沼津で出会った知的障害の少女が心配になり、“とらや”に居候させる寅次郎。
少女も寅次郎を気に入り、互いに結婚の誓いをたてる。
シリーズ第7作。
男はつらいよ
奮闘篇
1971
日本
92分
カラー
<<解説>>
山田監督は、古くは『馬鹿が戦車でやって来る』などの喜劇でも社会的弱者を好んで扱い、『家族』では社会派のテーマを前面に出してみせた。『家族』の一年後に作られた本作は、監督の社会派の面が色濃く出た作品であり、これまでのシリーズのなかで一番の感動作となった。その後の「男はつらいよ」でも当時の社会問題を扱った作品は少なくないが、ここまで社会派を強調した作品はあまりない。「わざわざ『男はつらいよ』でこのようなテーマを取り扱わなくてよいだろう」という判断がなされたのかどうかは定かでないが、これ以降、「男はつらいよ」と他の社会派の作品は分けて作られるようになった。
本作が異色といわれる理由はいくつもあるが、まず挙げられるのは、寅次郎のプロポーズである。寅次郎がマドンナに結婚を申し込むのも、それが受け入れられるのも本作がはじめて。シリーズはじまって以来の相思相愛となり、寅次郎とマドンナの恋も大変に微笑ましいものである。しかし、“とらや”の面々は二人の恋愛を手放しに喜べない。観客でさえも、二人の恋が不幸な形で終わることを予感するのである。ここに本作を異色作とするもう一つの理由がある。それは、いつもならマドンナに恋人や婚約者が現れて寅次郎の恋が破れるはずが、本作では恋の障害が“現実的な問題”にあるということである。「なぜ?」という理不尽な思いを抱えたまま茫然とする寅次郎の姿は、観客に「なぜ二人の結婚が許されないのか」という命題を突きつける。
このように、多くの点で「男はつらいよ」としては異色の作品となったが、山田監督の真価を見せた一作といえるだろう。
<<ストーリー>>
旅先の沼津のラーメン屋で、寅次郎は客の少女ににっこりほほえみかけられた。店の主人によれば、彼女は頭が少し弱いらしい。店を出た寅次郎は、駅前の交番で巡査に職質をされている先ほどの少女を見た。少女の名は花子という。花子を心配した寅次郎は、彼女の故郷の青森のまでの旅費としてなけなしの金を渡した。そして、道が分からなくなったら柴又の“とらや”を訪ねるよう花子に言い含め、彼女を送り出したのだった。
翌日、“とらや”の叔父夫妻は、寅次郎の名を呼ぶ少女が突然、店に現れたことに驚いた。さらに数日後、下手な変装をした寅次郎が柴又に帰ってきた。寅次郎は叔父夫婦に事情を説明すると、柴又で花子の仕事を探し始めた。ところが、どの職場でもそこで働く男が信用できず、安心して花子を預けられない。それならば自分で面倒を見ようと思いついた寅次郎は、花子と結婚の約束を交わしたのだった……。
<<キャスト>>
[車寅次郎]
渥美清
[さくら]
倍賞千恵子
[花子]
榊原るみ
[冬子]
光本幸子
(特別出演)
[菊]
ミヤコ蝶々
[福士先生]
田中邦衛
[巡査]
犬塚弘
[ラーメン屋]
柳家小さん
[博]
前田吟
[おばちゃん]
三崎千恵子
[梅太郎]
太宰久雄
[源公]
佐藤蛾次郎
福原秀雄
小野泰次郎
城戸卓
江藤孝
長谷川英敏
山村桂二
高畑喜三
北竜介
[おじちゃん]
森川信
[御前さま]
笠智衆
<<スタッフ>>
[製作]
斎藤次郎
[企画]
高島幸夫
小林俊一
[脚本]
山田洋次
朝間義隆
[撮影]
高羽哲夫
[美術]
佐藤公信
[音楽]
山本直純
[録音]
中村寛
[調音]
小尾幸魚
[照明]
内田喜夫
[編集]
石井巖
[監督助手]
今関健一
[装置]
小野里良
[装飾]
町田武
[進行]
長島勇治
[衣裳]
東京衣裳
[現像]
東京現像所
[製作主任]
池田義徳
[主題歌]
「男はつらいよ」
星野哲郎
・作詞
山本直純
・作曲
渥美清
・唄
(クラウンレコード)
[協力]
柴又神明会
[原作/監督]
山田洋次
<<プロダクション>>
[製作]
松竹