目的不明の任務に挑む元諜報部員たちの友情や裏切りを描くサスペンス・アクション。
RONIN
RONIN
1999
イギリス/アメリカ
122分
カラー
<<解説>>
“浪人”とは、簡単に言えば、リストラなど理由で失業した侍のことである。本作は、現代の浪人である元諜報員たちが、任務遂行のため雇い主やマフィアらと凌ぎを削る姿を描く。デ・ニーロとレノという米仏二大スターの共演ということで話題にされたとおり、その看板に偽りは無いものの、やはり格の違いのためか、デ・ニーロがメインの物語となっている。
決して饒舌ではないこのデ・ニーロとレノが、普段以上に寡黙に徹し、言葉なくして通じ合う仁義の世界を表現。『ダイ・ハード』からのアクション大作の流れ出で観るならば、過剰な演出が無く、ユーモアにいたっては皆無というこの作品は、ストイック過ぎるように感じられかもしれないが、古き良き暗黒物に近い雰囲気を現代に蘇らせているところを楽しみたい。このストイシズムは、フランス映画の暗黒物の巨匠、ジャン=ピエール・メルヴィルを彷彿とされるものがある。「ローニン」という題名もメルヴィルの代表作『サムライ』へのアンサーのように思え、その題名の鍵を握る人物の役名がジャン=ピエールになっていることなどを考えるに、やはりメルヴィルを意識しているのかもしれない。
骨太の男のドラマにハイライトを添えるのは、じっくりと長めに撮られた二つのカーチェイスである。まず、一つ目のチェイスは、ニースの旧市街の狭い路地で繰り広げられる。建物の壁スレスレに車が走り抜けるスピード感には凄まじいものがある。二つ目は、渋滞で車がいっぱいの高速道路でのチェイスだが、前者とはまた別の見せ方をしているところが面白い。普通のカーチェイスでは、追う車と追われる車だけを撮り、周囲の他の車は傍観者といった扱いだったが、それに対して本作のカーチェイスは、周囲の車が障害物となり、それらを次々と巻き込んでいく様をしっかり描いているところリアルだ。
ちなみに、終盤で登場するスケートの女王を演じのは、“銀盤の女王”と呼ばれた金メダリスト、カタリーナ・ヴィット。
<<ストーリー>>
パリのある店に続々と集まってきた男たち。彼らはそれぞれの理由で各国の諜報機関を辞めた腕利きの元諜報機たちである。その顔ぶれは、元CIAのアメリカ人サム、案内役のフランス人バンサン、元KGBのドイツ人グレゴール、武器に詳しいスペンス、ドライバーのラリーの五人。彼らは、“車椅子の男”の代理を名乗る女ディエドラの指揮の下、数万ドルの報酬である男からケースを奪い取るという任務を受けることになった。ケースの中味、それを手に入れる理由、そして、相手の素性はすべて明かされず、ただ場所と時間だけが指定された。作戦の計画を詰めていたとき、サムは、チームでいちばんの若手スペンスの実力不足を鋭く見抜くと、彼を任務からはずさせた。
入念な下調べの後、作戦はニースで実行された。サムたちは白昼の堂々、標的の乗った車を旧市街で追跡。追い詰められた標的から、それを待ち受けていたグレゴールがケースを奪い取った。だが、サムがグレゴールから受け取ったケースは、爆弾が仕掛けられた偽物だった。グレゴールが裏切ったのだ。残されたサムたち四人は、本物のケースを持って行方を暗ましたグレゴールを追った。
グレゴールは、ケースを欲しがっているロシア・マフィアと取引するため、コロシアムに現れた。サムたちはコロシアムでグレゴールを捕まえようとするが、ロシア・マフィアの手下ミキの邪魔が入り、逃げられてしまった。その時、サムはミキに追い詰められたバンサンを助けるようとし、脇腹を撃たれてしまった。一方、グレゴールは市街を逃走中に、ディアドラのボスのシーマスに捕まっていた。負傷したサムとバンサンはラリーの待つ車に急ぐが、車はラリーの死体を放り出すと、そのまま走り去ってしまった。サムたちは運転をしていたディアドラの裏切りと考えた。サムたは側にあった車を拝借し、追っ手から逃げた。バンサンは命で恩人であるサムを信頼すると、彼を情報屋の老人ジャン=ピエールの邸に連れて行き、怪我の治療を施した。
回復したサムとバンサンは郵便局で張り込み、グレゴールが郵送したケースを受け取りにきたシーマスたちを発見した。サムは、車で待機していたディアドラに銃口を向けた……。
<<キャスト>>
[サム]
ロバート・デ・ニーロ
[バンサン]
ジャン・レノ
[ディアドラ]
ナターシャ・マケルホーン
[グレゴー]
ステラン・スカルスガルド
[スペンス]
ショーン・ビーン
[ラリー]
スキップ・サダス
[ジャン=ピエール]
ミシェル・ロンダール
[シーマス]
ジョナサン・プライス
[ミキ]
フェオドール・アトキン
[ナターシャ・キリロヴァ]
カタリーナ・ヴィット
[セルジ]
ベルナルド・ブロック
[小ぎれいな紳士]
ヤン・トリスカ
[新聞を持つ男]
ロン・パーキンス
[取引所の男]
アミドウ・ベン・メサウド
[旅行ガイド]
ジェラール・モーレヴェール
<<スタッフ>>
[監督]
ジョン・フランケンハイマー
[製作]
フランク・マンキューソ・ジュニア
[製作総指揮]
ホール・ケルメルン
[原案]
J・D・ザイク
[脚本]
J・D・ザイク
リチャード・ウェイズ
(デイヴィッド・マメット)
[撮影]
ロベール・フレース
[音楽]
エリア・クミラル
[美術]
マイケル・Z・ハナン
[編集]
トニー・ギブス
[衣装デザイン]
メイ・ルース
[キャスティング]
アマンダ・マッキー・ジョンソン
キャシー・サンドリッチ
マーゴット・カペリア