殺人が予告された大富豪の晩餐会に世界中から五組の名探偵が集められた。
豪華キャストで描くミステリー・コメディ。
名探偵登場
NEIL SIMON'S
MURDER BY DEATH
1976
アメリカ
94分
カラー
<<解説>>
名探偵たちを集めて対決させちゃおう、という発想のコメディ。名探偵がいっぱい登場するが、そのどれもがミステリー小説等でおなじみのキャラクターのパロディ。エルキュール・ポアロ(ミロ・ペリエ)、チャーリー・チャン(シドニー・ワン)、ニックとノラのチャールズ夫妻(ディックとドーラのチャールズトン夫婦)、サム・スペード(サム・ダイヤモンド)、ミス・マープル(ジェシカ・マーブルズ)といった具合。内容的には一発ネタではあるが、名探偵の夢の共演(?)はミステリー・ファンは必見だ。
名探偵のパロディが登場という豪華なのか豪華じゃないかのよく分からない映画だが、それらを演じる役者陣は本物のスターぞろい。セラーズ、ニーヴン、フォーク、クロムウェル、そして、ギネスといった目の飛び出そうなほどのメンツで、フォークが全編を押し通したハンフリー・ボガードのモノマネや、セラーズのインチキ中国人など、ひとクセもふたクセのある役者たちのオーバーアクト合戦が見ものとなっている。
登場人物一人ひとりのキャラが立ちまくっているにもかかわらず、全員をストーリーの中で隈なく活かしきったのは、さすがニール・サイモン。とはいうものの、ぎっちり詰め込まれたギャグの数々は、サイモンとは思えないほど、ウィットのかけらもない泥臭いもの。強烈なのは、ギネス扮する執事の盲目をネタにしたギリギリなギャグ。執事と聾唖の女中のまったくかみ合わないやりとりなんがしつこく繰り返されるところなど、はやり、セラーズ主演のバカ映画の殿堂「ピンク・パンサー」シリーズにも似た印象を受ける。しかし、これだけのメンツを集めておいて、超くだらないことをやり通したところは天晴れだ。
前半は馬鹿ばかしいギャグの応酬に始終するが、中盤からサイモンの本領が発揮されたのか、本格ミステリー風の展開になってくるから侮れない。次々と明らかになる新事実など、コメディだから強引ではあるものの、どんでん返しに次ぐどんでん返しは圧倒される。パロディにかこつけた痛烈なミステリー批評かと思いきや…というオチも見事だ。
<<ストーリー>>
霧の立ち込める森の中、怪奇趣味の豪邸に暮らす大富豪ライオネル・トウェインは、“晩餐と殺人”への招待状を有名な五人の探偵たちに送った。ミロ・ペリエ、サム・ダイヤモンド、ジェシカ・マーブルズ、シドニー・ワン、そして、ディック・チャールストン。腐った橋と、玄関前での石像の落下という手荒い歓迎を受け、はじめに邸に到着したのは、日本人の養子ウィリーを従えたシドニー・ワン警部である。二人は、盲目の執事ベンソンマムに迎え入れられた。次に、ディックとドーラのチャールズトン夫妻、ミロ・ペリエ警部と彼の運転手兼秘書のマルセル、サム・ダイアモンドと恋人のテスが、続々と到着した。
探偵がこれだけ集まれば、推理合戦が始まるのも時間の問題。お互いに相手のことを言い当てていたが、そのうちにサムが皆が裏の仕事でどれだけ儲けているかを暴露し始めた。その時、ジェシカ・マーブルズが、年老いて看護の必要なナースを伴い、到着した。一方、その頃、食堂ではベンソンマムが派遣されてきた女中イエッタとトンチンカンなやりとりを繰り返していた。ベンソンマムは、イエッタが耳も口もきけないことに気付いていなかったのだ。
午後九時、食堂にドレスアップした探偵たちが全員集まった。だが、給仕をするベンソンマムの取り分けたスープ皿には何も入っていなかった。ベンソンマムの言いつけは、イエッタにまったく伝わっておらず、食事も作られていなかったのだ。ペリエが怒り出し席を立とうとしたその時、突然、食堂の照明が消えた。稲光の中、姿を現したのは、この邸の主人トウェインだった。ペリエを座らせたトウェインは、電気仕掛けで邸のすべての扉に鍵をかけた。そして、今夜十二時きっかりに、ここで殺人事件が起こることを予告。死体には十五箇所の刺し傷があり、犯人はこの中にいる誰かだ、とトウェインは言った。また、トウェインは、真犯人を当てた者に、百万ドルとこの事件の出版権および映画化権を進呈すると宣言した。
トウェインが食堂から姿を消した後、ワンは事件の目撃者を作るため、食堂から一歩も出ないように皆に向けて言った。マーブルズの提案により、探偵たちは手をつないで輪になることにした。しばらくすると、突然、イエッタが食堂に飛び込んできて、声え無く叫びをあげた。筆談によって伝えられたことによれば、調理室でベンソンマムが死んでいるという。ワンとペリエとマーブルズの三人が代表して、死体を見に行くことになった。三人は、テーブルに突っ伏せていたベンソンマムの脈も鼓動もないことを確認。ところが、三人が食堂に戻ると、そこはもぬけの殻。調理室の死体も消え、なぜか洋服だけが残されていた。
トウェインは姿は見えないが、邸のどこかに潜んでいるらしい。彼の指示に指示に従い、ワンたちが食堂の扉を開けなおすと、そこには元通り探偵たちの姿があった。だが、彼らはここから一歩も外に出ていないと主張した。しばらくして、今度は銃声が鳴り響いた。今度は、サムとディックが代表して、銃声のした調理室に行くことに。調理室のテーブルの上には裸の男が突っ伏せていて、外傷はなかった。ディックは、敵が関係ない出来事で我々の注意をそらそうとしていると推測。ところが、サムが食堂に戻ると、先ほどと同じように探偵たちの姿は消えていた。サムは訳がわからなくなり、手洗いに行っていたディックを呼んで戻ると、食堂には先ほどと変らず探偵たちがいた。どうやら、邸には食堂が二つあり、電気仕掛けでどうにかしているようだった。
約束の十二時がやってきた。ところがその時、その場にいた誰もが予想もつかなかった事態が起こり……。
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