相棒の殺害容疑をかけられた私立探偵が六人の美女を相手に難事件に挑む。
『マルタの鷹』、『カサブランカ』をパロディにしたコメディ。
名探偵再登場
Neil Simon's
The Cheap Detective
1978
アメリカ
92分
カラー
<<解説>>
ミステリー・コメディ『名探偵登場』の続編を思わせる題名だが、前作とは内容的なつながりはまったくない。監督のムーア、製作のスターク、脚本のサイモン、主演のフォークが同じで、いうなれば姉妹作といった趣きの作品である。
前作に引き続き、フォークはお得意のハンフリー・ボガードのモノマネで登場。ボガード風の私立探偵に扮したフォークは、前作のようなオフザケは抑え、オリジナルへ敬意を払うかのように、ハードボイルドな雰囲気を保った芝居を見せる。ギャグは全体的に洗練されているようだが、元タネのボガードのセリフをもじった数々のこじゃれたセリフは、普通にかっこよかったりする。
『名探偵登場』は、何組も登場した名探偵たちにそれぞれ見せ場を設けたため、一発ギャグ大会の様相を呈していたが、主人公をフォーク一人にしぼった本作は、パロディとしては正攻法に挑んでいる。ネタとなった作品は、ボガード主演の『マルタの鷹』と『カサブランカ』。この二作をごちゃ混ぜにしたようなストーリーがお楽しみだ。
前作に引き続き、脚本は名ライターのサイモンが手がけている。前作より多くなった登場人物と複雑にからみあう人間関係は、本格ハードボイルドさながら。ただでさえ複雑なストーリーに加え、パロディやギャグが満遍なく散りばめられている。しかし、それでも大きな破綻もなく大団円に持ち込む脚本はパロディ映画のお手本といえよう。
前作は探偵が大勢いるという状況がひとつのギャグになっていたが、同じように本作ではヒロインが大勢いるというのがギャグなっている。ヒロインに扮するのは、ストッカード・チャニング、歌手のアン=マーグレット、サイモンの夫人マーシャ・メイソン他総勢六名で、彼女たちと主人公との愉快な掛け合いも見どころになっている。
<<ストーリー>>
第二次大戦中のサンフランシスコ。私立探偵フロイド・マークルが居合わせた四人の男女と共に射殺された。犯人は早業の持ち主のようで、どの死体も動作の途中で硬直したまま息絶えていた。
マークルの友人で仕事の相棒でもあった私立探偵ルー・ペキンポーは、未亡人となったジョージアの電話で目を覚ました。彼女が警察に証言したことにより、ルーに殺害の疑いがかけられているらしい。すでに保険金を受け取っていたジョージアは、「一緒に逃げよう」とルーに誘いをかけた。だが、ルーは友人の妻と一緒に逃げるこなど出来なかった。
“私立探偵センター”の自分のオフィスに出勤したルーを“デニス・マンダレー”と名乗る女性が待ち受けていた。様々な偽名を持つ彼女の正体はモンテネグロ夫人。彼女は行方不明の夫の捜索をルーに依頼すると、そそくさと去っていった。
オフィスにかかってきた謎の人物からの電話で、強い香水の人物と会うよう指示されたルーは、さっそく、友人マルセルの経営するニックスのクラブに向かった。待ち合わせの人物を探していたルーは、店の歌手ベティ・ド・ブープと意気投合。その時、フランス軍人のポール・デュシャールが、妻のマルレーンを伴なって店に現れた。マルレーンはルーの元恋人。二人の再会は久しぶりだったが、ルーはかつて自分を裏切ったマルレーンを憎み、彼女を冷たくあしらってしまった。
ルーが見つけた強い香水の人物は、その名をペペ・ダマスカスといった。ペペはある美術品の捜索をルーに依頼。その頃、ホールでは、ポールがなにやら怪しい動きを見せ始めていた。実は、彼がこの店にやってきた目的は、重要書類を受け取ることだった。首尾よく書類を受け取ったポール。だが、トイレに入ったところをナチスのシュリッセル大佐とその部下たちに襲われ、書類を奪われてしまった。そんな大騒動が店の中で繰り広げられているのをよそに、ルーはベティと連れて店を抜け出した。
翌朝、ルーの部屋にポールが訪ねてきて、盗まれた書類の奪還を依頼してきた。だが、ルーは恋敵であるポールを、報酬の支払が出来そうにないことを理由に追い返してしたのだった。
ルーのもとに再び謎の電話がかかってきた。その電話の指示で、ルーはダマスカスのボスである巨漢の富豪ジャスパー・ブラバーと会った。ブラバーは、依頼の美術品についての詳細を語った。美術品の名は“十二個のたまご大のダイヤモンド”で、アジアを支配したアルバニアの漁師が戦利品として持ち帰ったものだという。だが、ダイヤはルーマニア人ウラジミール・テセラチェモビッツに盗まれてしまった。現在、テセラチェモビッツは名前のアルファベットを並べ替えた偽名でサンフランシスコのどこかに暮らしているという。
オフィスに戻ったルーは、名前の暗号の件は秘書のベスに任せ、モンテネグロの妹だという女性と会った。だが、その女性が変装したモンテネグロ本人であることが分かると、即座に彼女をオフィスから追い出した。「彼女もブラバーの仲間に違い」とルーは考えた。
帰宅したルーをマルレーンが待ち受けていた。「やり直したい」と哀願するマルレーンに心動かされるルー。ところが、彼が酒を取りにキッチンに入ると、そこには船で発ったはずのベティが隠れていた。慌ててその場を取りつくリ、風呂場に行くと、そこにはイギリスに行ったはずのジョージアが。ルーは三人の女性の間であわせふためくことに……。
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