内戦中のカンボジア。
「もし、地雷を踏んだらサヨウナラだ」と言い残し、
アンコールワットで行方不明になった戦場カメラマン・一ノ瀬泰造の物語。

地雷を踏んだらサヨウナラ

ONE STEP ON A MINE, I'TS ALL OVER
地雷を踏んだらサヨウナラ

1999  日本

111分  カラー



<<解説>>

26歳という若さで他界した戦場カメラマン・一ノ瀬泰造。彼の残した日記や書簡で構成された原作の映画化。アンコールワットを撮影することにとりつかれ、その目的を果たすためなら、ゲリラが跋扈し銃弾が飛び交う戦場にもモノともしないで突き進んでいく一人の男の姿を描く。一言でいえば“無謀すぎた”男の物語。しかし、彼の飽くなき執念と行動力、そして、「こんな日本人がいたんだ」という事実に驚かされる作品だ。
戦場カメラマンという題材は、戦争に関する都合の良いメッセージを乗せやすそうだが、本作は明確なメッセージを伝えようとは避け、劇的な展開や表現よりも、主人公や戦場のありのままを描くことに務めているように見える。ノンフィクションへの拘りには、六ヶ国語を操る主人公に扮した浅野忠信も好演で応えている。彼の持つ「芝居の上手い下手はともかく、演じているその人物にしか見えなくなるという不思議な説得力」が生かされ、芝居がからない自然な演技からは、主人公の気さくな人柄がよく現れている。また、戦闘シーンにもリアリティを追及したようで、臨場感のある手持ちカメラや、邦画とは思えない火薬の量はなかなかの迫力。本作が第一作となる製作会社「チーム・オクヤマ」の野心が窺えるようだ。
この映画がきっかけで、2003年には一ノ瀬泰造の姿を追ったドキュメンタリー映画『TAIZO』が公開された。



<<ストーリー>>

内戦の激化する1972年のカンボジア。銃弾飛び交う戦場に、ひたすらシャッターを押しつづける一人のフリー・カメラマン、一ノ瀬泰造の姿があった。彼が命がけで撮った写真は、通信社によってネガごと安く買い叩かれることもしばしば。だが、クメール・ルージュが本拠地している聖地アンコールワットの写真は特別で、数万の値が付くという。
どうしてもアンコールワットの写真を撮りたい泰造は、無謀にも地雷が埋まる報道禁止区域に入っテいった。だが、アンコールワットにたどり着く前にゲリラに捕まってしまった。幸いにも解放された泰造は、フィルムを取り上げられたあげく、日本へ強制送還されることに。泰造は、現地で居候させてもらっていた教師ロックルーに「必ず戻る」と誓い、日本へ帰っていった。
一年後、戦火のベトナムにやってきた泰造は、いつか戦場で出会った同業者のティムと再会した。二人は一緒に写真を撮っていたが、撮影中にティムが流れ弾に当たって死んでしまった。その時、泰造が撮影した写真は、新聞の一面に掲載された。だが、撮影者として泰造の名前はなかった。そのことは、彼のアンコールワットへの拘りをいっそう強したのだった……。



<<キャスト>>

浅野忠信
川津祐介
羽田美智子
三輝みきこ
山田咲耶
名取幸政
平尾仁
矢島健一
市毛良枝
ロバート・スレイター
トゥン・ダラチャーヤ
ペン・ファン
チャオ・チャンナリー
ボウ・ソンヒョン
ピニョ・ジャネソンブーン
オ・パス・ジャネソンブーン
放映プロジェクト
稲川素子事務所



<<スタッフ>>

[原作]
一ノ瀬泰造

[献呈]
一ノ瀬清二
一ノ瀬信子
一ノ瀬紀子
一ノ瀬淑乃
一ノ瀬久美子

[監督]
五十嵐匠

[脚本]
丸内敏治
五十嵐匠

[エグゼクティブ・プロデューサー]
中村雅哉

[プロデューサー]
奥山和由

[アソシエイト・プロデューサー]
大山幸英
桜井勉

[音楽]
安川午朗

[撮影監督]
岡雅一

[照明]
山川英明

[録音]
武進

[編集]
川島章正

[スクリプター]
牧野千恵子

[美術]
柴田博英

[音響効果]
渡部健一

[助監督]
田中徹

[衣裳]
福田明
目代博昭

[メーキャップ]
豊川京子

[プロダクション・アシスタント]
中林千賀子
森井輝



<<プロダクション>>

[製作]
チーム・オクヤマ

[共同製作]
グループ現代
武雄テレビ (TVC)

[配給]
シネカノン