライラと待ち合わせをしていたが、約束の時間になっても相手が現れなかった。からかわれたと思い、諦めかけたその時、少し遅れてライラがやってきた。ハンクはライラを郊外の工場に連れて行き、二人きりの楽しいひと時を過ごした……。



<<キャスト>>

[ハンク]
フレデリック・フォレスト

[フラニー]
テリー・ガー

[レイ]
ラウル・ジュリア

[ライラ]
ナスターシャ・キンスキー

[マギー]
レイニー・カザン

[モー]
ハリー・ディーン・スタントン

[レストランのオーナー]
アレン・ゴーウィッツ (アレン・ガーフィールド)

[航空チケット屋]
ジェフ・ハムリン

[エレベーターのカップル]
イタリア・コッポラ
カーマイン・コッポラ

[代役]
エドワード・ブラックオフ
ジェイムズ・ディーン
レベッカ・デモーネイ
ジェイヴァー・グラジェダ
シンシア・カニア
モニカ・スカッティーニ



<<スタッフ>>

[撮影]
ヴィットリオ・ストラーロ
ロナルド・V・ガルシア (ロナルド・ヴィクトル・ガルシア)

[美術]
ディーン・タヴラリス

[主題歌/音楽]
トム・ウェイツ

[歌]
クリスタル・ゲイル
トム・ウェイツ

[衣装デザイン]
ルース・モーリー

[編集]
アン・ゴアソード
ルディ・フェール
ランディ・ロバーツ

[特殊視覚効果]
ロバート・スワース

[製作総指揮]
バーナード・ガースタン

[共同製作]
アーミアン・バーンスタイン

[製作]
グレイ・フレデリクソン
フレッド・ルース

[脚本]
アーミアン・バーンスタイン
フランシス・コッポラ (フランシス・フォード・コッポラ)

[原案]
アーミアン・バーンスタイン

[監督]
フランシス・コッポラ (フランシス・フォード・コッポラ)



<<プロダクション>>

[製作]
ゾエトロープ・スタジオ