「アーサー王伝説」より、放浪の騎士ランスロットと王妃との不義のエピソードを描く。

トゥルーナイト

FIRST KNIGHT

1995  アメリカ

134分  カラー



<<解説>>

「円卓の騎士」で有名なブリテン島の王アーサーの伝説。物語はケルト人の間で神話として伝えられていたものをもとにしていて、アーサーも架空人物(モデルがいたという説もある)ではあるが、古典文学として欧米を中心に親しまれている。それを裏付けるように、幾度となく映画化されているが、今回は、放浪の騎士ランスロットと王妃との不義に王が苦悩するというエピソードを映像化。監督はコメディ集団“ZAZ”の良心ジェリー・ザッカーが担当している。
日本では「円卓の騎士」は知られていても、「アーサー王伝説」の物語の全貌を知る人は少ない。一方、欧米では聖書に次いで、半ば一般常識となっているようだ。本作は、欧米の観客にとって冗長になるとこを避けるためか、アーサー王についての説明はいっさい省かれている。しかし、現代風にアレンジされたストーリーは、あまりアーサー王を意識する必要もないので、王であるアーサーが“円卓の騎士”と呼ばれる直属の部下たちを組織している、ということさえわかっていれば、内容を理解するには十分である。
物語の主人公はアーサー王と騎士ランスロットであるが、この二人を王妃を間に挟んで対等に描くことで、原作よりロマンス色の強い物語に生まれ変わっている。要は「もしも騎士たちがロマンスをしたら」という発想の作品で、ここでは、アーサー王はあくまでモチーフといった扱いである。一応、騎士物語であるから、戦闘シーンも満載で、武器が剣とボーガンのみの本格的なチャンバラはなかなかの迫力がある。しかし、やはり骨子はロマンス映画であるので、騎士伝説の映画としては、無数に存在する別の「アーサー王伝説」の映画に委ねたいところだ。
アーサーを演じるのはショーン・コネリー。まさにはまり役で、期待通りのいぶし銀の芝居を見せてくれる。対するランスロットを演じるのはリチャード・キア。すでに中年の域にある彼が青年騎士のイメージでランスロットを演じるのは、ミスキャストを案じてしまが、さすがはスター、文句無しにかっこいい騎士を演じきり、先の心配や違和感をすぐに吹き飛ばした。ヒロインの王妃は『サブリナ』に主演したジュリア・オーモンドが演じているが、今回は、一歩ひいた芝居を見せる。ギアの起用やロマンス色の強いストーリーから、女性客を意識した作りが窺えるが、オーモンドの視点がまさに女性の観客の代表といったところだろう。



<<ストーリー>>

キャメロットを治めるアーサー王は長い戦争ののち、平和と正義の国造りに励み、やがて結婚を望むようになった。一方、アーサーの栄光を妬むね騎士マラガントが反乱を起こし、再び国は二分していた。そんな時代に、ランスロットという放浪の剣士が現れた。彼は時流の流れと関係なく、剣の腕だけを頼りに世を渡る孤独な男だった。
マラガントはキャメロットの隣国レオネスを侵略するため、何かと理由をつけては村を焼き払っていた。勇敢な姫グイネビアはマラガントに屈しないよう民を勇気付けていた。ある日、グイネビアは婚約者であるアーサーに会いに行く途中、マラガントの手下たちの襲撃を受けた。敵に追い込まれたグイネビアは、偶然通りかかったランスロットの鮮やかな剣さばきに助けられた。ランスロットは、美しいグイネビアに一目ぼれ。グイネビアも心をかき乱されるが、突然キスをしてきたランスロットを、「無礼」と言って突っぱねたのだった。ランスロットは「夏至の朝までにキスを求めるだろう」と予言し、その場から去っていった。
旅を続けたランスロットは、馬を追っていたアーサーの馬番ピーターと知り合った。それがきっかけで、彼は王の婚約祝いに招待されることに。だが、祝いの席上にアーサー未来の妃として現れたグイネビアの姿に驚いた。アーサーのゲームに飛び入りで挑戦し、見事にそれを攻略したランスロットは、グイネビアと再び対面を果たした。アーサーにも気に入られ、円卓の騎士に加わるようすすめられたランスロットだったが、旅に出ることを理由に誘いを断ったのだった。
その日、アーサーは円卓の騎士の会議にあえてマラガントを招いた。だが、理想主義のアーサーと権力主義のマラガントは激しく対立し、互いに戦争も辞さない考えだった。そして、その夜、グイネビアは小間使いのジェイコブに外に呼び出された。彼女を待ち明けていたマラガントの手下たちだった。グイネビアがマラガントの手下たちに連れ去られるのを偶然、目撃したランスロット。彼は手下たちの後を追った。
翌日、ランスロットはグイネビアの落とした布を手がかりに、マラガントのアジトの洞窟を発見した。すぐにマラガントに捕まったランスロットだったが、一瞬の隙を突いて、グイネビアとともに洞窟を脱出した。一緒に逃げる最中に、二人の気持ちはさらに接近した。グイネビアへ心を開いたランスロットは、幼い頃に家族を皆殺しにされた悲痛な過去を打ち明けたのだった。
アーサーはグイネビアを取り戻してきたランスロットを評価し、再び円卓の騎士に入るよう頼んだ。ランスロットはこのままグイネビアの側にいたかったため、キャメロットに留まることを決心した。ランスロットの騎士の儀式の後、傷だらけのジェイコブが城に現れた。彼は息絶え絶えに、レオネスがマラガントの侵略を受けたことを王に知らせた……。



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