デパートで万引きの濡れ衣を着せられたチャーリーは、
不正金を持ち逃げしようとする売り場主任と入れ替わるが……。
チャップリンの
替玉
(
替玉
)
THE FLOORWALKER
1916
アメリカ
32分
モノクロ
サイレント
<<解説>>
製作会社キーストンでデビューし、エッサネイ社を経たチャップリンがミューチュアル社に移って製作した第一作目。基本となるギャグはエッサネイ時代までにやり尽くしてしまった感があるが、ミューチュアル時代以降は、ギャグのバリエーションに加え、演出や編集、そして、特に脚本の質が高上し、映画としての完成度も高くなっていったようだ。
本作はでは入れ替わりコメディに挑戦。チャーリーが自分とソックリな主任と鏡コントを繰り広げる場面は現代でも十分、爆笑できる。また、チャーリーと主任の背丈に差があり、入れ替わったことが丸分かりなのも可笑しい。チャーリーが階段を使ってボケ倒す作品はいくつもあるが、ここでは階段からエスカレーターにバージョンアップし、さらに、エレベーターも追加。お約束の追いかけっこで、エスカレーターをえんえんと逆走する場面は抱腹絶倒ものだ。最初期の作品はというと、クライマックスを殴る蹴るなどの暴力的なアクションで盛り上げていたが、このころになってくると、直接的な暴力描写は最低限に抑えているようで、その代わりに、チャーリーの軽快な身のこなしで楽しませてくれる。迫り来る支店長の手から、ひょいひょい身をかわすチャーリーの踊るようなステップを見ると、彼の運動能力の高さに改めて感嘆させられる。
<<ストーリー>>
とあるデパート。支店長に事務所へ呼ばれたチョビ髭の売り場主任は、不正がバレそうなことを知らされる。二人は金を持ち逃げしようと相談するが、主任は支店長を裏切って殴りつけ、彼が気絶している間に一人で逃げる準備をはじめた。その頃、売り場では、冷やかしに現れた放浪紳士チャーリーが、商品を勝手にいじりまわしていたことを店員に咎められていた。店員が目を離しているうちに他の客たちが万引きのし放題。さっきまで陳列されていた商品がごっそり消えているのに気付いた店員は、それをチャーリーのせいに。デパートで行なわれる不正の証拠をとるため、店を訪ねてきた探偵もチャーリーを捕まえようとした。
店員や探偵に追われて事務所に逃げ込んだチャーリーは、金を詰めこんだ鞄を下げた売り場主任と鉢合わせ。相手の姿が自分にあまりにソックリなものだから、二人とも鏡を見ているように錯覚。主任は相手も追われている身とも知らず、着ているものを交換して立場を入れ替えることをチャーリーに相談。こうして、主任に成り代わったチャーリーは売り場の見回りの仕事が気に入り、すっかり本物の主任気取り……。
<<キャスト>>
[放浪者]
チャールズ・チャップリン
[支店長]
エリック・キャンベル
[支店長の秘書]
エドナ・パーヴィアンス
[売り場主任]
ロイド・ベイコン
[店員]
アルバート・オースティン
[探偵]
シャーロット・ミノウ
<<スタッフ>>
[監督/製作]
チャールズ・チャップリン
[脚本]
ヴィンセント・ブライアン
チャールズ・チャップリン
[撮影]
ウィリアム・C・フォスター
フランク・D・ウィリアムズ
[製作]
ミューチュアル・フィルム