雪深い田舎町を舞台に、思わぬ大金を拾ってしまった三人の男たちの運命を描く。
ベストセラーのミステリー小説の映画化。

シンプル・プラン

A SIMPLE PLAN

1998  アメリカ/イギリス/フランス/ドイツ/日本

121分  カラー



<<解説>>

田舎に暮らし、そこでは平凡な将来しか望みようのないの男たち。ある日、彼らは一生遊んで暮せるほどの大金を手にしてしまう。理性を狂い、金を自分たちのものにしようとやっきになる男たち。だが、冷静な判断力を失った頭で考えたその場しのぎのプランの積み重ねは、しだいに自分の首をしめることになっていく。
行き当たりばったりの行動から、どうにも収拾のつかない事態なっていく物語の前半は、サスペンスというよりはコメディ的展開だ。主人公たちの慌てふためく様からもほのかにユーモアを感じさせ、なかなか笑えてしまうのだが、一筋縄ではいかないところが本作の面白いところ。予想のつかない物語は時に快感を与えるが、その展開に出口の見つからない場合は不安を誘うことになる。そうした人間心理をつかんだ脚本と演出が鮮やかで、思いもよらない衝撃の結末にヘコむことうけあいだ。
雪景色を背景に、陰惨な事件を通して人間の弱さを描いた映画というと、コーエン兄弟の『ファーゴ』が思い出されるが、人間描写の深さや、観賞後のやるせなさに関して言えば、本作の方が軍配があがるようだ。監督のライミはホラー出身だけあり、人間の陰の部分と人一倍向かい合っているに違いない。
本作でもっとも注目したいのは、『スリング・ブレイド』で注目を集めた変幻自在の怪優ビリー・ボブ・ソーントン。飼い犬に女性の名前をつけ、眼鏡のフレームをビニールテープでとめてるという独身ダメ男の兄を見事に演じきっている。やることなすことどんくさく、一人でトラブルのタネを撒いていく彼は、主人公と観客を執拗に苛立たせるのだか、哀れなほどに無邪気な笑顔が憎めない。彼のかもし出す負の存在感は圧倒的で、ラストはほぼ独壇場となっている。



<<ストーリー>>

愛する妻とまともな仕事と自分を尊敬してくれる友人。男の幸せに必要なものをいつのまにか手に入れていた。生まれ育った田舎町で飼料店に勤めているハンク・ミッチェル。暮れが押し迫ったその頃、図書館に勤める彼の妻サラは臨月だった。ハンクの兄ジェイコブは根暗な性格のせいで未だに一人身。愛犬のメアリー・ベスと暮らしていた。定職にもつけず、生活保護を受けながら日雇いの仕事をしている兄はハンク夫妻の悩みの種であった。
ハンクとジェイコブが悪友のルーと一緒に父の墓参りにいったその帰り道。車の前に飛び出してきた狐を追い、メアリー・ベスが森に入ってしまった。メアリー・ベスを探しに森に入ったハンクたちは墜落した小型飛行機を発見する。中を調べたところ、操縦士は死んでいたが、機に詰まれていた大きな鞄の中には100ドル札の束がぎっしり。計440万ドルも入っていた。きっと黒い金に違いない、と考えるルーは金のネコババしようと提案する。ハンクとジェイコブは警察に届けるべきだと考えていたが、盗みにはならないと主張するルーに推され、金を隠してしばらく様子を見ることにした。
代表して金を持ち帰ることになったハンクは、サラにも秘密にすることをルーと約束されられるが、結局、隠しておけなかった。金を見たサラは、万が一のために、動かした死体を元に戻しておくようにハンクに勧めた。
翌日、ハンクはジェイコブを誘って、墜落現場に戻った。ハンクは自分が森の中に入っている間、ジェイコブを見張りに立たせていたが、その時、知り合いの老人ドワイトが通りかかってしまう。ドワイトに何をしているか尋ねられ、答えに窮したジェイコブは思わずドワイトを殴りつけしまった。そのままドワイトは倒れて、動かなくなった。
作業を終えて、車のところに戻ってきたハンクは、ドワイトを殺してしまったと騒ぐ兄を落ち着かせた。ハンクは兄を先に帰えすと、スノーモービルの事故に見せかけて、ドワイトの死体を捨てることにした。ところが、ドワイトを運んでいる最中、彼がむっくりと起き上がった。彼は気絶していただけだったのだ。ハンクはドワイトがジェイコブに殴られていたことを警察に訴えることを恐れ、彼を窒息死させた。
翌日、ハンクはジェイコブから電話で呼び出され、ある場所に向かった。そこはハンクとジェイコブの父が借金のために手放した農場だった。ジェイコブは父から後継ぎを約束されていたその農場を買い戻すことを勝手に決めてたのだった。
それから数日後、ここ数日の各地の新聞記事を調べていたサラは、富豪を狙ったある誘拐事件のことを知る。犯人のボコフスキ兄弟が要求した金額は、夫の拾ってきた440万に一致し、身代金の受け渡しに小型飛行機が使われていた。だが、結局、誘拐された少女は殺されたのだという。
とりあえず、金の出所が分かって安心したハンク夫妻だったが、ルーが借金の返済を理由に分け前をせびりにやって来た。ルーは、ジェイコブからドワイトの死の真相について聞かされてて、それをネタにハンクに迫ったのだ。サラは、ルーがこの先も自分たちにとって脅威になると悟ると、彼をハメることをハンクに提案。ハンクはジェイコブに協力を求め、ルーがドワイト殺しを自白するところをボイスレコーダで録音することにした。
その夜、ジェイコブが自宅にルーを誘い、ハンクを加えた三人で飲むことになった。ジェイコブが激しくハンクを批判するのに同調したルーは、ドワイト殺しを自白するハンクの真似をしてみせた。その直後、ハンクは今のルーの言葉を録音していたことを、本人に明かし、脅迫しないよう釘をさした。
ハンクとジェイコブはルーを自宅に送っていくことに。だが、自宅に着くとルーは猟銃を持ってきて、玄関先のハンクに突きつけた。その様子を見ていたジェイコブはハンクを守ろうして、自分の猟銃をルーを突きつけた。だが、ルーが銃を下ろそうとしなかったため、興奮したジェイコブは思わず引き金を引いてしまった……。



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