数年ぶりに街に帰ってきた青年が
かつて恋人だった歌手を救うためにストリートギャングと対決する。
青春アクション。

ストリート・オブ・ファイヤー

STREETS OF FIRE

1984  アメリカ

93分  カラー



<<解説>>

公開されたのは80年代の半ばであったが、ロックンロールやストリートギャングといった道具立てから60年代の香りが漂ってくる作品。今さら『アメリカン・グラフィティ』? とも思ってしまうが、本作と言い、『フットルース』と言い、当時は60年代リパイバルが流行ったようである。カルチャーの二十年周期説が真実だとすると、それは、人がカルチャーを発信できる側に回ることができるのが、青春時代から数えておよそ二十年後であるということによって、すこし強引ではあるが説明がつきそうだ。本作の監督ヒルと『アメリカン…』の監督ルーカスは奇しくも同年代である。それなのに『アメリカン…』が十年も先駆けて公開されることになったのは、それは単にルーカスが早熟過ぎただけなのだろう。
ヒル監督は以前にも『ウォリアーズ』でもストリート・ギャングを題材にしているが、今回は青春ものとしての色合いが強いため、『アメリカン…』のルーカスをならってか、自分自身がいちばん感受性の強い青春時代に吸収したものを反映させたようである。ヒル監督の現した青春のイメージは、ポップスとビデオの時代であった80年代当時としては、おそらく、古臭くてリアリティにかけていたかもしれない。しかし、物語のはじめに“ロックンロールの寓話(Rock & Roll Fable / Another Time, Another Place)”と宣言してしまっているため、それらの違和感もファンタジーとして、80年代の若者に好意的に受け入れられたようだ。その結果、世代を超えて親しまれる作品となり、現在でもファンを多く持っている。
ヒロインがギャングにさらわれて、それを一匹狼の主人公が救い出しに行くという、中世の騎士物語のようなストーリー。そして、60年代を彷彿とさせる世界観と台詞。ひとたびファンタジーとして割り切ってしまえば、シビれるほどにかっこよく感じられるが、やはりこれだけでは否めない古めかしさもある。一方、映像はというと、さすがヒル監督だけあり、意外なほどにスタイリッシュに仕上がっている。この先端の映像は、前時代的な物語との間で絶妙なミスマッチをかもしだし、そうして出現するレトロフューチャー的世界は今観ても十分に楽しかったりする。
本作がファンタジーとして成功したのは、もちろん、ケレンのきいた芝居を見せた俳優たちの魅力によるとこが大きい。まず印象的なのは、ヒロインを演じるダイアン・レイン。『リトル・ロマンス』からわずか五年で、こんなネエちゃんになっていることに驚かされる。しかし、もっとも強い印象を残したのは難役を演じたデフォー。始終見せるアブナい目は、ほんとうにシラフかどうかを疑ってしまうほどの強烈さで、主演のパレをすっかり食ってしまっている。しかし、パレもデフォーに食われっぱなしではなく、ラストの決闘シーンでは主演の貫禄を見せつけてくれる。



<<ストーリー>>

リッチモンド出身の歌手エレン・エイムが故郷でコンサートを開いた。ところが、コンサートも華僑に差し掛かった時、ストリートギャング“ボマーズ”のボス、レイブンが現れ、ステージのエレンがさらわれてしまった。そんな時、レストランで働くリーバ・コーディのもとに、弟のトムが帰ってきた。トムはかつてエレンと恋人同士であったが、自分より音楽の道を選んだ彼女と別れていたのだった。
姉からエレンの事件のことを知らされたトムは、“ボマーズ”についての情報を得るために酒場へ向かった。そこでトムは、かつて陸軍に属していたという女兵士マッコイと出会った。トムは、宿を探していたマッコイを自分も泊まっている姉のアパートに連れていくことに。マッコイは泊めてくれた礼として、エレン奪還作戦に加わることになった。一方、エレンのマネージャーで彼女の現在の恋人でもあるビリー・フィッシュは、エレンを無事救出できたら、金を払うことをトムに約束した。
夜になり、トムとマッコイとビリーはボマーズのアジトのあるバッテリー街に乗り込んだ。そして、トムとマッコイの活躍によりエレンが救出された。だが、エレンはトムとの再会を喜ぶどころか、何年も連絡を暮れなかった彼に怒りを露わにした。彼女は、二人の仲を嫉妬するビリーにより、トムが金目当てで自分を助けに来きたのだと信じ込まされていたのだ。一方のトムも、自分を捨てたエレンのことを許していなかった……。



<<キャスト>>

[トム・コディ]
マイケル・パレ

[エレン・アイム]
ダイアン・レイン

[ビリー・フィッシュ]
リック・モラニス

[マッコイ]
エイミー・マディガン

[レイブン]
ウィレム・デフォー

[リヴァ]
デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ

[エド・プライス]
リチャード・ローソン

[警官コーリー]
リック・ロソヴィッチ

[クライド]
ビル・パクストン

[グリア]
リー・ヴィング

[バード]
ストーニー・ジャクソン

[B.J.]
ミケルティ・ウィリアムソン (ミケル・T・ウィリアムソン)

[レジー]
グランド・ブッシュ (グランド・L・ブッシュ)

[レスター]
ロバート・タウンゼント



<<スタッフ>>

[背景音楽]
ライ・クーダー

[特殊音楽素材監修]
ジミー・アイオヴィン

[振付]
ジェフリー・ホーナディ

[衣装デザイン]
マリリン・ヴァンス

[製作総指揮]
ジーン・レヴィ

[編集]
フリーマン・デイヴィス (フリーマン・A・デイヴィス)
マイケル・リップス

[美術]
ジョン・ヴァロン

[撮影]
アンドリュー・ラズロ ,A.S.C.

[脚本]
ウォルター・ヒル
ラリー・グロス

[製作]
ローレンス・ゴードン
ジョエル・シルヴァー

[監督]
ウォルター・ヒル

[提供]
ユニヴァーサル映画
RKO映画

[製作]
ヒル=ゴードン=シルヴァー