ナイル川に浮かぶ豪華客船で令嬢が殺害される。
私立探偵ポアロが捜査に乗り出すが、乗客全員に殺害の動機があった。
オールスターキャストで描くアガサ・クリスティのミステリー第2弾。

ナイル殺人事件

DEATH ON THE NILE

1978  イギリス

140分  カラー



<<解説>>

『オリエント急行殺人事件』に続き、アガサ・クリスティの原作をオールスターキャストで映像化した大作。
過度なショック・シーンや感情に訴えるシーンを必要最小限に抑え、物語を語るための効率や機能性を最優先した演出は、ギラーミンが前作のルメットから受け継いだもの。探偵ポアロが得意とする捜査の手法は、まず関係者全員を疑い、彼らの関係性から消去法によって容疑者を絞り込んでいくというものであるが、その確実かつ効率的な手法が、ギラーミンの硬派な演出と絶妙にマッチしている。まさに、作品を捜査するような丁寧な撮り方が、本格ミステリーの堂々たる風格をかもし出しているのである。出色は、ポアロが推理の過程で、容疑者一人ひとりについて犯行の可能性を検証するというくだり。ポアロが想像力を駆使してシミュレートした令嬢殺害の全パターンを逐一、映像として見せていくところが面白い。
ブラボーン=グッドウィン製作のシリーズはこの後、『クリスタル殺人事件』、『地中海殺人事件』と続く。また、シリーズではないが、同じコンセプトで『ドーバー海峡殺人事件』、『死海殺人事件』が作られている。



<<ストーリー>>

莫大な遺産を相続したばかりの富豪の娘リネットは、親友ジャッキー(ジャクリーン)の恋人で失業中の貧乏青年サイモンと、突然の結婚を発表した。
リネットとサイモンはエジプトへハネムーンに向かった。ところが、ナイル川に浮かぶ豪華客船カルナーク号には、なぜかジャッキーの姿があった。それにジャッキーだけでなく、リネットに関係する様々な人物が船に同乗していた。看護婦バウアーズとその母バン・スカイラー、小説家オッターボーンとその娘ロザリー、医師ベスナー、弁護士ペニントン、学生ファーガスン、小間使いルイーズ。そして、乗客の中には私立探偵のポアロもいた。
ジャッキーが酔った勢いでサイモンを銃で撃ち、怪我をさせてしまう事故が起こった。それと時を同じくして、リネットが何者かに射殺された。死体の傍らには「J」の文字がダイイングメッセージとして残されていた。さっそく、ポアロは犯人探しを開始するが、乗客の皆に動機があり、それぞれにリネットを殺すチャンスがあった。バン・スカイラーはリネットの真珠狙っていたし、バウアーズは母をかばおうとしていた。ベスナーはある薬に問題があることをリネットに知られ焦っていた。ジャッキーの叔父であるペニントンは財産を自分のものにしようと企んでいた。そして、社会主義のファーガスンは金持ちが遺産相続することを毛嫌いしてた。
乗客の中でルイーズただ一人が犯人を目撃していたが、彼女は犯人を強請ろうとしたために、翌日、殺されてしまった。また、ルイーズの殺害の現場を目撃していたオッターボーンは、ポアロに犯人の名を次げようとするが、その瞬間、狙撃されて死亡してしまった……。



<<キャスト>>

[エルキュール・ポアロ]
ピーター・ユスティノフ

[ルイーズ・ブールゲット]
ジェーン・バーキン

[リネット・リッジウェイ]
ロイス・チャイルズ

[マリー・バン・スカイラー]
ベティ・デイヴィス

[ジャクリーン・デ・ベレフォート]
ミア・ファロー

[ジェームズ・ファーガスン]
ジョン・フィンチ

[ロザリー・オッターボーン]
オリヴィア・ハッセー

[アンドリュー・ペニントン]
ジョージ・ケネディ

[サロメ・オッターボーン]
アンジェラ・ランズベリー

[サイモン・ドイル]
サイモン・マッコーキンデール

[ジョニー・レイス大佐]
デイヴィッド・ニーヴン

[ミス・バウアーズ]
マギー・スミス

[ルートヴィヒ・ベスナー医師]
ジャック・ウォーデン

[バーンステーブル]
ハリー・アンドリュース

[カルナークのマネージャー]
I・S・ジョハール

[スタンデイル・ロックフォード]
サム・ワナメイカー



<<スタッフ>>

[監督]
ジョン・ギラーミン

[製作]
ジョン・ブラボーン
リチャード・グッドウィン

[原作]
アガサ・クリスティ 「ナイルに死す」

[脚本]
アンソニー・シェイファー

[撮影]
ジャック・カーディフ

[音楽]
ニーノ・ロータ

[美術]
ピーター・マートン
ブライアン・オークランド=スノウ
テリー・オークランド=スノウ

[編集]
マルコム・クック

[衣装デザイン]
アンソニー・パウエル